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第2話 魔物を片付けると、奴隷を手に入れました。

再びの投稿、呼んでただきありがとうございます。

 エルフの女性が落ち着いたようなので、再び声をかけてみた。

 ただ、どう声をかければいいかわからない。

 仕方ないので、

「んー、俺はマサヨシ」

 と、声をかけてみた。


「僕、ドラえも〇」じゃあるまいし、もっといい言葉は無かったのか!


 自省する俺。

 しかし、

「私はクリス、あなた何者? 魔法使い? 僧侶?」

 エルフは俺を見るとそう答えた。


 でも、俺が何者か測りかねているのか質問が多いな。


「さっきの治癒魔法、何となく呪文とか唱えなくても使えただけで、『魔法使いか?』、『僧侶か?』って言われても俺自身もわからないんだ」


 実際、魔法など数分前から使い始めたのだ、詳細など答えられるはずもないだろ!


「そうなの。

 あっ、お礼がまだだったわね、本当に助けてもらってありがとう」

 エルフが頭を下げる。

「いえいえ、どういたしまして。

 たまたま、現れた場所で君が襲われていただけだからね」

 俺がそう言うと、

「でも、本当にもうダメかと思った」

 クリスさんが澄んだ緑色の目で俺を見ながら言った。



 さて、情報収集だ。


「ところで、あの魔物何?

 何で襲われたんだ?」

「私はこの先の奴隷市で目玉商品として展示された後、豪商に収められる予定だった。

 理由はわからないんだけど、そこの彼はドロアーテに行くまでの時間を間違えたらしいの。

 遅れると罰則があるみたいで『近道を使って間に合わせる』ってこの道を使ったみたい。

 で、この辺を根城にしていた魔物、つまりゴブリンに見つかってあのザマよ」

 クリスさんは、魔物(ゴブリン)に襲われ内臓がはみ出て死んでいる彼を、憎らし気に睨みながら言った。


 うわぁ、あのザマにはなりたくないねぇ。


「助けてもらってなんだけど、私はそこの彼から離れてしまうと体が痺れて動けなくなる制約を付けられている。

 だから、ここから動けない。

 死体を一緒に動かすというなら別なんだろうけど……」

 ちらっと馬を見てみたが、既に死んでいた。


 俺の力じゃクリスさんとあのザマな彼を馬車で引っ張るなんて無理だろうしなあ。


 クリスさんは悔しそうな顔をして諦めの色を浮かべる。

「どうにかする方法は無い?

 できるならクリスさんを解放したいんだが?」

「私を助ける?」

 クリスさんはキョトンとした。

「できればだけど……」

 自信のない俺は声が尻すぼみに小さくなる。


「ふぅ」っとため息をつくとクリスさんは話し始めた。

「私は奴隷から解放されることは無いの。

 それは、この隷属の紋章を一度つけると一生外すことができないと言われているから……」

 クリスさんは続ける。

「私は魔法書士によってそこの彼の奴隷になるように隷属の紋章をつけられた。

 つまり、契約上そこに転がっている彼の持ち物なの。

 そして私は今も奴隷の制約で縛られている。

 ただね……もしできるならば……隷属の紋章を強引に上書きして所有者を変え、そのうえで制約をなくせば、私は自由に動ける。

 でも、できもしない事……」

 俺とは違い絶望から小さな声になるクリスさん。

「なんでだ?」

「元々魔力が高い魔法書士が書いた紋章を強引に上書きするには、この紋章を書いた魔法書士よりも更に数段大きな魔力が必要となるの。

 そんな魔力を持つ者を……人間よりも魔力があると言われているエルフの魔力を超える者を聞いたことが無い」

「もし俺が上書きできれば俺の奴隷になるのか?」

 期待とともに聞いてみた。

「そう、私はあなたの奴隷になる。」


 エルフの奴隷、ちょっとあこがれる。

 邪な考え方なんだろうなぁ。


 しかし、クリスさんは悔しいのか、手を固く握り涙を浮かべていた。

「その紋章を壊せるぐらいの大きな魔力を流せばいいんだね。

 一度、紋章見せてもらっていい?」

 クリスさんは貫頭衣(と言っていた)をめくり左肩を出す。

 五百円玉ぐらいの大きさの黒い紋章があった。

「俺、紋章の上書きに挑戦してみたいんだがいいかな?」

 と聞いてみた。


 こちらの世界に来てから、何か体が軽い。

 何かが変わってる。

「もしも魔力があるなら、俺はどのくらい魔力があるのだろう?」と思ってしまう。

 それにエルフの奴隷だ。

 性欲抜きにしてやってみない手は無い。


「まっ、無理だとおもうけど。

 でも、どうせこのままだと動けないまま死んでしまうだけだし……。

 やってみるだけやってみてよ」

 クリスさんは諦めたようなやる気のない声を出した。

「君みたいな子が俺の奴隷か……だったら頑張らないとね」

 魔力には関係ないとは思うが、軽く屈伸や伸びで体をほぐした。

「では……」

 クリスさんの紋章に手を当て、少しずつ魔力を流す。

 と言うか俺が「魔力」と思っている物を流し込む。


 あれ?

 黒かった紋章の色が一部赤く変わる。

 あっ見る間に真っ赤になった……。


「紋章の色変わっちゃったけど上書きってこれでいいのか?」

 俺は覗き込むようにクリスさんを見たが、クリスさんが口を開け固まっていた。

 数瞬の後クリスさんが復旧し、

「えっ、あっ、そっそうね、これであなたの物に変わったはず」

 と、驚きを隠せない。

「頑張ったつもりは無いんだけど……できたようだ。

 でも、意外と簡単だったよ。

 それじゃクリスさん、俺の奴隷でお願いします」

 そう言って、俺が頭を下げると。

「ええ、よろしく」

 クリスさんは釈然としない様子で返事を返した。



「私はあなたの奴隷になったんだけど、何をすればいい?

 助けてもらった恩もあるし、あなたにだったら何でもするわよ?」

 クリスさんが俺に聞く。

「んー、戦ってもらったり、欲の世話してもらったり、そんなんして欲しいわけじゃないから……。

 さしあたっては、奴隷っぽくしなくていい」


 俺が奴隷なんて扱えるはずはない!

「エルフの奴隷っていいな」って思っただけで、その先はノープランだったのだ。


「それはどういうこと?」

 理解できないクリスさんが俺に聞いてきた。

「つまり、隷属の紋章があるからって奴隷にならないでください。

 奴隷になる前のクリスさんで居てください」

 と、頭を下げた。


「『奴隷になるな』って初めて聞いたわ!

 わかった、あなたの奴隷にならない。

 いつもの自分で居ることを心掛けるわ。ご主人様なんて呼ばないわよ? 

 マサヨシって呼んでいい? 

 で、あなたはクリスって呼んで!」

 クリスが初めて笑った。


 エルフって笑うと、もっと綺麗になるんだ……。


 そう思った。


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