加護持ち
まずは地図が欲しいところだが……。ここがどこかも知らないし、知ってる人もいない。考えているともう裏道を出てしまっていた。
うーむ。考えること10分。ここまで出た考えは2つ。
一つ目が無難だが自分から聞く方法。これだと本当にこっちの世界での言語が話せるか不安が残る。
二つ目は自分で探す方法。でもそれだと、疲れる。とにかくめんどくさいから嫌なのだ。黒谷はそう納得した。
そんなことを話していると、とてもニコニコした顔で知らない女性に話しかけられた。
「どうしたのかな~ボク~。もしかして迷子なのかな~?」
このような話し方をされると、どっかの女神を思い出す。そして俺は立派な18歳だっての!
少し問題があるなら身長の低さだろう。現に150㎝前半。そして高校、大学に行ったときはもっと低かったため、見学のチビッ子と間違えられた時もあった。そういう時は知識でねじ伏せるのだが。そして、チビッ子に負けた時の先輩の顔が面白……。
おっと、話がそれた。せっかく聞いてくれたというチャンスなのだか聞いてみよう。
「あの~地図はどこで売ってますか?」
そう聞くと驚きの答えが返ってきた。
「地図なら真っ直ぐ行ったところに大きく貼ってあるわよ。国王様が変わって、街の改革で設置されたのだから感謝しないとね」
そっ、そんなことまで出来てしまっているのか。恐るべき異世界人の国王だ。
「それでどこに行くのかな?私が連れていってあげようか?」
国王のところに行くなんて言ったらこの人が行くなんて無理に決まっている。だからイジりとしてそのことを伝える。
「国王陛下がどこにいるか分かりますか?」
驚いてしまうだろうと思っていたが、答えは意外だった。
「いいわよ。こう見えても国王直属の王宮騎士団所属聖騎士だからね!何の用かは知らないけど、君からは悪意が感じられないから。あっ、でも事前に招待状が無いと会えないわよ?」
そう言われたので、女神様が書いたであろう招待状を渡してみた。
「えっとどれどれ~。………………こっ、混沌ノ女神様のかっ、加護持ちの異世界人!?こっ、これは失礼しました。すぐに国王様に会わせるのでついてきてくださいませ」
この人急にかしこまったな。それほど異世界人や加護持ちが珍しいのだろうか。それは国王に聞いてみよう。
15分ほど歩き、案内された場所は何もない荒地だった。もしかしもしかしてだまされたのだろうかと一瞬思ってしまったが、それは違った。
「ここから、魔法『テレポート』で行きますので私につかまってください。あとこの方法は口に出さないようお願いいたします」
「分かった」
するとついたのは高級そうな椅子が二つ、テーブルが一つの部屋だった。
「今、国王様を呼んでくるので少々お待ちください」
どんな感じの人だろうな。やっぱりヒゲがある人かな。それとも怖いおじさん?そんなことをして待っていると、一人の青年が席に座った。
「君たち、さがりなさい」
「「「はっ!」」」
この人が国王にしては若くないか?まあ、さっきの騎士の反応から国王だと思うけど。
「あいつらがいるとかたぐるしいからな。良し、もういないか。えっと、どうも僕の名前は鏡 涼介です。こんなんですが、この国の国王をやってます」
「あっ、どうも。私は黒谷 零と申します。」
「丁寧語じゃなくてもいいよ、ボク。普通の口調で言っても大丈夫だからね」
ここでもチビッ子と間違えられた。ここは今後間違えられない為にも言っておかなければ。
「では。俺はボクとかいうチビッ子じゃない!これでも18歳だっ!」
「ごめんごめん。それで君とどうしても話したいことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「君の持つ混沌ノ女神様の加護についてさ」
あのチビッ子女神の加護についてだと。それ程レアなのか?
「まず、僕の貰った加護は戦闘ノ神様から貰った加護なんだ。その時に聞いたんだけど、神のなかでもおかしい神について言われてね。それが混沌ノ女神様のことだったんだ。神のくせに違う神の加護を持たせることが出来て、自分の加護は絶対にあげないと言ってた。なのに君は持っている。面白い話と思わないかな」
あいつ今まで不正してたのか。他の神に嫌われるのも当然だな。
「そして、戦闘ノ神様の加護の能力は自分の有利な条件に持っていくことができる効果で戦いにおいてとても強い能力なんだけどそっちはどうなのか聞きたいんだけど、ダメかな?」
そういえば、本には混沌ノ女神様の加護について書かれてなかったな。自分のステータスで見てみるか。
混沌ノ女神の加護
隠密や隠蔽系統の絶対的な優位性を持つ。運がとても上がる。
「隠蔽系統の絶対的な優位性があることと、運が上がるらしいですよ」
「えっ!?」
「えっ?」
俺と国王こと鏡 涼介は同時に顔を見合わせた。
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次回は月曜日を予定しております。