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第33話 いいものを手に入れました。

 オークキングの素材を得るために、オウルの冒険者ギルドに向かう。

 今日は、俺一人と言う事になった。

 クリスとアイナは戦闘訓練。

 リードラは、皮を剥いているそうな……。

 脱皮の時期らしく、恥ずかしいから別の場所で皮を剥ぐということらしい。


「マサヨシさんだぁ」

 オウルの冒険者ギルドに入るとエリスが俺に抱きついてくる。

「おう、待ってたのか?」

「うん、マサヨシさんが今日来るって言ってたから、待ってた!」


 うわっ、皆の視線が痛い。

 そんなに警戒しなくても……。

 警備員は警棒のようなものを持ち、俺が何かしないか見張っていた。

 前回何もしなかっただろ?


「お母さま呼んでくるね」

 そう言うと、エリスは奥の部屋に行く。


 ん?素材貰うだけにグランドマスター要らんだろ。


 そう思って、

「おーい、呼んでこなくてもいいぞ」

 とエリスに声をかけたが、すでに走り去った後だった。

「どうしたのエリス。お母さんは仕事中だから」

 そんな声が聞こえると、カリーネさんが現れる。

「マサヨシさん、お母様を連れてきた」

 ニコニコしながら言うエリス。

「あっ、こんにちは」

「こんにちは」

 二人は挨拶を交わすだけだった。

 エリスは期待したような目で俺を見ている。

「仕方ないね」


 自分で言って何が仕方ないのかはわからない。


「カリーネさんの姿を見れて目の保養になった。

 忙しいのにありがとう」

「えっ、ええ、エリスに引っ張ってこられただけだから……」

 目を伏せ赤くなるカリーネさん。

「お母様はマサヨシさんが言うと赤くなるよね。

 他のおじさんとかお兄さんがそういうこと言うと、冗談を言って返すのに」

「エリス!」

 ベッと舌を出すエリス。

 イタズラが成功して嬉しいようだ。

「エリス。

 俺も君の母さんの姿を見られて嬉しいが。

 わざわざ恥ずかしい思いをさせることもないんだぞ?」

「ごめんね、マサヨシさん」

 しゅんとしながらエリスは俺に謝った。

「謝るのは俺じゃないぞ?」

 俺が言うと、

「ごめんね、お母様」

 エリスはカリーネさんにぺこりと謝った。

「まあ、俺もエリスの期待に応えたのも悪かったんだ……申し訳ない」

 頭を掻く俺。

「うん、こういうこと言って欲しいなあって見てたら、マサヨシさんが言った。

 そしたらお母さまが赤くなった。

  これって『意識してる』って言うのかな?」

「もう!」

 再び赤くなるカリーネさん。

「調子に乗りすぎない。

 お母さんが困ってるだろ?」

 エリスを軽く小突く。

「イタッ、ごめん」

 ペロリと舌を出してエリスが謝った。


 そんな時、


「何とかしてくれ!」

 と、一人の男が飛び込んできた。

「どうしたんですか?」

 カリーネが聞くと、

「大量のハニービーが木の下に丸く固まってる!

