第60話 獣人の本能。
短いので二話投稿です。
風呂を出て髪を拭きながら廊下を歩いていると、妙に我が家の女性陣がよそよそしい。
何かあるのかね?
最近屋敷に住んでいるんじゃないかというぐらい屋敷に居るエリス。
まあ、部屋があるから居てもおかしくはないんだが。
そのエリスが、
「お母様、あまり寝てないようなの。
何とかしてほしい」
と意味深な言葉を発し、去っていった。
「さて、何でしょね?」
と言いながら部屋に入ると、布団が人型に盛り上がっていた。
クリスもリードラ、マールもさっきすれ違ったしな。
アイナやフィナにしては大きい。
エリスもしかり。
ミランダさんは義父さんぞっこんだし……。
「えーっと、どなた様でしょうか?
というか、カリーネだろ?」
ビクリと人型が動いた。
「何で俺のベッドに?」
すると、カリーネは何も着ていない上半身を出し、
「ダメなの、我慢できないの。
だから、クリスやリードラに言って譲ってもらったの。
盛りが収まらないのよぉ」
涙を流しながら言う。
「クリスには『私でも無理だったの。できるものならやってみなさい』
と言われたわ」
「知っててなぜ?」
「仕方ないじゃない。
これが獣人の本能」
そう言って俺に近づく。
「それでもできないなぁ。
抱き着くぐらいならいいが?
あと噛みつくとかはVITがあるから問題ない」
淡々と説明する俺に、カリーネは痺れを切らしたのか、しなやかな体で飛びつき、唇を奪う。
仕方ないのでカリーネを抱き上げ布団に入れる。
布団の中でカリーネを優しく抱くと、カリーネが俺の首筋にかみつきガジガジと甘噛みをはじめた。
手元に来るカリーネのしっぽのモフモフを堪能していると、獣人にとってはあまり触ってはいけない場所だったようで、カリーネが震える。
「おっとごめんよ」
と言うと、目を細めてカリーネが笑っていた。
続いて耳を堪能ついでにしばらく頭を撫でていると、何かに満足し疲れも出てきたのかスースーと寝始めた。
そう言えば「寝てない」ってエリスが言ってたな。
母ちゃんとしてもマスターとしても頑張っているんだろうな。
そんなふうに考えると、なんだか愛おしく思い、カリーネの頭を撫で続けるうちに俺も寝てしまっていた。
俺は朝暗いうちにベッドの動きで目を覚ます。
カリーネがこっちを向いて寝ていた。
寝返りを打ったようだ。
じっと見ていると、カリーネがうっすらと目を開け、俺を確認すると顔が真っ赤になった。
「恥ずかしい」
「昨日の態度と全然違うな」
「だって、盛ってるのを我慢しているとあんなふうになるんだもの。
本当に、ほんっとうに久しぶりなの。
ごめん、迷惑かけた」
布団を出て正座したあとに一通り謝ると、シュンとするカリーネ。
「そうだなあ、たまにはカリーネと一緒に寝るのもいいかな。
ただし、クリスとちゃんと話をしてくれよ。
あっ、あと、リードラやアイナ、当然エリスにもな」
俺が怒らなかったからか、
「うん」
と嬉しそうにカリーネは言う。
「さて、起きるか」
と俺が言うと、
「ええ、でも……」
カリーネは全裸であることに、今更ながら気づいたのだろう……毛布で胸から下を隠した。
「もう、見ないで」
と恥じらいながら、仕事着に着替えるカリーネの肌は真っ赤になっていた。
まあ、俺も寝間着から普段着に着替えたがね。
首筋に着いたキスマークもついでに治療しておいた。
揉める原因。
着替えも終りカリーネは再び俺の胸に抱き着く。
そしてクンクンと匂いを嗅ぎはじめ、
「もう少しマサヨシを充填」
と言っていた。
そしてしばらくして、パンと両手で頬を叩く。
「さて、今日もがんばろ。
マサヨシ、食堂までエスコートして」
と言って、いつものカリーネに戻り俺の腕に抱き着いて食堂に向かうのだった。
女性陣の朝食が姦しかったのは言うまでもない。
朝はもう少し静かに……。
読んでいただきありがとうございます。




