第99話 お金の使い道(一応考えています)
誤字脱字が多く、ご迷惑をおかけします。
メルヌから帰り執務室に行ってノックをすると、
「おう、入れ」
という義父さんの声。
中に入ると義父さんはプリシラ様とお茶を飲んでいた。
早速、茶飲み友達ですか……。
「お邪魔でしたか?」
と俺が聞くと、
「何気兼ねしているんだ?
お前から振ったくせに」
と義父さんが言う。
そして、
「いいんですよ。
あなたは私の息子になるのですから……。
私を呼ぶときは『お義母さん』でもいいですからね」
とプリシラ様が言った。
おっと、義父さんの妻確定になってるし。
気が早くね?
義父さん少し赤いし……。
まあ上手くいっているのなら良しなんだろう。
「それでは、義父さん。
今朝方、宝箱の処理をしていたのを覚えていますか?」
「ああ『メルヌ側で宝箱の処理をしろ』と言った奴だな」
「はいそうです。
その結果を見せたいと思いまして……」
「ほう、それで?」
「これがそれになります」
ジャリッと音をさせて硬貨類をまとめて入れた宝箱を置いた。
そして、その宝箱を開ける。
こんもりと盛り上がった硬貨を見て、
「なんだそれは?」
引き気味の目で義父さんが言った。
「ですから、宝箱の中身です。
これは硬貨を集めた宝箱。
あと、貴金属が入った宝箱があります。
それに、宝箱に入らなかった武器や防具もありますね」
「これだけじゃないぞ」アピールをする俺。
俺が出したものを見て、
「あなたは何者なの?」
今度はプリシラ様が驚く。
「知っての通り、義父さんの義理の息子です。
期間限定で冒険者をやっています。
今、ゼファードのダンジョンを攻略してまして、先日手に入れたすべての宝箱の中身を出すとこういう結果になりました」
「全てって……。
まさか手に入れた宝箱すべてをここに持って帰ったとか?」
唖然とするプリシラ様。
「そうですよ?」
と俺が返すと、
「いいものを一つか二つ選んで持って帰るのが普通のはずなのに……」
「プリシラよ、マサヨシは常識離れした魔法使いなのだ。
自分用の魔道具を作成できる。
ほれ、マサヨシの肩にかかったカバン……小さかろう?
しかしな、その容量は本人も把握してないほど大きいのだ。
そのカバンにマサヨシは手に入れた宝箱をすべて入れて持って帰ったのだろう。
あのカバンから宝箱を出したことに気付かなかったか?」
「確かに不自然でした」
とプリシラ様が言った。
「であろう?」
プリシラ様と話している途中で気付いたのか、
「悪かった。
それで、その金についての相談だったな」
と義父さんは聞き直す。
「ええ、このお金の使い方を相談に来たのです」
「ふむ、儂も知らん」
あっけらかんと返す義父さん。
「えっ?」
「金の扱いはセバスに任せておるからなぁ。
儂の場合は領地のと子爵の手当てが収入で、騎士団など持たんからセバスでも十分にやっていけたのだ。
ちなみに、いくらある?」
「白金貨二十二枚、金貨七百七十一枚、銀貨千五十一枚です」
少し呆れた顔をすると、
「儂の手当てが年間で金貨七十枚。
領地からの収入が金貨五十枚程度。
年収の二十倍近くを稼いできおった」
と苦笑いしていた。
プリシラ様は俺の顔を見る。
そして、
「何か案があるのでしょう?
あなた、まずはマサヨシさんの考えを聞いてみては?」
と義父さんに言った。
「そうだな」
ちょっと赤い義父さん。
「『あなた』ですか?」
「この呼び方がいいとプリシラに言われてな……」
「呼び捨てですか?」
今度は義父さんとプリシラ様、二人が赤くなる。
「まあ、いいですが……」
俺はそう言って「ゴホン」と一つ咳ばらいをすると、
「お金の使い方の一つの案になるのですが、冒険者をしている者も多く、フィナのように親が亡くなったために孤児になった子供をよく見かけます。
それに戦争などで孤児になる事もあるようです。
ですから孤児院を作ろうかと思います」
「孤児院?
