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第94話 イタズラ開始

 夕食後、カリーネが帰って来たところを見計らい、カリーネの部屋に行った

「あら、夜這い?」

 と、カリーネが扉を開けて言った。

 中にはエリスも居る。

「寝間着でもないのに、夜這いは無いだろう?

 時間もまだ早い」

「夜這いに服装は関係ないと思うわよ?」

「それはそうなんだが、エリスが居るのにそんなことはしません」

 すると、

「私が居なければお母様を抱っこするの?

 私、フィナ姉ちゃんのところで寝ようか?」

 エリスがニッと笑って言う。

「エリス、その気遣いは要らない。

 とりあえず夜這いではないからな」

 多分……顰めっ面をしていたんじゃないだろうか

「えー、残念」

「ねー」

 エリスとカリーネはお互いに見合わせ笑っていた。

「エリス、カリーネ、いい加減にしろ」

 と突っ込むと、

「ハイハイ、で何の用?」

 と軽く流されてカリーネが話を戻す。

 それに合わせ、

「ダンジョンへの許可証って売り買いされるものなのか?」

 と聞いてみると、カリーネの顔が真剣になった。


「どういうこと?」

「フリーデン侯爵の息子、フラン・フリーデンが二十一階に居た。

 あの腕で二十一階を進むのは無理だろう。

 実際パーティーは壊滅。

 生き残ったのはクロエ・ポルテとフラン・フリーデンのみ」

『どうやってダンジョンに入ったのか?』とクロエに聞いたら、『フラン・フリーデンが許可証を金で手に入れた』と言っていたんだ」

「証明書は人数と階層を記録するだけだから、許可証自体の売り買いはできなくはないわ。

 普通の冒険者は売ったりはしないんだけどね」


 一億だからなぁ……。


「ちなみに再発行も申請に一カ月と白金貨一枚。

 更に魔法陣は使えないから一階からのスタートね。

 しかし弱い者がダンジョンに入るということは死を意味するのに、それをわかってやったのかしら?」

 カリーネが「やれやれ」という感じで腕を組んだ。

「わかっていなかったんだろうな。

 だから死ぬ目を見た」

 カリーネがフウとため息をつくと、

「金を積まれたのかしら」

 と口を開く。

「落としたペナルティーを考えても売る価値があったほどだったのかもしれない。

 まあ、フリーデン侯爵の息子だ、手元にある金の量も多い可能性はあるよな」

「実際に冒険者のパーティーが許可証を売ったのであれば、何らかの罰則を与えないといけないんだけど、パーティー側は落としたと言い張るかもしれないわね。

 あっ、ダンジョンで人を助けた場合、相応の対価を請求することができるわ。

 その気があるのならばフリーデン侯爵に聞いてみればいいと思う」

「まあ、礼はもらえるようだが、実際に行ってみないとわからないだろうな」

「そうよね、一応こっちでも許可証を売ったパーティーを探してみるわ。

 二十階以降へ行けるパーティーだから、意外と早く見つかりそう」

「よろしく頼むよ」

 そう言って、扉の前から去ろうとすると、

「少しだけ……」

 と言って、俺に抱きついて匂いを嗅ぐカリーネだった。

 それを見たエリスがニヤニヤしていたのは言うまでもない。


 子供に見せていいのかね?



 再びゼファードのダンジョンに潜る。

 二十階以降は入る冒険者が少ないのか、残っている魔物も多い。

 しかし、懸念事項であるアイナもマールも二十階の戦闘以来魔力酔いも起こらなくなっていた。

「魔力を得ることに慣れてきたのね。

 これならボスに勝った後ぐらいにしか、酔わないかも」

 攻略速度は1日で一階を攻略する程度。

 以前に比べれば遅くはなっているがそれでも攻略速度としては早いらしい。



 二十三階の魔物をすべて倒し、Gな時計を見ると、もう十分もすればアラームが鳴る時間。

 そのまま攻略を切り上げ屋敷の庭に戻って後始末をしていた。

 すると、

「馬車の用意ができました」

 と、サイノスさんが荷駄用の小さな馬車と馬を連れて現れる。

「すみません、馬がみすぼらしいのですが……」

 申し訳なさそうな顔をするが、

「ああ、いいんだ。

 できるだけみすぼらしい方がいい。

 馬屋の傍に繋いでおいてもらえますか?」

「わかりました」

 サイノスさんは馬を曳き馬屋のほうへ向かった。


「マサヨシ、あんな馬車どうするの?」

 とクリスが聞いてきた。

「ん?荷台にフラン・フリーデンを載せてフリーデン侯爵家に行こうかと思っているんだ」

「そう言えば、眠らせたままだったわね」

「家に帰すためにそろそろ起こしてやらないといけないだろ?

 と言っても起こすのは明日、屋敷での話だけどね」

「みんなで行く?」

 アイナが聞いてきた。

「いいや、俺一人……いや義父さんと二人で行くよ」

 もともとその予定だ。

「だったら良かった、おじいちゃんが居れば大丈夫」

 安心するアイナ。

「何だ、その信用の無さは……」

 と愚痴を言うと、

「貴族同士のやり取りなら、クラウス殿のほうが知っておるからの」

 と言ってリードラに笑われてしまった。



 執務室に居る義父さんのところへ報告にいくと、

「そうか、準備ができたか」

「はい、サイノスさんが馬車を準備してくれました」

「段取りは?」

 私は荷馬車でゼファードからオウルへ帰ってきたことにします。

 そして、義父さんに合流。

 私はそのまま荷馬車で、義父さんはアンに乗ってフリーデン侯爵のところへ行きましょう。

 先触れは要りますか?」

「ミスラ殿が居れば、お前の名を出せば兵士の一人ぐらいは走らせてくれるだろう。

 居なければ儂と合流したときに、タロスに走ってもらうか。

 どちらにしろマサヨシがフランを保護したと連絡があれば、フリーデンも会わざるを得まい」

「わかりました

 フラン・フリーデンを起こすのは、フリーデン侯爵の屋敷の中でいいと思っています」

「そうだな、あの姿とはいえ暴れられるのは困る」


 俺は簡単に欠損部位を回復しているが、実際にはどれくらいの価値があるのだろう。


 そう思って、

「義父さん、欠損した部位を回復させることができるのは知っていますが、他者に依頼した場合いくらぐらいかかるのでしょうか?」

 と聞いてみた。

「白金貨が何枚要るかわからないだろうな」


 億の金が動くのか……。


 「お前が簡単に使う欠損部位を復活させるほどの治癒魔法をこの国で使える者を聞いたことがない。

 もし、フランの傷を治せば、確実に恩を売ることができるな」

「既に恩は売っていますよ。

 ゼファードからオウルまで息子を連れ帰ったのですから」

「そうだな、後はお前が決めればいい。

 儂は必要だと思ったら助け船を出そう」

 こうしてイタズラの段取りが決まるのだった。


 次の日の朝、オウルに向かう街道を、荷台の布団に寝ているフラン・フリーデンを載せた荷馬車を駆け足程度で走らせる俺が居た。



読んでいただきありがとうございます。

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