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最終話 そして旅に出る。

 百年経った。

 俺の周りにアレックスを筆頭とした家族が居た。

 孫のケインも黒髪のクォーターエルフ。

 似たのは髪型だけか……。


 まあ、アレックスの本妻のカルロッテはマティアス王の子だ。

 その妻も老いて先に逝っていた。

 そういや、あいつの側室には魔族の現王ゲオルグの娘バーバラにエルフのエドガーの娘ダニエラも居たな。

 まあ、それぞれ個性的な孫がいる。

 それはそれでいいと思うぞ。


 さて、俺は人としては十分に生きたのではないだろうか。

 魔力が多い者は長生きをすると言われている。

 その通りだった。

 人間が百二十歳なんて、前の世界でも滅多に聞かない。

 それも家族に見守られているんだ文句もない。


 アイナとフィナ、ラウラにカリーネは既にこの世の者ではない。

 若いままのクリスとリードラにマール、イングリッド、少し歳をとったクラーラ。

 皆が俺を見て泣いていた。


 泣くな。

 俺は十分生きた。

 まあ、寿命だから仕方ないだろ?


 しかし……死ぬんだな……。


 そんな事を考えていると、周りが暗くなった。

 するといつか味わったことのあるウォータースライダーの中を滑るような感覚。

 再び目の前が明るくなる。


 目を覚ますと培養槽のようなものの中に入れられていた。

 その向こうには見たことのある机。

 リッチが使っていたもの。

 ダンジョンマスターの部屋か……。

(ぬし)よ起きたか?」

 覗き込むリードラ。


 少しやつれたのかね?

 でも、美人さんのままだ。


 その肩にはリーフとコンゴウ。

 キョロキョロと体を見ると若いままだった。

 不思議そうにリードラを見ると、

(われ)はミハルの娘だぞ。

 一人では寂しい

 呪いを使って魂を呼び寄せたのだ」

 胸を張ってリードラが言う。


 リードラ、お前もか!

 ミハルの真似をしやがって。


「俺が死んでから何年だ?」

「八百年」

 リードラが言う。

「どうやって?」

 すると、リーフが舞い降りてきて、

「マスターの知識の中にあったクローン技術というものを使わせていただきました。

 ドラゴンの遺伝子を加えて体を作ってあります。

 ですからリードラ様の寿命程度は生きるでしょう」

 そしてコンゴウが、

「その体にリードラ様の呪いの力で魂を移し替えました。

 ですから、能力、記憶共にマサヨシ様のままです」

 ニヤリと笑いながら言った。


 ダンジョンコアが揃ってマッドサイエンティストって訳ね。


 そして俺に縋りつきリードラが泣く。

「寂しいのは嫌だ。

 皆死んでしもうた。

 クリスとマールはエルフだったが、ドラゴンの寿命に比べれば短い。

 私は一人になった。

 一人は嫌だ」

 リードラは涙を流していた。

 そして、 

「二人で生活がしたい。

 子ができればもっといい」

 そう言ってリードラが縋りつく。


 そう言えば、リードラには子ができなかった。

 ドラゴンの周期から言えば、俺の寿命はあまりに短かったのだろう。


「種族の差って奴で、これだけはどうもできなかったんだ。

 すまなかったな」

(ぬし)が戻ってきたのだ、(われ)はそれでいい」

 リードラが落ち着くと、

「あれを見ろ。

 (われ)がダンジョンに籠る時に貰ったものだ」

 机の上にあるものを指差した。


 ホーリードラゴンのローブ。

 シルクワームのスーツ

 そしてオリハルコンの剣に収納カバン。

 俺の基本装備。


 培養槽から出ると、その装備を身にまとった。

(われ)もこのダンジョンでの生活に飽きてきたのでな。

 (ぬし)と旅をしたい」

 そう言ったあと、

 そして、毎日可愛がって欲しい」

 リードラは顔を赤くして言う。。

「わかった。

 さて、旅をするとして、まずはどこに行きたい?」

「そうじゃな。

 まずは……」


 俺とリードラは旅に出た。

 あえて歩く。

 最初に目指した場所はメルヌの街。

 そこには黄金色に輝く小麦畑が地平線まで広がっていた。

 街の中央に向かって歩いていると、巨大になったフォレストカウのボスが俺の前に来て頭を下げる。

 そしてコカトリスについても同様だった。

 領民が

「守護神様たちがあの人たちに……」

 と驚いている。


 お前らまだ生きていたんだな。


 続いてリエクサに行くとケルのために置いておいた森は残っており、その周りにも麦畑が広がっていた。

 ケルは……まだ生きているようだ。


 魔力量のせいかね……。

 それでもケルよ、少し老いたな。


 喉を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らすケル。

 その周りにわんこ部隊が集まり俺に頭を下げる。


 あり得ない光景だったのだろう。

 女騎士が目の前に現れた。

 黒髪にクリスに似た顔。

 神馬に乗っている。


 アインかね?


