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第88話 訳がわからないそうです。

 魔石って、どのくらいの価値があるのかね……。


 現在、素材系が絶賛増加中の俺は少し考えた。

 そして、冒険者ギルドへ向かう。

 と言っても受付からだが……。


「あっ、マサヨシ様。」

 受付嬢の一人が俺に気付いた。

 すでに「グランドマスターのいい人」だということは周知されているため、俺が冒険者ギルドに入ると受付の誰かから声がかかり、

「マスター呼んできましょうか?」

 と聞いてくる。

「いいや、忙しいと思うからいいよ」

「マサヨシ様、呼ばないとマスターの機嫌が悪くなるんです……。

 だから、呼んできますね」

「迷惑かけるなぁ」

 と頭を掻きながら言うと、

「いいえ、ちょうど今ですね、マスターは多分嫌な話をしていると思います。

 逆にマサヨシ様が来るとマスターの機嫌がよくなるので、機嫌が悪い時には我々としては助かるんですよ?」

 そう言って、カリーネを呼びに奥に行った。


 嫌な話って何だ?


 すると、話が通ったのか商人風の一人の恰幅のいい男が追い出されるように出てきた。

 そして、出口へ向かう。

「もう、今更何を言い出すのか……」

 見た目で機嫌が悪いカリーネ。


 何者?


「いらっしゃい。

 直接部屋へ扉で来ればいいのに……」

 俺を見ると、カリーネの機嫌がよくなるのは一目でわかった。

 受付嬢がニコリとして俺に頭を下げる。


 機嫌を取れということなんだろう……。


「そうもいかないだろう?

 一応部外者だしな」

「考え過ぎよ。

 どうせ、受付嬢も身内認定で私を呼びに来たんでしょ?」


 俺は既にエリス枠らしい。


「まあ、そういうことみたいだが……。

 それでも一応冒険者だしな」

「ハイハイ」

 と言ってカリーネに流されてしまった。

「で、何の用?

 オーク関係はもう終わったと思うけど……」

 以前のオーククイーンとプリンセスの解体は終わって肉と魔石はもらっている。

「まあ、いいわ」

 と、カリーネは歩き始めた。

 少し気になったので、

「さっきの男は?」

 と聞いてみると、

「部屋で話すわ。

 早く来て」

 俺はカリーネの後に付いてマスターの部屋へ向かった。


 俺を先に部屋へ入れ、鍵を閉めるカリーネ。

「鍵をする必要はないだろう?」

「んー、マサヨシ充填」

 と言って俺をソファーに押し倒し、上から被さってきた。

 カリーネはスンスンと匂いを嗅ぐ。

「ふう、充填完了」

 すると、何かに気付いたようで、カリーネは俺の耳を引っ張る。

 耳の中を覗いているようだ。

「あっ、ちょっと待って……」

 カリーネは体を起こすと、机に行って引き出しを開けた。

 何かを見つけてゴミ箱を一緒に持ってくると、俺のところに戻ってくる。

 そして、ソファーに座ると、トントンと太ももを叩いた。


「ソファーで横になれ」ということらしい。

 俺はソファーに横になりカリーネの太ももへ頭を載せる。

「耳掃除なんてしてないんでしょう?

 取ったげる」

 そう言うと、カリーネが耳掃除を始めた。


 耳かきを取りに行っていたようだ。


「うわっ、すごっ……」

「いつから掃除してないのよ!」

「あー、でもきれいになっていくと気持ちいいわね」

 などと、耳かきを動かすたびに一言呟く。


 そう言えば、こっちに来てからは耳掃除なんてしてなかったな。

 忙しかったから気にしなかったのか、面倒だから忘れていたのか……。


 狭いソファーの上、なにも考えずにカリーネのほうへ顔を向けていなかったのだが、

「はい、逆」

 と言われてカリーネの方を向くと、俺の頬にカリーネの胸が乗る。


 役得……でいいのかね?


 カリーネは再び俺の耳掃除をはじめた。


 しばらく俺の耳を掃除すると、 

「はい、終わり!

 あー、気持良い」

 と、カリーネが大きな声をあげる。

「おう、俺もすっきりした。

 ありがとな」

 そう俺が言うと、カリーネが俺に覆いかぶさりスッと口を尖らせる。

 上を向くと、

「ん」

 と言って何かをせがむ。

 俺は「ふう」と一つため息をつき、

「みんなには黙ってろよ?」

 と言って軽く口づけをした。

「そうね、内緒」

 と言って嬉しそうにカリーネが笑う。


 結局そのままソファーに二人で座り、

「さっきの男は?」

 と俺は聞いた。

「ああ、あれね。

 あれは、どこかの貴族付きの商人。

『フリーデン侯爵』だったと思う。

『フラン』って息子が私を見染めたらしいわ。

 それで、『愛人にならないか』ってお抱え商人に口利きを依頼したみたい

『子供が居るから』って断ったんだけど……。

 それに『珍しい狐人だから』という理由らしいけど、そういうので見染められてもね。

『愛人のコレクション』にって感じらしいわ

 そんなのは嫌でしょ?」


 ここでフリーデン侯爵か……。


「でね、婚約者が居るからって突っぱねちゃった。

 さっきも『婚約者が来たから』って追い出したの。

 ダメだった?」

 上目遣いで、申し訳なさそうにカリーネが言った。

「ん?