何かを学ばせるのですか?」
プリシラ様が聞いてきた。
「基本的な読み書き計算を学ばせたいと思います。
職業訓練をさせ給料を得て自活できるようにする。
もし、能力があるのなら王立学校へ入学させて勉強してもらってもいい。
まあ、その際には少々条件を付けますが……」
「どんな?」
プリシラ様が興味津々だ。
「例えば何年間かは孤児院で勉強を教えてもらう。
そうすれば先生の確保が楽になるかな……と。
確か王立学校には騎士過程もあると聞きます。
剣の筋がいいのならば、そういうところに学ばせてもいいかもしれませんね」
「それはいいわね。
子供たちの可能性が広がる。
いつ孤児院を作るの?」
プリシラ様グイグイ来るな。
王立学校の現校長ってのもあるのかね。
「えーっと、代替わりしたらですね。
初代院長は義父さんにやってもらおうと思っています。
幸いフリーデン侯爵との契約でポルテ伯爵領を貰えることになっていますので土地はありますので……」
大体の話が終わると、
「それならば私が副院長をします。
私なら魔法を教えられるわよ?」
とプリシラ様が自身を売り込んできた。
ん?
「しかし、プリシラ様は……」
「ダメ、『義母さん』」
と「義母さん」を押してくるプリシラ様。
俺がをちらりと見ると、義父さんが申し訳なさそうに頷く。
義父さんも俺と一緒で女性の押しに弱いらしい。
「では『義母さん』と呼ばせていただきます」
「どうぞ」
義母さんはニコリと笑う。
「義母さんには領土があるのでは?
それに王立学校の校長でしたよね?」
「何を言っているの?
距離はあなたが何とかできるでしょう?
それに王立学校の校長なんて名誉職で何の権力もないの。
ある意味責任取らされるだけの事務要員なんだから、さっさとやめるわ。
給料も安いし」
そんなこと言っていいのかね?
「それに、もし我が子ができたときにはあなたの孤児院に入れます。
そのほうが多くのことを学べそうですからね」
「そうですか?」
俺は首を傾げた。
「あなたの周りに居る者を見て?
何らかのエキスパートなのよ?
クリスさんは攻撃魔法。
アイナちゃんは治癒魔法。
フィナちゃんは料理。
マールさんは家事。
クロエさんは内政。
ああタロスって元騎士団長も居たわね」
誰かがそんなことを言っていたなぁ……。
ちなみにセバスさんの暗殺術とかがあったりする。
多分情報収集も……。
でも、先生向きって……フィナとマールぐらいのような気がする。
「正直言って王立学校よりも充実してそう。
私が手伝ってあげるから、代替わりしたらやっちゃいなさい」
義母さんは興奮気味に言った。
やる気満々だな。
「はい、代替わり時の最初の仕事として考えておきます」
と言って俺は頷くのだった。
続いて、
「武器や防具はどのようにすればいいでしょうか?」
と義父さんに聞いた。
「どうせ騎士団を作るならば鎧は揃えなければならんからな、防具は売ってしまっても良いと思うぞ。
武器はとりあえず置いておこうか」
と言う義父さん。
「貴金属は?」
「商人のほうが詳しかろう。
必要ないのならばロルフ商会に売ればいいじゃろう。
袖の下とは言わんが贈答用に置いておくのも良い」
「わかりました。
とりあえずは置いておきます」
イタズラのつもりで、
「ちなみに、俺の義弟はいつ頃?」
と冗談ついでにこえをかけると、
「先日の当たり日に仕込んだので結果はしばらくすればわかるわ。
来月あたりかしら」
義母さんが胸を張って言った。
んー、教えてくれるんだ……。
「おい! プリシラ!」
と義父さんが止めるが、
「いいの、家族には隠し事は無しです。
クラウス様、次の当たり日もお願いしますね」
義母さんはにこやかに言った。
いや、その辺は隠しておいておいいと思う。
「期待しておきます。
私も義弟ができると嬉しい」
「でしょ?
家族が多いのはいいことよね」
それは実感する。
クリスをはじめとして、家族と言える人が増えた。
箱の中に居るより充実している。
日々の変化に楽しさを感じる。
「では義母さん。
孤児院を作る際には相談させてもらいますね」
「喜んで」
と義母さん。
「儂は?」
「俺に頼らないのか?」と言う感じで俺を潤んだ目で見る義父さん。
「当然よろしくお願いします」
と言って、尻に敷かれた義父さんを置いて俺は執務室を出るのだった。
義理とはいえ似た者親子なのか……。
俺と義父さんは同類らしい。
読んでいただきありがとうございます。




