第34話 やっぱり卵も欲しいでしょう。
「さて、卵が欲しい」
「前にも言ったでしょ、卵は下賤の者が食べる物」
怒るクリス。
「私はアイナちゃんと卵を食べたことあるよ?
熱を入れれば美味しかった。
美味しかったよね?」
フィナがアイナに声をかけると、
「美味しい。でも新鮮じゃないとダメ
水に浮く卵はダメ」
と、アイナは言った。
苦労がしのばれる……。
「我はワイバーンの卵を食べたことがあるが、少し塩味があって美味かったぞ?」
クリスが不利になってきた。
「ちなみに卵を産む魔物と言えば?」
「魔物は大体卵を産む。
ただし、飼うのであれば陸を走る鳥の魔物が良かろう」
リードラが言った。
「だったら、何て名前の魔物?」
「コカトリスなんてどう?
石化持ってるし、飼い慣らせば防衛に使える。
『メルヌの街はコカトリスで持つ』なんて言われるかも」
クリスが言った。
「防衛戦力としてはいいんだろうが、なぜいきなり石化なんてハードルが高いものを?」
「大丈夫、あなた以上のバケモノはいないから」
クリスが言った。
その意見に、
「確かに」
「そうですね」
「うん」
リードラ、フィナ、アイナが同意した。
ハイハイ……。
さて、魔物を探すなら空の上。
リードラの全面協力の元、コカトリスの捜索が始まった。
と言っても、レーダーを駆使するのでそんなに難しくは無い。
既に、十頭ほどの集団がレーダー上にあった。
このパターン、フォレストカウと同じ。
ニワトリの頭部、竜の翼、蛇の尾、黄色い羽毛を持つコカトリス。
平原上に居る一回り大きいコカトリスの前に降りて威圧するが、コカトリスは反撃してきた。
おっ、やる。
しかしそれを避け、トサカのある頭にデコピンを入れると昏倒した。
様子を見守る仲間のコカトリス。
俺はコカトリスを起こし、目と目を合わせてさっきを上回る威圧でコカトリスを見ると、目をそらし負けを認めた。
「牛が人の言葉を理解したんだ、お前も理解できるだろ?」
コクリと頷く隊長。
「よし、お前らのメスは雛が生まれない卵を産むか?」
再び頷く隊長。
「その卵の新鮮な物を分けて欲しい。
俺としてはそれだけだ。
ただ、生活の場所は変えて欲しい。
そして、その周辺の人とフォレストカウを襲わないで欲しい。
その場所に来てもらえるならば、天敵からできるだけ守ることを約束しよう」
そう言うと、隊長は大きくうなずいた。
「では、隊長格のお前だけは隷属化させてもらうぞ」
いつもの流れで契約書を書き、契約台を出すと、コカトリス隊長は嘴を契約台に乗せる。
魔力を通すと隊長は一回り大きくなり、その上翼も大きくなった。
あっ、飛んだ……。
しばらくして戻ってきた隊長の周りにコカトリスが集まる。
話しが終わったようなので俺は扉を出し、メルヌの街の郊外に繋いだ。
そして、すべてのコカトリスを移動させる。
有精卵用の巣の材料を提供し、無精卵は地べたの一か所で産んでもらうようにした。
今回もセバスさんに一人の村人を紹介してもらい、無精卵の回収をしてもらう。
これで卵が手に入ることになるのだった。
次の日、メルヌの街側に行くと、すでに回収され三個ほどの無精卵が玄関の横に置いてある。
ダチョウの卵より一回り小さい程度の大きさ。
その卵を手に入れ、基本のプレーンオムレツを作り、朝食に出した。
「なんだこれは!
これが本当に卵なのか?
儂も知らなかった!」
そう言って、パクパクと食べる義父さん。
「私が悪かった。
こんなにおいしいとは思わなかった。」
そう言いながら手が止まらないクリス。
「うぐっ、今度作り方を教えてください」
喉を詰まらせながらも食べるフィナ。
「…………」
無言のままだが手は止まらないアイナ。
「主よ、まだ卵を持っておるのだろ?
丸呑みにしていいか?」
ちょっと違うぞリードラ。
ピ〇コロかてめえ。
まあ、なんか、この世界に勝った気がして気持ち良いい。
これで、マヨネーズも作れる。
砂糖か蜂蜜が手に入れば、プリンもクッキーもアイスクリームだって……。
蜂蜜手に入ったら菓子作ってみるかなあ。
作りたい物を思い浮かべる俺だった。
読んでいただきありがとうございます。




