第3話 自分はただのメタボだと思ったのですが、バケモノ扱いされました。
読んでいただきありがとうございます。
「あなたバケモノ?」
クリスが急に言った
訳が分からん。
本当にわからんから、聞かれてもな……。
「すまんが何もわからん、だってこの世界に来て一時間経ってないんだぞ?」
「この世界?」
クリスは首を傾げた。
「ああ、信用してもらうしかないが俺この世界の住人じゃない。
向こうの世界で事故にあって飛ばされてきたんだ。
ほらこんな服見たことある?」
俺のスーツ襟を持ちアピールをする。
「確かに珍しい服だとは思ったけど……魔法使いってそんなもんかなって……」
クリスに「そんなもん」で片づけられた。
「正直、全然この世界のことを知らないんだ。
色々教えてくれるとありがたい」
一般常識も何も知らない。
「わかった、私がフォローしてあげる。
恩返しもしたいしね。
でもこの格好じゃちょっと……」
確かにクリスの服装は奴隷用の汚れた貫頭衣一着である。
ちょっと動くと見てはならないものが見えそうになるのだ。
「確かにこれじゃ襲ってくれってもんだね」
「何で襲わないの?」
「そのつもりが無い。
嫁さんに悪い。
それにクリスが綺麗すぎて触れないからかな?」
「え? 結婚してるの?」
意外だったのか驚く。
俺が結婚してるって、そんなに驚くこと?
メタボは結婚しちゃダメなのか?
「正確には結婚してた」
と、言いなおすと、
「ごめん」
察したのかクリスはシュンとした。
「別に気にしなくてもいいよ。
はい、これでも羽織ってて」
俺は上着を脱ぎクリスに渡す。
馬車の荷台にはいくらかの荷物があった。
漁ってみると……女性用の白いレザーアーマー、装飾されたレイピア、あとは袋の中に服と下着。
馬車には奴隷商人とクリスしか居なかったはず……で、女性の持ち物と言えば誰の物?
「これって、クリスの?」
パンツらしきものを広げて聞いてみた。
「バカっ!!」
クリスは、服の入った袋と下着を強引に俺からむしり取ると、馬車の陰に隠れる。
しばらくゴソゴソして馬車の陰から現れると、そこには冒険者クリスが現れた。
「これが本当の私」
羽織っていた背広を返してくれる。
リアル冒険者、初めて見た。
この世界に来て思うが、小説や漫画でしか見れなかったものが現実なのだ。
改めて異世界に来たことを実感した。
「それ、すっごく似合ってる」
正直な感想だ。
褒められ慣れていないのか、顔が真っ赤になるクリス。
なぜか顎に手を当てクリスが考えている。
「やっぱり、あなた強い?」
クリスは気になるのかもう一度聞いてきた。
「うーん、何度聞かれてもわからない。どうかした?」
「マサヨシ、魔物や人と隷属の契約する場合、契約される者、契約する者のどちらか強い方に能力が引き上げられるの。
前の奴隷商人との契約の時、私は強くならなかった。
けど、所有者があなたになった瞬間、凄い力が湧いてきたの。
ちょっとステータス見てみるわね」
と口を開けてクリスは何か声を出そうとしたが、
「ステータス?」
俺の質問で遮ってしまったようだ。
「ああ、冒険者ギルドのカードにはその冒険者の能力を簡易に表示できる機能があるの。数値じゃなくてランクだけどね。ちょっと失礼、ステータスオープン!」
ん?……クリスが焦っている?
「力が、AからSSに上がってる、えっ他も軒並み二段階上昇?」
クリスの説明では、ステータス画面にはHP・MP・STR・INT・AGI・DEX・VIT・が表示される。HPはその人の生命力、MPは魔力、STRは物理攻撃力、INTは魔法攻撃力と魔法防御力、あと知識も、AGIは素早さ、DEXは器用さ、VITは物理防御力を表す。
STR・INT・AGI・VITのランクはF~EXまであり、F→E→D→C→B→A→S→SS→SSS→EXと強くなる。
Eランクは一般人程度、Aランクが一万人に一人、Sランクが十万人に一人、それ以降は十倍毎に一人程度という事だ。
「クリス、レアな人になったのか……良かったね」
と言うと、
「いやいや、おかしい!
普通、二段階強化なんてあり得ないから。
本当にあなた、どんなステータスしてるの?」
クリスは興味津々で俺を見てきた。
「だから、そう言われてもなぁ……。冒険者ギルドカードなんて持ってないし……」
ボソボソと俺が言うと、
「街に行ったら、冒険者ギルドで登録すること!」
と、ビシッと指を指されてクリスに言われる。
こうして、街に行ったら冒険者ギルド行き確定になるのだった。