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親愛なる「きみ」へ
親愛なる「きみ」へ
いつもは夜に筆を手にとりますが、今日は日の光に射さながら机に向かっています。
きみも知っての通り、わたしの格言は「太陽の沈む前にペンをとるな」です。太陽が昇り、動物が生を営み、世界がさざめく時間帯というのは、人を否応なく急かします。手紙のように繊細なものは、やはり夜にしたためるべきなのです。
さて。ここまで書けば、君にはわたしの状況がお分かりでしょう。
また、面倒な「友人」の厄介事です。
わたしのホームに客人を寄こすというのです。昨晩の手紙を書いたのちに連絡をよこしてきました。
おかげで、わたしは夜を徹して部屋を整えなければいけませんでしたし、太陽が昇ってすぐに食材を買いこまなければなりませんでした。
そもそもここはホームであり、けっして宿ではありません。あの友人は、それを知っていてやるのですから救いようがありません。
さて。今度の客人はどのような方でしょうか。
あの友人のことですから、きっと普通ではないのでしょう。
面倒が終わった暁にはきっとお手紙を差し上げます。
それでは、また。