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第171話 ストルマン到着。

そのまま投稿してしまいました。

まあ、時間も時間なので、このままで……。

 ヘルミーナの街を出た次の日、騎士の件もあったが、俺は冒険者ギルド証を出し、堂々とストルマンの中に入った。

 まだ、騎士たちの報告がストルマンへは届いていないようだ。

 一応、これで目的達成。

 プラプラと街の中を歩くと、オウルの屋敷に戻る。


「ただいま」

「あら、早かったのね。

 もうストルマンへ?」

 アレックスを抱いたクリスが現れる。

 アレックスを撫でるがなぜかいつも機嫌が悪い。

 俺はクリスのほうを見て、

「さっきストルマンに着いてね。

 そのまま帰ってきた。

 これで、簡単にストルマンに行けるんだが……」

「どうやってお父様に会えばいいかってこと?」

「そういうことになるな」

「まっ、その辺は問題ないわ。

 近々、行くからってテロフに連絡させたから。

 私ってできる女でしょ?」

 授乳中で大きくなった胸を張るクリス。

「ちゃんとしてたら、こんな面倒臭いことしなくていいような気もするが……」

 俺が苦笑いしていると、

「ちゃんとしてなかったから、私に出会えたんでしょ?」

「はいはい。

 その通りで。

 じゃあ、明日にでも王宮に行くかね。

 先触れとかは?」

「実家に帰るのに先触れなんて要らないでしょう?」


 そういうことで、次の日にはストルマンの王城に向かうことになった。

 クリスもガントさんに頼み、アレックス用の服を作った様だ。

 俺とお揃いの黒のスーツ。


 半年も経てばサイズは合わなくなるが、それはそれでいいかな。


 ストルマンの街に入る。

 クリスは冒険者設定。

 冒険者は種族差をあまり気にしないということだ。

 そういう気質もクリスには合っていたのかもしれない。


 エルフとハーフエルフの子を連れた男。

 更には四頭の狼の精霊を連れている。

 見る人が見れば俺の周りに精霊が舞っているのに気付くのか、腰を抜かすものも居た。

「懐かしいわね。

 変わっていない」

 そう言って街を眺めるクリス。

「何年ぶり?」

 俺が聞くと、

「二十年くらいかしら。」


 長寿種のエルフ。

 二十年と言うのは長いのか短いのか……。


 そんな事を考えていると、

「おい、お前。

 先日、精霊騎士から精霊を奪った男だろ!

 白いローブに黒い服、間違いない。」

 槍を持った兵士と共に一人の騎士が俺の前に現れた。

「あら、コニーじゃない

 元気にしてた?」

 クリスがその騎士に声をかける。

「なっ、なぜ、こんな所にクリスティーナ様が!」

「何故も何も無いわよ。

 この人、私の婚約者だから。

 マサヨシ・マットソンって言って、オースプリング王国の伯爵様。

 子供もできたから、お父様に報告に行こうかと」

「しかし、その男は精霊騎士から精霊を奪ったと届け出が」

 クリスが悪い顔。

「聞いたわよぉ?

 知らないとはいえオースプリング王国の伯爵に『人が精霊を扱うのは許せん!』って言ったらしいじゃない。

 下手に出てたら近寄って体を揺する始末。

 挙句に『精霊をよこせ』って言ったんだって?

 マサヨシは気が長いの。

 特に自分に関する時はね。

 そのマサヨシが手を出すってことは相当嫌味を言ったりしたんじゃない?」

 ほぼほぼ事情を知っているクリスはコニーと言う騎士を見て言った。

 さすが王女の貫禄。

 騎士が言い返せない。

「あなた、身内をかばうのはいいけど、

 ちゃんと調べているんでしょうね?」

「それは……」

「まあ、そういうことなんで、マサヨシを捕らえたければ、もっと調べなさい。

 あっ、コニー。

 お父様に私が帰ったと伝えておいて。

 今から歩いて行くから」

「いえ、馬車の準備を……」

「馬車要る?