 近寄ると刺されそうで怖いんだ」

 男は大きな声を上げていった。


 ああ、分蜂で蜂玉ができているのか……。

 新しい巣を探すつもりだな。


「依頼になりますがハニービーは数のせいで高いです。

 それに今回のような場合は、蜜も取れませんからやる冒険者が居るかどうか……」

「そのハニービーを貰えるならタダでやりますが……」

 俺は手を上げる。

「それでも、冒険者を使う場合、ギルドへの依頼料が発生します」

「成功報酬が無くても?」

「ええ、無くても。でないとギルドが運営できません」

「面倒だねぇ。

 おじさん。ギルドに依頼料だけ払って」

「成功報酬無しでいいのか?」

「ああ、いいよ」

「それは助かる。

 ハニービーはBランクの魔物と言われている。

 依頼料だけでも銀貨十枚はするんだ。

 成功報酬を加えれば金貨一枚は超えると思っていた」

「まあ、俺はBランクだから問題ない」

 手続きが終わった依頼表をパッと受け取り、受付嬢に渡し処理をしてもらう。

 終始カリーネさんには睨まれていた。

「じゃあ行ってくるかな」

「マサヨシさん頑張ってね」

「素材の事もあるから、すぐに帰ってくる」

 俺はおじさんと一緒に蜂玉ができている現場へ向かった。



 現場へ向かう途中、一辺一メートルほどある立方体の大きな箱を見つけた。

 梱包に使っていた箱のようだ。

 店の人に、

「これ貰っていいかな?」

 と聞くと、

「ああ、後は壊して焚き付けにするだけだ、勝手に持って行ってくれ」

 そう言われたので、一つ失敬した。

 そのまま現場に向かうと、蜂玉がある。

 テレビで見たことのある蜂玉は直径三十から五十センチほどだったと思ったが、異世界は違う。

 直径で一メートル弱ほどあった。

 慎重に近寄るがブンブンと羽音を出して威嚇する。

 蜂玉の下に刺激しないように慎重に箱を置き、スリープクラウドをかけるとドサリと蜂玉のハニービーが箱の中に落ちた。

「はい、終わり。

 このハニービーは貰って帰るから……あっ、サインお願い」

 おじさんにサインをしてもらう。

「じゃあ終わりと言う事で」

 そう言うと早急に扉でオウルの屋敷に帰るのだった。


「マサヨシ、何大事そうに持ってるの?」

 大荷物を持った俺に気づいてクリスが寄ってきた。

「あなたなら収納カバンに入れて終わりでしょ?」

「生き物だからなぁ……」

「生き物?」

 そう言って箱を覗くと、

「何ハニービーなんか持って帰ってるのよ!

 数が多いから危険なのよ?」

 と言って怒られた。

「だから、隷属化するんじゃないか」

 庭にハニービーを広げ、中で一番大きな女王蜂を探す。

「こいつだな」

 俺はその蜂をつまみ上げ魔法で起こすと、

「何をする、この下郎」

 と、女王っぽい言葉で返された。


「ハニービーって喋れたの?」

 クリスが聞いてくる。

「そんなこと知るか!

 まあ、前の世界では蜂は喋れなかったはず」

 と俺が言う。


 そんなくだらない話をした後、

「女王蜂よ悪かったな。

 ただな、あのままだと全滅していた可能性があったんだ」

 俺はぺこりと頭を下げた。

 すると女王蜂は落ち着く。

 そして、

「膨大な魔力を持つ強き者よ、私をどうするつもりだ」

 と聞いてきた。

「んー、出来たら隷属化してもらいたい。

 そして、蜜を一部分けてほしい。

 そうすればお前らの天敵から守る。

 こういうのでどうだ?」

「隷属化。

 膨大な魔力を持つ者が居る場所で庇護してもらえるというのなら私としては問題ない。

 その箱を平らな石の上に置いて我々が出入りする隙間を作ってもらえれば、巣として活用できるだろう」

 俺は早速箱の蓋あった側の一辺を削り、使われてなかった東屋のテーブルの上に置いた。


 雨はしのげるだろう。

 後々、箱を入れる小屋を作るかな……。


「うむ、これなら問題ない。

 それではサクッと隷属化してもらえぬか?」


 軽いなこの女王蜂。


 契約書を出し契約台を置くと、その上に女王蜂が飛び乗る。

 魔力を流すと女王蜂の背に小さなユニコーンの紋章が浮かび上がった。

「終わったよ」

「おお、このみなぎる力。

 ホーネットになど負けぬ子を生み出せそうじゃ」


 ホーネット?

 スズメバチ?

 天敵?


「それじゃ、皆を起こすから説明を頼む」

 おれは魔法で残りの働き蜂たちを起こすと、ブンブンと俺の周りを舞い始めた。

 すると、契約台の上で女王蜂がキレッキレのダンスが始まる。

 働き蜂たちは契約台の周りを舞い始めそのあと巣箱のほうへ向かった。

「これで、あの箱は我々の巣になった。

 しばらくは巣を作る時間が欲しい。

 そのあとに容器を巣の中に置いてもらえれば数日のうちに蜜で満たすようにしておこう。

 ただ、蜜の匂いは別の魔物を呼び寄せることもある。

 それは、そちらで対処してもらいたい」

「わかったよ、ありがとう」

「クリス、ハニービーと巣に手を出さないようにみんなに言っておいて」

 俺が言うと、

「言っとくわね」

 そう言って館の中に入っていった。

 こうして、また一つ欲しかった甘い蜜が手に入る。



 ハニービーの件が終わったので、再びオウルの冒険者ギルドへ戻った。


 経過時間二時間ぐらい?


「お帰りぃ」

 エリスが近寄ってくる。

 受付嬢に依頼表を差し出すと、驚いたように俺を見た。

「終わったのですか?」

「ああ、終わった。

 俺の欲しい物も手に入った」

「欲しい物って何でしょう?」

「ああ、ハニービーの蜜」

「でも、ハニービーの巣は無いって依頼者は言っていましたが?」

「巣は壊すと蜜は二度と採れないけどな、ハニービーと仲良くして蜜を一部貰うと言う事にすれば、少しづつだけど蜜は貰えるんだ。

 まあ、蜜をもらうにはしばらくかかりそうだけどね」

「マサヨシさん、頭いいね」

「頭いいだろ」

 ふと視線を感じると、柱の陰からカリーネさんが覗いていた。

「はい、終了処理は終わりました。報酬は無いのでこれで終わりですね」

「了解。さあ終わった。家に帰るかな」

「えっもう帰る?」

 エリスが寂しそうにしていた。

 少し考えると俺を見上げ、

「マサヨシさんの家に行っていい?」

 と聞いてきた。

「ん?

