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第9話 いろんなところに行きたいなら、例の扉を作りましょう。

 お互いに寝間着を着て寝たはずなのに、クリスは俺の腕を抱き全裸で胸を押し付けていた。


 はあ……年齢のせいか俺の息子も元気だ。

 生理現象だから仕方ないが、見られなくて良かった。


「これが若さか……」

 そう呟くと、何とかクリスの抱き付きから逃れてベッドを降りると、近くの机にあった水差しから水を飲む。

 頭がすっきりした。


「マサヨシが居ない」

 と、起き上がって周りを窺うクリス。

 俺を確認すると、

「お休みぃ」

 と言って、二度寝を決め込む。

「飯食うぞ」

 と起こしてみたものの、そのまま裸に見とれてしまった。

 それを見て、

「襲ってもいいのよ」

 ニヤリと笑うクリスに、

「早く服を着ろ」

 とクリスの着替えを投げつけるのだった。


 木漏れ日亭で朝食を終えると、冒険者ギルドへ向かう。

 そして、俺たちは掲示板に行ってみた。

 色々あるのだが、端のほうで黄色く変色しているものがあった。


 焦げ付いた依頼だろうか?


「炎の風討伐 一千万リル」と書いてあった。


 十億円の依頼って……。


「クリス。これって、長期間達成されていない依頼?」

 俺は、気になってクリスに聞いてみた。

「そう、危険性が高い依頼はどうしても残ってしまうわね。

 私も聞いたことがあるけど、この盗賊団は二百人以上の手下を従えてこの辺の街道を荒らしてる。

 根城は洞窟を利用。

 その洞窟は結構入り組んでいる洞窟らしくてね、ここの領主による討伐も結局失敗したみたい。

 討伐隊に勝利して以降は我が物顔で暴れているらしいわよ?」

 クリスもやれやれって感じで、教えてくれた。

「それで領主は、あわよくば『冒険者に何とかしてもらおうかな?』って、ギルドに高額報酬で依頼しているわけか」

「そういうこと」


 領主様も大変だ。


「で、こういうのって、大体何チームのパーティーで攻略するんだ?」

「んー、三十から四十?

 でも、数が多いと結構面倒なのよ。

 食料や武器の損耗、けが人が出たらその費用はどうするとか……」

「ところで、パーティーってどうやって組むんだ?」

「それは、パーティーになる者同士で行動していれば、自動的にパーティーとみなされるの」


 ほう、オートなのね。


 一応、「一つのチームからでも」って書いてあるから俺たちだけでも討伐依頼は受けられるようだ。


 根城が洞窟? 殲滅するなら酸欠、毒ガス、色々考えられる。

 やり方があるなら、これを受けてもいいな。


「よし、これをやろう」

 俺が言うと、

「わかったわ、あなたなら何とかしそうね。受付に行って手続きしてくる」

 クリスは俺を疑わずに受付へ向かう。


 そしてしばらくすると、クリスが怒りながら戻ってきた。

「あの受付け嬢、私たちをバカにして……」

 リムルさんを睨み付けるクリス。

「ちょっと揉めたけど、手続き終わったわよ」

「揉めた?」

「ええ、Bランク冒険者一人とFランク冒険者の二人じゃ二百人の相手にならないと言われたのよ」

「うん、普通なら無謀だ」


 ギルドが正しい。


「マサヨシまでそんなこと言って。

 ギルドを納得させるために『ダメそうなら帰ってくる!』って言って、無理やり手続き終わらせたんだから」

「面倒押し付けて悪かった、ありがとな」

 クリスの頭を撫でた。

「もっもう、何するの?

 ああ、武器とか食糧買わなくていい?」

 クリスの顔が赤い。

「思いついたことが可能なら日帰りで済む。

 クリス、根城までの地図ってあるか?」

「さっきもらったコレでいい?」

 クリスは冒険者ギルドに貰った地図を渡してくれた。

「後はこの街を出てからだな。それでは町の外に行こう」

 俺はクリスを連れ門へと向かう。


 街の出口へと進んでいると、家の解体作業に出くわした。

 頑丈そうな木の扉が無造作に捨ててある。木枠もまだついており真鍮製の取っ手まで。なんなら扉をピンクに塗れといわんばかり。

 まっ……まさか?

 未来の猫型ゴーレムのネタを使えって? 

