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第72話 高級肉をどうします?

 オーククイーンとオークプリンセスの魔力が大きかったようで、アイナの具合が朝になっても良くなっていなかった。

 そのため、ダンジョンはお休みである。

 仕方ないので、肉の件の相談に義父さんが居る執務室へ向かった。


「義父さん、オークキング、オーククイーン、オークプリンセスの肉が手に入ったのですが、どうすればいいでしょうか?」

「えっ……。

 お前、ダンジョンに入って何日目だ?」

「えーっと、二日です」

「まさか、十階のボスを既に?」

「ええ、私とアイナで倒しました」

「ああ、最近調子が悪いと聞いていたが、魔力酔いか……。

 アイナも儂の相手にならんほど強くなりそうだな」

 義父さんは苦笑いしていた。

「さて、肉の件だったな」

「ええ、クリスとリードラが『美味い』と言うので、皆で食べてはどうかと思いまして……」

「それはいい。

 まずはギルドで解体だろう。

 オークプリンセスはメルヌの街のほうで住人達に振舞うか?

『領主の息子になった男が振舞う』と言えば、領民にも覚えがいい」

「わかりました」

「ふむ……オーククイーンとオークキングは我が家で食べよう。

 メイドも執事もなしで、アランもボーもベルタも一緒にパーティーをすればいい。

 次いでにイングリッド殿下も呼ぶか?

 あの殿下なら来そうだな」

「そうですね、今度パーティーを開きましょうか。

 カリーネもエリスも呼びますね」

 と俺が言うと、

「そうだな、人は多い方がいい」

 こうして来年の行事が一つ決まるのだった。



 俺はオウルの冒険者ギルドに行く。

 時間をずらしたので受付が空いていた。

 すんなり受付に座ると、

「すみません!

 解体の依頼をしたいのですが」

 と声をかけた。

「マサヨシ様。

 私たちが勝手に手続きしてしまうと、多分あの方の機嫌が悪くなるので……」

 と申し訳なさそうなギルド職員。


 ああ、そう言うことね……。


 俺は職員に連れられ、マスターの部屋に向かった。

 職員が扉をノックすると、

「何?」

 と、カリーネの声。

「マサヨシ様がいらっしゃっています。

 お通ししても?」

「えっ、ちょっ、ちょっと待って……。

 えーっと、あっ寝癖がついてるじゃない。

 化粧は……」

 ブツブツと言う声が丸聞こえだ。

 俺は職員に、

「あとはやっておくから」

 と言って、受付へ戻す。

 そして、

「入るぞー」

 と言ってマスターの部屋の扉を開け中に入った。

「独り言が丸聞こえだぞ?」

「あっ」

 準備中のカリーネは驚く。

「髪の毛も化粧も問題ないぞ」

 と笑いながら言うと、

「もう、意地悪ね」

 と言って、カリーネは恥ずかしそうにした。


「で、何の用?」

「魔物の解体の依頼だ」

「残念……。

 でもそこは『会いに来た』と言うのが筋じゃない?」

 と言ってカリーネがぷくりと膨れる。

「用事があったから来たってのが正しいからなあ。

 仕事の邪魔しちゃ悪いと思って、受付で処理しようとしたんだが、結局ここに連れてこられた」

 こっちも苦笑いである。

「そう、残念。

『私に会いたくて』って言わせられるようにならなきゃね。

 さて、解体だったわね。

 どんな魔物の解体?」

「えーっと、オーククイーンとオークプリンセスだね」

 俺が言うと、

「えっ……」

 と言ってカリーネが固まった。

「どうかしたか?」

「まさか、十階のボスを?」

「よく知ってるな。

 まさにその通り。

 アイナが倒したよ。

 まあ、そのせいでアイナは魔力酔いになってしまったけどね」

 苦笑いしながら俺は言った。

「そうでしょうね」

 とカリーネも頷く。


「で、解体した物はどうする?」

「皮は防具の材料になるって聞いたから、売ってもらって結構。

 でも、肉は売らない。

 義父さんとも話をして、プリンセスはメルヌの住人に配分し、キングとクイーンは年が明けたら身内でパーティーでもして食べようかとね。

 当然、エリスもカリーネも来てもらうが。

 と言っても、いつも居るから呼ばなくても大丈夫か……」

 すると、カリーネは少し考えて、

「あのね、私、借りてる部屋引き払っていいかしら?」

 と言ってきた。

「いいんじゃないのか?

 今でも屋敷に居るのと同じだろ?」

「違うの、私のケジメ。

 あなたがダンジョンを攻略している理由は知っている。

 だったら、私もあなたの下に行かないとね。

 でも……勝手に盛って、勝手に『妻になる』って居ついてるけどいいの?

 私は、知っての通りあの子たちとは違う」

 自信がないようで、声が小さくなる。

「今更何が?」

「私、子供居るし」

「ふむ、義父さん喜んでるぞ?」

「使い古しだし」

 更に下を向いて小さな声でカリーネが言う。

「カリーネそれを言うなら『俺でいいのか?』ってことになる。

 知っての通り俺も『使い古し』だ。

 俺は結婚していたんだ。

 それに、この世界では二十二歳ってことになっているが前の世界ではその倍近くの年齢だったし……。

 クリスかリードラに聞いて知ってるだろ?」

 と俺が言うと、カリーネは俺を見て再び固まった。

「聞いてなかったのか?」

「お酒の席で別の世界で結婚していたのは聞いたけど……倍の年齢?」

「まあ、そういうことだ。

 精神年齢は結構なオッサン。

 結局のところ俺こそ『こんな俺でいいのか?』ってことになる。

 俺はカリーネが嫌いじゃない。

 だから、居て欲しいから引越しには反対しない。

 カリーネはこんな俺は嫌か?」

「嫌じゃない……」

「だったらそれでいいと思うぞ。

 ちゃっちゃと家を引き払って、屋敷で暮らせ。

 引越しはみんなでやるから心配するな」

「うん、ありがとね。

 包容力があるのは、その精神年齢のせいなのかしら?」

 そう言うとカリーネは俺に近づき体を預けてくるのだった。



 しばらくすると、カリーネは仕事の顔に戻り、

「それじゃ、解体場に行きましょうか」

 と言って俺の左腕に飛びつく。

 そして部屋を出ると、受付のある部屋へ行った。

 俺とカリーネの姿を見て、冒険者や職員がザワつくが、カリーネは気にしていないようだ。

 まあ、だったら俺も気にしないことにして、解体場へ向かう。


 解体場にオーククイーンとオークプリンセスを出すと、

「これって、ゼファードのダンジョンの奴ですよね」

 と言って担当者は驚いていた。


 なんで、ゼファードのが?

 この大きさをどうやって?


 とか、担当者は思っているのだろうが、

「で、これ、どれくらいで解体できる?」

 と、有無を言わさずに仕切るカリーネ。

「えっ、ああ、そうですね。

 大きいので五日ほどかかるかもしれません。

 まあ、これだけの大物だと、魔力もあるから一か月ぐらいは腐ったりはしないでしょう」

 と、魔物の死体を見ながら担当者は言っていた。

 

 まあ、俺の収納カバンの中は時が止まっているようなので問題はない。


「と言うことらしいわ、出来上がったら私からマサヨシに連絡するわね」

「ああ、頼むよ」

 こうして、カリーネのお陰で肉が確実に手に入るようになった。



 焼き肉?

 ステーキ?

 ハンバーグ?

 しゃぶしゃぶ?

 いろいろ料理が思い浮かぶ。

 さて、パーティーが楽しみだ。



読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字が多くて申し訳ありません。

指摘をしていただき、大変助かっております。

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