 ああ、いいぞ?

 でもカリーネさんがいいと言ったらだな」

 トタトタと柱の陰に居るカリーネさんのところに行くエリス。


 エリス、あなたも気づいていたのね。


 そしてエリスが話しかけると、カリーネさんが俺のところに来た。

「行っていいの?」

「別にいいけど……一応貴族の家だから安全だと思うし」

「あなた貴族なの?」

「んー正確に言えば養子になる予定。

 マットソン子爵って聞いたことある?」

「戦場を駆ける鬼。

 鬼神じゃない。

 王都で知らないものなどいないわ」


 俺は知らなかった。


「その鬼神の屋敷が俺の家」

「でも、鬼神は体を病んでいて、王都には来ていないって……」

「誰が言ったのかは知らないが、居るよ。

 それは別にして、俺んちに来る分には問題は無い」

 エリスがカリーネをじっと見上げる。

「わかったわ、エリス、許します」

「やた!」

 飛び跳ねて喜ぶエリス。

「しかし、私も一緒に行きます。

 クラウス・マットソン子爵に会って確認したら帰ります」

「わかったよ」

 結局、俺とエリス、カリーネさん三人で家に帰ることになった。



「あら、マサヨシ、お帰り」

 再びクリス登場。

「あっ、敵」

 アイナ自分の胸を見て、カリーネさんを敵視。

「おう、美女だな」

 リードラ余裕。

「リードラ、帰ってたのか?」

「脱皮も終わってお肌つるつるだ」

 リードラは頬を擦ってアピールしていた。


「すっ凄い人ばかりね、所作だけで強さがわかる」

 カリーネさんは汗をかいていた。

「クリス、義父さんは?」

「メルヌの街に居ると思うわよ」

 俺は玄関を入ると、扉の前に行き、扉を開けてメルヌ側に入る。

 一気にのどかな風景が窓の外に広がったのを感じカリーネさんとエリスは驚いていた。

 執務室をノックして義父さんの「入れ」の声がしたので、中に入る。

 義父さんはクッションの良さそうな車いすに座って書類にサインをしていた。


「どうした、マサヨシ。

 また誰か家に住むのか?

 まさかその幼子を妻にするつもりでは?」

 エリスを見て真剣な顔をして俺に言った、

「いやいや、さすがにそれは……」

「それでは、その女性か?」

「それも違います。

 義父さんの早とちりです。

 この方は冒険者ギルドのグランドマスターであるカリーネさん。

 そしてその娘のエリス」

 カリーネが頭を下げると、それに習ってエリスがぺこりと頭を下げる

「そう言えば、昔、そんな名の活きのいい冒険者がおると聞いたことがあったな。

 で、そのグランドマスターが儂に何の用だ?」

「エリスがオウルの屋敷に遊びに来たいというので、私が許可を出したのですが……要は私では信用されなかったようです」

「仕方ないのう。

 なんせ知名度が低いからな。

 養子縁組も終わってないしのう」

 苦笑いの義父さん。

「カリーネさんと言ったな。

 マサヨシは間違いなく我が養子にする予定の者だ。

 だから安心するといい。

 このクラウス・マットソン子爵が保証する」

 義父さんは真剣な顔でそう言った。

 恐縮した顔で、

「疑ってすみません」

 とカリーネさんが謝まった。

「気にするでない、名を売ろうとしないマサヨシも悪いのだからな?」

 と、言って義父さんは笑う。

 そして、

「エリス嬢ちゃん。

 オウルの屋敷の庭で思う存分遊ぶといい。

 別にメルヌ側でもいいぞ」

「ありがとう、おじいちゃん」

 エリスがそう言うと、義父さんは優しい顔で笑った。


 執務室を出て廊下を歩いていると、

「マサヨシ、オウル側とかメルヌ側とかどういうこと?」

 とカリーネさんが聞いてきた。

「さっき、変な扉があったでしょ?

 あの扉を超えるとオウル、こちら側がメルヌ。

 つまり転移の扉だね」

「えっ、そんなものあるはずが……」

「でも作っちゃったからなぁ。

 あっ、このことは内緒で」

 口の前に人差し指を置く俺。

「さ、エリス何して遊ぶ?

 馬に乗ってみるか?」

 唖然とするカリーネをよそに、俺はエリスを肩車していた、。

 そんなことをしながらふと気づく。


 あっ、忘れてた。

 エリスとカリーネを送る時にオークキングの素材を貰わないとな……。


読んでいただきありがとうございます。

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