混沌ノ女神
くっ、ここはどこだろうか。
確か俺は、まず交差点にいた。
次に少女が車にひかれそうだったので、身を乗り出して助けた。
最後に少女を助けることができたが、自分は死んでしまった。が、
今、真っ白な何もない部屋にいる。
自分は何人も人を裁いてきた。簡単に言うと殺すなのだが、悪い奴を殺してるだけだ。だから死ぬときがどの様になるのか、良くわかっていると自負している。
死んでしまったのは確実だから、ここは死後の世界なのだろうか?
そんなことを考えていると部屋に一人の少女(女性?)が入ってきた。
「よくぞ来た。妾は混沌ノ女神と呼ばれるものだ。お主を呼んだ理由を説明しようではないか。まず、お主には、地球で言われる異世界に転生してほしい」
第一印象は自分勝手だと思っていたが、声のトーンが低い。切羽詰まった状況なのだろうと飲み込もうとした。
でもこの人、口調を無理してないか?一個一個言葉を選んでいる一定の間がある。
こんな状況なのに無理をすることはかえって負担になるだろから、いつも通りでいいと注意しようか。
でも、自分でキャラを変えたいと思っている人かもしれないし…………。
俺はしばらく考えると覚悟を決めた。しばらくといっても、数十秒だけだが。
「お主が困惑するのもわからなくない。でも今は妾の話をよく考え…」
「あの。口調、元に戻していいですよ。そんなに堅苦しくなくても、いつも通りに話せばいいじゃないですか」
そう言った瞬間、少女の顔が驚くと同時にこわばってしまった。なにか、機嫌を悪くするような態度をとったかなと思い再度姿勢を正す。
だが、少女はそういう所を気にした訳ではなかった。
「せっかく、妾とか上から目線の口調で言ったのに台無しじゃない!?貴方のことだからもしかしたらと思ったけど………一言よ、ひ・と・こ・と!今までの人達はこれで緊張感だしてたのに。もう、バカバカバカぁーー」
やはり口調を変えていたか。そんなことより女神やら転生ってなんだよ!?死んだらゆっくり過ごすことが俺の目標だったというのにさ。
「あー転生ね。説明してなかったっけ。とにかく異世界に転生してほしいのよ。神間で異世界の人口を増やそうキャンペーンっていうのが開始されてさ。貴方の世界から死んだ人を転生させて増やそーってやつだったんだけど、若者たちが他の神や女神達に取られてさ寿命で死んでしまった人しか私には流れてこなかったの。そこで思いついたのが、私自身で干渉して転生させよーってことなの。一人のノルマが最低3人とかいうめんどくさい設定だからしょうがなかったのよ。二人目までは簡単だったんだけど、三人目から皆嫌だ~ってなっちゃって、そこでまたまた思いついたのが命かけて助けてくれた人ならいいかな~って。そこで助けてくれたのが君ってわけ。まぁ、あのバイクを運転してたやつは許さないけど……予想外だし」
へっ!?随分と長い説明だったな。そんなのめんどくさいからしたくないと思ったが、人助けになると言われると……
「今なら君に合うスキルあげちゃうし、あと30分しかないんだよ~。お願い。いや、お願いします!」
そう言うと、土下座までしてきた。混沌ノ女神様がそんなことしてもいいのかね。混沌ノ女神の名が泣くぞ。
でもここまで言われると断れないというか、断らないでという圧がかかっているように見えてしまう。
ここは、承諾するしかないみたいだ。
俺は諦めて、承諾することにした。
「ありがと~。ありがと~!サービスで私の加護まであげちゃう。間に合わないと思って、ヒヤヒヤしたよ。あっ、もうこんな時間!じゃあもう移送しちゃうから。最後に二つ約束ね。一つ目は、絶対に自分の能力を言わないこと。もう一つは一か月に一度、教会で私に会いに来なさい。これ、絶対ね。絶対だから。分かった?」
俺はそう簡単に個人情報を言わない者なのだが。こんな女神様で大丈夫かな。
「今、失礼なこと考えたでしょ?」
「そんなことないですよ」
俺の心が読まれるなんて、やっぱり流石女神様だった。
「ではまた一か月後に。最後までありがとうございました」
「じゃあね。絶対に来なさい。絶対よ」
この人、同じことを何回言うのだろうか。現世だったら、絶対にこんな上司持ちたくない。
そんなことを考えていたら、もう違う場所にいた。いきなり過ぎて少しビビったがこういう時は適応しようではないか。
でも思っていたのと違うな。急に見知らぬ森に放り出されるとか、目の前に国王とかをイメージしてたんだけど。今いるのは、街の裏道の様な場所だった。意外と普通なんだな。
そして、これからどうしようか。とにかく自分のスキルや持ち物の確認。それとここがどこなのか聞かないとな。
そう言って、彼、黒谷 零は裏道を出た。
これからはマイペースに不定期投稿でいこうと思います。