「その魔物たちと知り合いですか?」

 女騎士が聞いてきた。

「いいや?

 さっきで会ったら意気投合してね」

 苦笑いをしながら俺は女騎士に答えた。

「このケルベロスは私の高祖父が仲間にした魔物で、私の領土をよく守ってくれます」


 現マットソン家の主人らしい。


「この子たちは私にしか懐いていなかった。。

 でも、この子たちが私以外に懐くなんて珍しい」

「たまたまだと思うよ

 そう、たまたま」

 俺は誤魔化す。

「そうですか。

 白いローブに黒いスーツは高祖父の姿に似ていますね」


 俺の基本の服装だからなぁ。


「君の高祖父がどんな人だったかは知らないが、どんな人物だったんだ?」

 我が子孫に聞いてみた。

「そうですね、優しいバケモノだったと……。

 奴隷だった高祖母を助け妻にしたとか、他種族の妻を持ったとか、様々な魔物を討伐し、従えたとか……そうそう、神龍を妻にしたとか、色々聞いています。

 ドラゴンより強い人間ってどうなんでしょうね。

 あり得ないですよね。

 でも本当だったそうです」

 それを聞いたリードラがクスクスと笑う。

 俺も、

「そりゃ確かにそれはバケモノだ」

 と笑った。

「領土を管理する君から見てここはどうだ?」

 女騎士に聞いてみた。

「自分で言ってなんですが、いい場所です。

 何といっても子供たちが笑って暮らしていますから。

 親が亡くなり孤児になったとしても、高祖父の開発のお陰で食うに困らず、自治領としての援助で生活ができます」


 そうか、自治領になったのか。

 国みたいになったんだな


「それにしても、あなたたちはなぜここに?

 ここは領民たちも怖くて近寄らない。

 だからここの麦はこの自治領の騎士団が刈るのです」

 女騎士は不思議そうに俺に聞いてきた。

「久々に妻と旅に出たので、途中で懐かしい場所に立ち寄っただけ……」

 俺が言うと、

「そうだのう。

 久々の旅。

 メルヌからオウルに旅して以来の二人っきりだ。

 夫婦水入らずはなかなかできなかったのでな。

 (ぬし)と共に旅を楽しんでおる」

 リードラが腕に抱き付いた。

「仲がいいのですね」

「ああ、俺の自慢の妻だ。

 それじゃ、二人旅の途中なんで失礼するよ」

 そう言って俺たち二人はその場を離れると、女騎士は俺とリードラを見送った。


 このあと俺とリードラはこの世界を死ぬまで旅した。

 ただ歩いて世界を見て回った。

 そして、いろんな街で気に入らないことに怒り余計なことをして揉めた。

 そのお陰でいろいろな二つ名がついたが、それもまた良しだろう。


 そして、どのくらい月日が経ったのかは覚えていないが、リードラは力尽きるように死んだ。

 まあ、そのあと数十年ほどで俺も力尽きた。


 目の前が真っ暗になる。

 今度はウォータースライダーに乗らなくて良かったようだ。。

「人生に一片の悔いなし」とはいかないが、なかなかのバケモノ人生だったと思う。


 ……完


読んでいただきありがとうございました。

少し急いだ感がありますが、ここが私の限界かと……。

無理やりまとめた感があるのはお許しください。


あとは、マサヨシやマサヨシの妻、マサヨシの子などののサブストーリーを書いていければと思います。

更新は毎日とはいきませんが、もう少しゆっくりと……。

更新の際には見ていただけると嬉しいです。

初期の作品から読んでいただいた方も居ると思います。

本当にありがとうございました。


※「トンネル抜けると……転生していました」を新連載しておりますので、気が向いたら読んでいただけると幸いです

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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとうございました。
[良い点] 完結お疲れ様でしたm(*_ _)m 毎回楽しみに読ませて貰いました、まだまだ続きが読めると思っていただけに、いきなりの完結でビックリです! その後のサブストーリーとかの展開がある様なので、…
[一言] 完結お疲れ様でした。 ミハルさんの娘だものそりゃ呪い試しますよね。 ラスト駆け足気味でしたがすっきりまとまってて 飽きずに読めて個人的には面白かったです。 番外編?閑話?楽しみにしてます。
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