 それでいいんじゃないか?

 そのつもりだし」

 するとカリーネが目を開き、

「嬉しい!」

 と言って抱き付いてきた。

「でね、最近この部屋から直接屋敷に帰ってるでしょ?

 だから商人も私を捕まえられなくて困っていたみたい」

 そして、俺を見上げながらイタズラが成功したようにニコニコ笑いながら俺に言った。

「それで強引に約束を取り付けて、話をしてきた訳か……」

「そういうこと」

「実際に屋敷に住んでるしな。

 別に『婚約者』って言ってやればいい

 屋敷に居る者も誰も否定しないだろうしな」

「うん」

 今度はカリーネが俺の太ももに頭を載せてきた。


 俺はカリーネの頭を撫でる。

「そう言えば、マサヨシは用事があってきたのよね」

「そういうことになるな」

「ごめんね、時間とっちゃったね」

「それは大丈夫なんだ。

 ダンジョンも順調に二十階層のボスも倒したし、それでアイナとマールが魔力酔いになって昼過ぎには帰ってきたからな」

 カリーネはガバッと体を起こすと、

「えっ、もう二十階層?」

 と俺を見て言った。

「ああ、二十階層。

『ボスはジャイアントポイズンスパイダーのメスだった』ってクリスが言ってたね」

「ボスの種類がそれなら本当ね。

 早くても半年はかかるはずなんだけど……」

 眉間をを押さえるカリーネ。

「今、二十階層以下に行っているパーティーなんて数えるほどなのよ?

 歴代でさえ最下層が三十七階層だと聞いてるわ。

 どんなパーティーもそこを越えることができないと言われている。

 気をつけてね」

「おう、わかった。

 それで、俺が結構な量を収納できるカバンを持っているのは知っているだろ?

 その中にはジャイアントポイズンスパイダーのメスの体全部と、オスの百体以上。

 あっ、ジャイアントビートルも居たな。

 後は、形が残っていないジャイアントポイズンスパイダーから取り出した魔石。

 これをどうしたらいいかなんだが……」

「はあ、あなた達がバケモノだって言うのを忘れてた……。

 それで、解体したいの?」

 呆れるようにカリーネが言う。

「いいや、メルヌの近くでダンジョン見つけたって聞いてるだろ?」

「ええ、私もあなたが大暴走を止めるために魔物を倒して、魔力酔いで潰れたのは知ってる。

 目を覚ますまで近くに居たし」

「ありがとな」

 俺が頭を撫でると気持ちよさそうにしながら、

「うん」

 と頷く。

「それでな、そのダンジョンに街を作るんだったら金が要るだろ?

 で、素材を売った方がいいのかと思ってね」

 カリーネは少し考えると、

「そうねぇ、高価な素材は確かにお金になるけど……マットソン子爵には兵士が居ないでしょ?

 だから、その素材で防具や武器を作ったほうがいいんじゃないかしら。

 良い武器や防具を提供してくれると聞いたら、兵士も集まると聞いているわ。

 今後は宝箱を得れば、それなりのお金が入ってくるでしょうしね。

 魔石は大きいものを残しておいて、売り払えば良いと思うわ」

 と言った。


 そう言えば魔石に魔力を溜めて置けるって言ってたな。


「了解、もう少し様子を見るよ。

 ちなみに、ジャイアントポイズンスパイダーの素材として、外殻以外に何がある?」

「そうね、毒袋はまあ武器に毒を塗るために使われたりするけど、買って行く人は少ないかな。

 あとは、糸線かしら。

 処理して糸にすると、いい弓の弦になる。

 メスの糸線はなかなか手に入らないの。

 強弓ができるわね」

 と、教えてくれた。

「武器も作らないといけないのか。

 そんな武器を作ってくれる人って居るのかね?」

「今度紹介するわ。

 で、魔石ってどのくらいある?

 解体所に預けてもらえれば、こちらで売っておくけど……。

 えーっと、ああ、そう言えばロルフ商会を懇意にしてたわね」

「ああ、お菓子とかの販売を任せてる」

「私が言っちゃいけないんだけど、ロルフ商会に頼むといいわ。

 そのほうがマサヨシに入るお金が多くなるから……」

「それをやると、カリーネの立場は?」

「ギルドの収入は凄そうだけど……んー、別にいいの。

 やめたっていいし。

 メルヌの街の冒険者ギルドにマスターとして入ってもいいしね」

「それはダメだろ。

 やめるんだったら、寿退社のほうがいい」

「寿退社?」

「ああ、結婚を機に……って奴だ」

 ピクンとカリーネの耳が動く。

「既にオークキングの件もあるが、魔石はちゃんとギルドで売ってもらうよ」

 そう言うと、

「うん」

 と嬉しそうにカリーネは頷くのだった。


 その後二人で解体場に行き担当者の前で二千以上の大小の魔石を出す。

 まだ、メスと形を留めるオスの中からは魔石を出していないので、もっとあるだろう。


 カリーネはその数に驚き、

「何、これ!

 百程度ならわかるけど、二千って!

 馬鹿みたいに多いじゃない!」

「そう言えば、大暴走の時に狩ったドラゴンの素材もあるが……」

「えっ、もう、どうするのよ。

 わけわかんない!」

 と怒られる俺が居た。


読んでいただきありがとうございます。

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