 じゃあ、マサヨシ、馬車を準備して再び城に行きましょうか」

【マサヨシ、扉を出して。

 こういうのは脅かしておいたほうがいいの】


 あら、念話が使えたのね。


 俺は扉を出し、一度オウルの屋敷に戻るのだった。



「馬車を出すのか?」

 俺が聞くと、

「あなた、貴族は見栄え重視なのは知っているでしょ?」

 度肝を抜けばいいの」

 とクリスは言った。

「リードラは?」

 リードラを探すクリス。

「呼んだか?」

 暇そうなリードラが現れた。

「イングリッドの時みたいに、ストルマンの王城に降りてきて欲しいのよ。

 できる?」

「その程度は簡単だがの」

「じゃあ、お願い」

「マサヨシ、ケルを呼んできて!

 わんこ部隊も一部隊。

 急いで!」

「あっ、ああ」

 俺は、ケルとわんこ部隊を呼び寄せた

「護衛は……あなただけでいいわ。

 アインに乗ってきてもらえれば。

 マールは一緒に馬車に乗って。

 サイノスさん、御者をお願いします」

 クリスが仕切り指示を出す。

 すると、早々に馬車の一団ができるのだった。


 仕込みのためにリードラは郊外にて待機。

 俺はデカい扉で馬車の一団をストルマンの郊外に出し、マットソン家の印を出して、街に入るのだった。

 話が通じていたのか、コニーが迎えに来る。

 魔物に囲まれた異様な馬車の一団を見て、コニーが引いていた。


 一応ケルベロスって国家討伐対象じゃなかったっけ?


「マットソン伯爵。

 そのケルベロスは従魔で?」

 コニーは俺に聞いてくる。

「ああ、俺の従魔。

 住民に手を出したりはしないから」

「あっ、コニーご苦労さん。

 じゃあ、お父様のところにお願いね」

 アレックスを抱いたクリスがコニーに手を振っていた。


 しかし、コニーって何者なんだろ。


 王城の門にたどり着くと、ケルに睨まれた門番が引く……いや引きまくる。


 まあ、こいつ等全部が暴れだしたら、ストルマン壊滅ってのもあり得るからねぇ。

 停車場に着くと俺はアインから降り、クリスを迎えに馬車へ向かう。

 マールが手を取り、クリスが降りてくるところだった。


 そこにリードラが舞い降りてくる。

「リードラ、風が強い」

 クリスはリードラが巻き起こす風に背を向け、アレックスを風から守っていた。

「仕方ないではないか!

 体が大きいのだ。

 止まるにも力が要る」

「仕方ないわね」

 ドラゴンと普通に会話をするクリス。

 そんなクリスとリードラを見てコニー及び王城内の兵士たちは唖然としていた。


「王に会ってくるから、少し待っててもらえる」

「心得た」

 リードラは停車場一杯に横になる。

「さて、コニー、謁見の間に行けばいいの?」

 クリスがニコリと笑う。


 クリスの笑顔が悪い感じなのは周囲が思い通りのリアクションをするからなのかもしれない。


「はい、既に王はお待ちです」

 クリスはズンズンと城内を歩く。

 当たり前のように歩き、大きな扉の前に立った。

 騎士がその扉を開けると、ズイとクリスが中に入る。


 俺はついて行くだけです……。



 そこに居るイケメンはメイナード・オーベリソン。

 クリスの父親だ。

 向こうの世界の俺なんかより若く見えるエルフが座っていた。

 何なら、今の俺と同じくらいの若さに見える。

 あれでアレックスの爺さんなんだからなぁ……。

 エルフって歳取らないのね。


 何故か王しか謁見の間には居ない。


「お父様。

 ただいま帰りました」

 クリスがメイナード王に声をかけた。

「よく帰ってきた。

 とはいえこの二十年、いろいろあったようだな」

「そうね、二十年と言うか、この二年ぐらいかしら。

 奴隷に落とされて、マサヨシに会って、アレックスが産まれて……。

 その辺のことはテロフあたりから聞いているんでしょ?」

「ああ、報告は受けている。

 そこに居るのが、マットソン伯爵か?」

「ええ……私の夫になる男」

 メイナード王は俺を見ると、

「クリスティーナを救ってくれたそうだな。

 礼を言う」

 メイナード王が頭を下げた。


 王が頭を下げる。

 あまりあってはならないこと。

 そのための人払いかね?