 確かにあれは有ると便利だ。

 まさに創魔師としての出番。


「この扉ってどうするんだ?」

 解体中のおっさんに声をかけた。

「そりゃおめえ、使える金具だけ取って、あとは燃やすのよ」

 おっさんは流れる汗をタオルで拭きながら答えてくれた。

「売ってくれるならいくらだ!」

 解体の音が大きく、どうしても大声になる。

「二百リルでどうだ?!」

「買った! 銀貨2枚でいいな」

 俺は銀貨を二枚出す。

「まいど! 扉なんてなんに使うんだ?」

 不思議そうにおっさんは聞いてきた。

「魔法の研究! あとは内緒だ!」

 そう言うと、俺は手早く扉を収納カバンに扉を入れる。

 そして、すぐにその場を去った。

 おっさんはビックリしていたが無視である。

 俺は「いいもの」を手に入れたと思った。


 さて俺は子供の頃、未来の猫型ゴーレムのアニメが好きだった。

 俺の中の未来の猫型ゴーレムの声優は、大山さんのままだ。

 ついに未来の猫型ゴーレムが持ってるアイテムのうちの、二つ目に手を出すことにした。

 すでに、四次元なポケットも俺の収納カバンとして活用されている。

 次はどこにでも行ける扉の番だ。どこにでも行ける扉にはすでにマップがインストールされているようで、黄色いシャツを着た子や、ネコ型ゴーレムがイメージして言えば大体の場所に移動することができる。

 しかし、俺の頭の中のマップは、一度その場所へ行ったり見たりしたことがあるか、手書きでもなんでも地図のようなものがあるとか、人が教えてくれたとか、何らかのアクションがないと場所が表示されない。

 それでも間違いなく便利なので、劣化版でどこにでも行ける扉を作ってみることにした。


 人の通りが少ない裏通りに入ると、俺は立ち止まる。クリスは怪訝な表情をしている。

「扉なんて何で買ったの?」

 クリスが俺に聞いてくる。

「新しい魔道具を作ろうと思ってね。どこにでも行ける扉」

「どこにでも行ける扉?」

「んー正確に言うと、話に聞いたり地図を持っているところに行ける扉。

 現場が遠い場合、行くのが面倒でしょ?

 だから、この扉で説明や地図でわかる場所を繋いで、行き来できるようにしようかと思ってるんだ。

 移動の時間がもったいないような気がしてね……」


 俺は、収納カバンから扉を取り出した、そして例の扉をイメージし扉へ魔力を流し込む。

「パタン」

 おっと扉が自立しやがった。そういえば、未来のネコ型ゴーレムのやつも自立していたな。

「もうできた?」

 クリスが聞いてくるが、

「正直、使ってみんと分からん」

 と俺は言った。

 成功したかを確認するために、実際使ってみる。

 場所は、木漏れ日亭のリビングをイメージ。

 劣化版どこにでも行ける扉に正対しノブを持つ。

 魔力を流しノブを捻って扉を開けてみた。


 すると何ということでしょう!

 そこには見慣れたリビングがあるじゃありませんか! 


「こっち来てみ」

 恐る恐るクリスがやってくる。

「えっ」

 クリスは口を開け、目を見開き驚いていた。

「これで遠くても木漏れ日亭まで帰ることができるな」

 ちょっと誇らしい。

 ここまで簡単にできるとは。

「マサヨシって、意外とすごかったのね」

「意外と」の言葉に少々モヤモヤ感があるがクリスに誉められた。


 次に俺は冒険者ギルドにもらった地図を、俺のマップとをリンクさせ根城へ直接行くことに挑戦することにした。

 地図はクリスが貰ってきてくれた奴だ。地図を見るとちゃんとマップに根城の位置が表示されている。

 扉に正対しノブを持つ。魔力を流しノブを捻って扉を開けてみた。


 すると、何ということでしょう!


 そこには変わらず裏通りが広がっていた。


 失敗した? 

 通り抜けても扉の裏に出ただけじゃん。

 あれ?

 俺のマップと扉がリンクされない。

 視界にあるマップをよく見て確認すると、色の違いが微妙だが、行ったことがある場所と無い場所の色が違う。

 結局一度行かないと扉は使えないわけなのか。


 今度も問題ないと思って、大々的に扉のデモンストレーションをしたので結構バツが悪い。

 クリスにジト目で見られている。

「まあ、抜けているところもいいんだけどね」

 慰めの言葉が辛い。

「はいはい、ここまでは読めませんでしたよ。

 申し訳ない」

 仕方がないので扉を仕舞った。



読んでいただきありがとうございます。

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