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第15話 睨まれたスキル

 マイゼンドの事を決めるパーティー会議がなぜか目の前で行われ、一人大人しく見つめていた。


 「仲間に入れた方がよくないか?」


 「確かに凄いけど、攻撃力ないぞ? 戦力にはならないだろう」


 うんうんとコッソリ聞いているマイゼンドは頷く。


 「けど、それなりの武器を与えれば、かなりの戦力にはなるだろう?」


 「戦闘より、調査向きかもな。拾うというスキルがどんなのかわからないが、採取用だろう?」


 「いやその前に、★なしらしいからこのパーティーには入れられない。経験が少なすぎる」


 リーダーのモーアンドが、きっぱりと言う。


 「まずは、★1になってもらわないとな」


 リーダーの意見に皆賛成し、会議は終了したようだ。成り行きを聞いていたマイゼンドは安堵する。


 「とりあえず今日は帰りな」


 出来た一角兎の燻製を渡され、マイゼンドは頷いた。


 「ありがとうございました」


 お礼を言って、冒険者協会を後にする。


 ぎゅるるる。


 マイゼンドのおなかがなった。朝にザラと一緒に朝ごはんを食べたきりだ。歩きながら燻製にかぶりつく。


 「うーん。ボアの燻製も食べてみたかったなぁ」


 本当は、自分用にもボアを持ち帰り燻製にしてもらう予定だったのだ。今日受けたクエストも完了していないので、明日こそボアを燻製にしてもらおうと考えながら歩いていた。




 部屋に戻ったマイゼンドは、ザラを手の上に乗せ、唸っていた。


 「うーむ。このスキルって……」


 『聖獣ザラモリス:ザラ

  レベル:1

  HP:100

  MP:10

  魔法防御:10

  回復力:10

  素早さ:70

  適正属性:―

  不適正属性:―

  スキル「捕食:レベル1/ボア3体」

  必要なモノ

  レベルアップなら「食べ物」

  スキル習得なら「魔力」     』



  捕食レベル1――30個の食べ物を体内に保管しておける。


 「僕でも食べられるんだろうか?」


 ボアを食べてみたいと思っていたマイゼンドは、どうやったらボアを出してもらえるのか考えていた。


 「あ、生か? シャーフさんに燻製にしてもらわないといけないのか。で、今回も魔力~」


 勿論スキル習得を選んだ。

 

 「明日は、大人しく鞄の中に居てよ」


 そう言いつつマイゼンドは眠りについた。



 次の日、出掛ける前にひと悶着。


 「あ~~!! 何してるの!」


 目を覚ますと、ほとんどの一角兎の燻製がなくなっていた! 30体分あったはずが、すでに十分の一になっていたのだ。


 スキル「捕食:レベル1/ボア3体・一角兎の燻製20体分」

    「体色変化:パッシブ」


 スキルのおかげで、食べ物は体内にしまわれていた。


 「あ、新しいスキル覚えている。体色変化?」


 体色変化――姿を見えなくする事が出来る。


 「うん? 凄い。姿を消す事が出来るの? やってみて!」


 じーっと見つめ待つも変わらない。

 何か条件があるのかなと思っていると、ザラは自分から鞄の中に入っていった。着いて来る気満々だ。


 「絶対に勝手に鞄から出たらダメだからね!」


 今日も二人で仲良く森へと出掛けた。



 「もうどうしてそう、食いしん坊なの」


 ボアを倒すと、鞄の中からザラが出て来て食べようとする。鞄から出てきたザラをマイゼンドは捕まえた。


 ザザザザ。


 ボアが出たと思って振り向けば、冒険者達だ。見知った顔。亀の討伐に来たパーティー達だった。


 「探せ!」


 リーダーのモーアンドが言うと、一斉に草むらに入って行く。何が起きたと驚いていると、マイゼンドをモーアンドは押さえつけた。


 「え? ちょっと、痛い。なんで!?」


 「あの亀は、逃がしたんだろう? 川ではなく、ここに!」


 「え?」


 どうしてそうなるんだとマイゼンドは驚く。


 「君には、育てるというスキルがあったな。それはレベル2になっていた。つまりそのスキルは発動されている。モンスターに使ったんだろう? 昨日のボアが居なかったのは、その亀のモンスターにエサとして与えたからだ。違うか?」


 川を探しても見つからなかった事からもしかしたらと思っていた所に、スキルにそれらしきものがあり、レベルが上がっていた。亀は亀だが亀違いだ。だが、それも言えない。


 「ち、違うから!」


 「嘘を言うな! スキルは、冒険に使われる物だろうが!」


 そんなぁ。なんで信じてくれないの!


 「モーアンドさん、いません」


 「足跡らしきものはないか?」


 「ないみたいです」


 「あるわけないだろう。本当にそんな事していないんだから!」


 そう叫ぶマイゼンドの左手には、しっかりとザラが握られていた。だが、誰もその事にはふれなかったのだった。

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