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第5話 ゲテモノ好きに入りますか?

 「マイゼンド、大丈夫か!?」


 カウンターに座る冒険者のシャーフが、一角兎を3体手にして戻ってきたマイゼンドを見て驚いた。

 彼は、引退した冒険者だ。引退と言っても冒険者(リスキーウォーク)の神の加護がある限り一生冒険者のままなので、冒険者協会の仕事をしている。現役で活躍出来なくなった冒険者は、裏方へと回る仕組みになっていた。

 シャーフの担当は、★ランクなし。すぐに★ランク1に昇格する為、マイゼンドの様に今だに★なしなのは珍しく、名前を憶えてしまったほどだ。普通は、名前を覚える暇なく昇格していく。


 「え? 何がですか?」


 「腕!」


 左腕の服に血がにじんでいたのだ。一角兎に攻撃を食らい怪我をしていた。だがすでにそれは完治している。

 回復力のパラメータがある者は、HPとMPの両方が自然回復するのだ。このパラメータがあるのとないのとでは、生き残る確率が断然変わって来る。


 攻撃力のパラメータもなく魔法を持たないマイゼンドは、一度ぐらいはモンスター退治をリトーン達と一緒にやった事があったが、あとは拾うだけだった為にこの恩恵は受けた事はなかった。


 「あれ? 本当だ。そう言えば一回攻撃を食らったんだっけ?」


 今気がついたという台詞を言うマイゼンドを大丈夫だろうかと、心配になるシャーフ。


 「確かに自分で倒せと言ったが、無理はするな。命を落とすぞ」


 「あ、うん。でも僕、強くなったよ!」


 「まあ、レベルは上がっているだろうし。何レベルになった?」


 シャーフは、マイゼンドに攻撃力のパラメータがない事を忘れていた。大抵の者は、魔法か攻撃が出来るステータスを授かる。マイゼンドの様な全く戦闘に不向きなステータスは珍しいのだ。


 「8レベルです。残念ながら3体も倒したのにレベル上がりませんでした」


 「そのレベルなら普通は、一角兎3体ぐらい倒したぐらいじゃ上がらんよ。で、自分で倒した証拠に一角兎自体を持って来たのか?」


 「あ、いえ。お金を貯める為に、食べようかと思って」


 「調理出来るのか? スキルは持っていなかったよな?」


 モンスターを調理するのには、スキルとして調理が必要なのだ。だが、マイゼンドはそれを知らなかった。


 「え? スキル?」


 「はぁ……まあ最悪、切って焼くだけならスキルがなくても出来るから食べれなくもないが」


 「よかった。じゃそうします」


 「今回はただでさばいてやるが、通常は1体につき銅貨1枚だからな」


 「ありがとうございます!」


 一角兎をさばいてもらっても拾うクエストよりは、報酬は多い。さばくのも調理のスキルが必要だ。


 「って、それ一人では食べるの無理じゃないのか?」


 「うーん。数日に分ければ食べられると思います」


 「腐るだろうに!」


 「あ!」


 「仕方がない、燻製にしてやる。1体銅貨5枚な。明日には燻製になっているから」


 「えっと、ありがとうございます」


 結局、1体分のお肉を貰い家に帰る事にした。


 (今日は、初めてのモンスターの食事だ)


 マイゼンドは、一度はモンスターを食べてみたいと思っていたのだ。冒険者の醍醐味だと思っていた変わり者だった。



 アパートの前で肉を持ったまま、マイゼンドは10階の自分の部屋を見つめていた。これから浮遊で、10階まで上がろうと思って見上げていたのだ。


 「よし!」


 気合を入れマイゼンドは、浮き上がる。

 冒険者用のアパートは街の外れにあり、基本冒険者以外の者は近づかないので、周りには誰も居ない。

 スーッと浮き上がり無事10階の手すりにつまり、10階の廊下に下りる事が出来た。


 「大成功!」


 10階に降り立ったマイゼンドは、地上を見下ろす。


 「うーん。暫くは、上がる時だけに浮遊を使おう」


 かぎ縄を買ってからそれを使って下りる事にした。

 部屋に入り、さっそく切り分けてくれたお肉を焼く。塩を振っただけの簡単メニュー。


 焼きあがったお肉にかぶりつく。


 「あ、結構おいしい」


 もぐもぐとマイゼンドは、おいしそうに食べた。次は違うモンスターも食べてみたいなどと、他人が聞いたら引くような事を思っていた。


 「調理のスキルがほしいな」


 余ったお肉を借りた冷凍箱に入れ布団に入る。おなかいっぱいになって眠くなったのもあるが、戦闘をして疲れたのだ。


 次の日、ゴミ拾いのクエストを受けレベル上げ基、レベル下げをする為に経験値稼ぎをした。2つの拾うクエストを請け負い無事、10レベルに上がり1レベルに戻ったが、今回は残念な事にスキルも魔法を覚えなかった。


 「あぁ、残念。次に期待しよう」


 いつも通り前向きなマイゼンドは、残りのお肉を食しこの日も眠りについたのだった。

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