やっと解放だよ
別に試験自体受けてもいいと思う。でもいきなり上位職になんかになってもいいのだろうか?急に明日にして、他の受験者は迷惑なのではないか?
日本でも試験ギリギリまで勉強して、とか計画を立てて試験に挑むはずなのにそれが急に明日になりました~とか気軽に言われて良いわけがない。
「安心してくれ。冒険者は常に行動出来るように準備をしておくものだろう!とか言って誤魔化すからさ」
いやいや、だからね。急に明日になったらまず合格者も出ないって。逆に出たらそれはすごいだろう。すごいどころか、真面目に尊敬出来る人なのでは?
そんな自分の思いはおいて行かれ、最後の心配事を話し始める。
「明日と言っても、私には泊まる場所もないですし、最悪なことに武器も石ころさえも無い状態です。そんな私が受かるとは思えないのですが……」
「それも安心しなさい!泊まる場所は僕が用意しよう。武器はあっちの蔵にある宝物庫から好きなものを取ってきて良いよ。これで文句はないだろう?」
流石一国の王様だ。太っ腹というか何というか。これでは自分が贔屓されたみたいな気持ちなんだけどね。きっと他の人は自分のお金で武器や装備を集めているのだろう。すまんな、苦労している若者たちよ。まあ、自分も若者たちの中に入る年齢だけど。
そして、自分が欲しいものは基本的に、拳銃は必須アイテム。あとはナイフや最終手段の手榴弾や煙幕。でもこの世界は元の世界ととは違う。スキルとか加護、たぶん魔法とかいうものもあるのだろう。鉄の塊なんかで敵や強い人間に効くのだろうか。
でも、試験にはスキルとかあまり関係ないとか言ってたし心配はないはず。
「じゃあ僕は嫌な嫌な会議に行って来るから、行きに連れていってくれたベルさんに宝物庫を案内してもらってくれ。じゃね」
そう言ってすぐに見えなくなった。あれは魔法なのかそれともあれが自分の身体能力なのか。どちらにしてもあの笑顔とは裏腹に常人ではないんだな、ここは異世界なのだと思い知らされた。
「ではここから案内していきますベルと申します。以後お見知りおきを」
「さっきまでチビッ子扱いしてたのに丁寧だな。そんなにかたぐるしくなくても良いよ。さっきまでかたぐるしかった俺が言えることでもないけど」
そういうとベルは今とは全くの正反対の笑顔で応えた。
「ありがとね~ボク~。お姉さんうれしいなぁ~。かたぐるしくなくていいってことは名前もボクでいいよねぇ~?」
「それだけはダメッ!名前は黒谷零という名前があるから黒谷でも零でも好きな方を呼べばいいでしょう!」
「クロヤ……レイ?じゃあレイちゃんね。ねっ、いいでしょ?」
「俺は女子じゃない!男子、男性だ!さん、せめて君にしろッ!」
この人は国王の涼介さんとは違うのだろうか?こんなにもウザイ人に会ったのは始めてだ。いやそれとも涼介さんもこれを分かって案内役にしたのか?それだったらあの人に似るのも良く分かる。そんな人だったら、あの人相当ドMだぞ!こんな人たちがこの国を治めていて大丈夫なのか。もしやこの国の民たちもこんな曲がった性格ではないだろうな!?
そんな思いがありながらも宝物庫に向かった。