 まあ、護衛は数人いるようだが……。


「頭をお上げください。

 たまたまです。

 そこに居ただけ。

 私こそ、流れとはいえ、クリスティーナに手を出し、子まで為してしまいました」

 俺はメイナード王に頭を下げた。

 メイナード王は身を乗り出し、

「良い良い。

 生来この娘、我らでは御することができないほどのお転婆でな。

 そのお転婆を御せる者など、この国にはおらんかったのだ。

 そのせいで冒険者などになり、結果奴隷にまで落とされた。

 ゴブリンに襲われた時、お主に会えなければクリスティナは死んでおったのだ。

 自業自得だよ」

 と言って苦笑いをする。


 まあ、確かにクリスを扱いきれていれば、今頃有力者の婚約者か妻になっているのだろうな。


「そこに居る赤子が私の孫か?」

「そうよ、マサヨシと私の子。

 アレックス。

 私にとってエルフの純血なんてどうでもいい。

 王家が忌み嫌うハーフエルフ」

「手痛いな。

 しかし、エルフ同士で夫婦になる方が強い魔力を得ることができる。

 そうして、この国の精霊魔法の能力を維持してきたのだ」

 アレックスが

「だう、あー、あー」

 とクリスの腕から身を乗り出すように両手を出すと、四頭の精霊の狼が現れた。

 そして、アレックスに近づくと、アレックスの頬を舐める。

 すると、

「キャッキャ」

 と笑い始めた。

「凄いな。

 既にその辺のエルフなど相手にならないほどの魔力を持っている。

 まあ、それほどまでに精霊を纏わせるのは、クリスティナとマットソン伯爵の子だからな?

 これを見れば確かにエルフの純血などと言うのが馬鹿らしくなるか……」

「そうねぇ、馬鹿らしいわね。

 でも、魔力だけじゃないのよ?」

 スッとマナが現れた。

 それを見て、

「人型の精霊……」

 とメイナード王は目を向いて驚く。

「あなた達エルフって、私たち精霊をいつからか装飾品のように扱うように……つまり物のように扱う。

 実際、そこに居る狼になった精霊たちも、精霊騎士に物のように扱われていた。

 でもね、マサヨシとクリスは物として扱わない。

 私を一個の女性として、そこに居る精霊たちは仲間の魔物として大切に扱う。

 私たち精霊がしたことに感謝してくれる。

 それだから、私を含めた精霊たちも頑張るの」

 そうマナが言った。

「マナ、言いたい事を言ったのなら中で待っててくれ」

「だって、あの子たちの扱い見てたら、ちょっと言いたくなってね。

 それじゃ」

 スッとマナは俺の中に戻っていった。

「精霊騎士の精霊が奪われたと聞いたが、お前だったのか?」

「はい、私です。

 しかし、忍びとはいえ、他国の伯爵に暴言を吐きました。

 そのうえ、精霊を奪いとろうとしました。

 精霊たちも嫌々従っていたので、契約を破棄したわけです。」

 俺はあえてニコリと笑って言った。

 気付いたのかメイナード王の顔が歪む。

「我が精霊騎士たちも自業自得か……。

 相手の力量を見切れぬとは……。

 かくいう儂も人型の精霊が居るとは気づかなかったが……」


「だうー!」

 大人の話に飽きたのか、機嫌が悪くなるアレックス。

 精霊の狼たちも困った顔だ。

「あらあら、アレックスが怒ってるわ。

 気難しい話はアレックスには要らないみたいね。

 さて、お父様、アレックスを抱く気はあるの?」

 そんな事をクリスが言ったとき、

「いつまで待たすの!

 可愛いアレックスちゃんを抱かせなさい!」

 クリスそっくりの女性が現れるのだった!


読んでいただきありがとうございます。

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