第167話 鉱山と街の報告。
俺と義父さんは馬車でオウルの王城に向かっていた。
理由としては財務省へ行くためだ。
その名の通り財務担当の省である。
その仕事の一つに、街や鉱山の管理があった。
確かに金にはなる。
義父さんに付いて、その部署まで向かうと、
「デニス、久しぶりだな」
と義父さんは声をかけた。
義父さんほどの年齢の男が振り向き、。
「おお、久しぶりだな。
あれか、ドラゴンを御している男と言うのは?」
「ああ、俺の息子マサヨシだ」
「いろいろ噂を聞いている。
陞爵もして、順調のようだ。
いい養子を貰ったようだな」
と、笑いながらデニスさんは言う。
義父さんは、
「儂も運が良かった。
ああ、儂に子も孫もできたぞ?」
苦笑いしながらデニスさんに話した。
「本当か!
その歳で子供とは……頑張ったんだな。
相手は?」
「プリシラ・グスマン」
「あのお転婆がか?
まあ、仲が良さそうでいいじゃないか」
デニスさんは義母さんを知っているようだ。
俺が二人の会話を聞いていると、
「おおすまん。
久しぶりで仕事を忘れた、
何の用事だ?」
デニスさんは義父さんに聞いた。
「鉱山と新しい街の登録をしに来た。
新しい街には登録が必要だろ?
名前が重複しないためだったな。
場所は……地図はあるか?」
デニスさんが出した地図に父さんがイーンの場所を指差す。
そこは元ポルテ伯爵領の森深い場所。
「ここが、マットソン伯爵領の新しい街、イーンだ。
こことここ、こことここを結ぶ街道も作ってある。
知っての通り、マサヨシはレーヴェンヒェルム王国でも伯爵で、こことここは繋がっている。
現在の我が領土はこんな感じだな」
義父さんは地図で説明していた。
「そう言えばポルテ伯爵領を加増されたんだったな」
「ああ、その森の中の岩の下から鉱脈が見つかった。
鉱山の開発をしたその場所にドワーフたちが集まってな、街のようになったので我が領土の街として登録しにきた訳だ」
「新しい街か……、そりゃ豪気な話だ。
わかった、登録しておこう。
えーっと、鉱山としては何が出る?」
身を乗り出して義父さんに聞くデニスさん。
「えーっと、マサヨシ、何が出るんだった?」
「義父さん、鉄、銅、銀、金、ミスリル、白金、オリハルコンにヒヒイロカネですね」
俺が話し終わると、デニスさんが驚き固まっていた。
「どうした、デニス」
義父さんが声をかけるとデニスさんはリスタートし、
「ミスリルが出りゃ御の字のはずが、白金、オリハルコン、ヒヒイロカネだって?」
「先ほども義父さんが言いましたが、運よく岩山の下に鉱床を見つけました。
現在ドワーフたちによって鋭意採掘中です」
そう言って誤魔化した。
財務省の中に耳聡い商人も居たのだろう。
「あのぉ、その金属の販売代理店はもうお決まりで」
「こんな店よりもうちのほうが」
「いやいや……」
多くの商人が俺の前に現れたが、
「ロルフ商会に決まっていますので、申し訳ありませんが断らせていただきます」
と断りを入れた。
商人たちが噂をする。
「そう言えば、マットソン伯爵とロルフ商会はつながりが深いとか……」
「騎士団長にロルフ商会の娘が嫁いだと聞く……」
「しかし、マットソン子爵の領地が発展している」
「商機があるかもしれない」
「ほとんどの種類の貴金属が出るらしいからな」
……と。
「マサヨシよ、商人から口コミでいろいろなところへ噂が流れるだろう。
カネがあるところには何が来ると思う?」
突然義父さんが俺に聞く。
「それに群がるもの。
商人たちでしょうか?
あとは、野盗、盗賊の類でしょうか?」
「そうじゃな」
正解だったようだ。
「今後、取り締まりが必要となる。
マサヨシはそういう者たちを見つけるのはどうするのだ?」
「騎士団は当然ですが、魔物に頼みます。
ケルのわんこ部隊。
養蜂で隷属化したハニービーたち。
コカトリスたちを呼んできてもいいですね。
連携すれば結構な戦力になるのではないでしょうか?
それに、わんこ部隊もハニービーたちもコカトリスも森はテリトリーです。
そこら辺の盗賊に負けることは無いでしょう。
ハニービーたちの毒は痺れますしコカトリスは石化させますから生かして捕まえることも可能です。
我々の財産を奪おうとする輩の行く先は……」
俺が含みを持たせて言うと、義父さんが気付いたようだ。
「鉱山か?」
「そういうことです。
いい労働力になるでしょう」
「悪い考えだ」
「ええ、悪い考えです」
二人でオウルの屋敷に向かいながら笑うのだった。
読んでいただきありがとうございます。