第159話 もう一つのダンジョン。
俺の肩にはリーフが居る。
ダンジョンコアはダンジョンに居る必要はないそうだ。
念話のようなもので、ダンジョンの情報が入ってくるらしい。
まだ全然手を付けていないところがある。
メルヌの先にあるダンジョンだ。
「ちなみにダンジョンの入口って、移動できないよね?」
「えっ?
できますよ?」
リーフがさらりと言った。
「ただし、あなたがダンジョンマスターになる必要があります。
二つのダンジョンを統合し、あなたが私にしたようにコアを隷属させれば問題ないかと……。
実際、今でもゼファードのダンジョンの入口をリエクサの街の近くに移すこともできます」
「あのダンジョンの攻略かぁ……」
「どの程度のダンジョンかはわかりませんが、ドラゴンが出てくるようなところであれば、ダンジョンマスターはドラゴンかと……」
「結構な数出てたからなぁ……。
元妻並みかね?」
「ダンジョンマスターが神龍クラスのドラゴンであれば、周囲を制圧しているでしょう。
それをするぐらいの知識はあるはずです。
制圧をしない事を考えると、色付きドラゴンまでじゃないでしょうか?」
「色付きドラゴン?」
「レッド、ブルー、グリーン、ブラウン、ブラック、ホワイトなどの色が付いているドラゴンです」
「ふむ」
その辺のドラゴンは大暴走の時に居た。
「とりあえず行ってみるかね」
一度行ったことのある俺は、立ち入り禁止にしてあるダンジョンへ向かった。
中に入ると、薄暗い空間。
俺は暗視モードにして、中を歩く。
「ゴブリンが多いですね。
繁殖力が高いので、魔物のエサ代わりにします」
リーフが言う。
ダンジョンの全体像を見てみると10階しかない。
しかし、広かった。
ちょっとした領土ぐらいある。
それが十階。
「ダンジョンコア自体は成長していないみたい。
結構新しいようです。
と言っても千年単位ですが……」
この広さなら、数万の魔物が居てもおかしくは無いか……。
威圧を周囲に振りまきながら歩いていると魔物は襲ってこない。
俺とリーフはそのまま下へ向かう。
そして中間の五階に大きな広間。
レッサードラゴンが十頭ほど現れる。
「ボスですね。
でも、マスターなら瞬殺ですか……」
実際、すぐに終わった。
一応レッサードラゴンは回収。
「扉が無いのは?」
「そこまで気が回らない者がダンジョンマスターなのでしょう。
トラップや扉の事まで知識に無い。
うちのところの前のダンジョンマスター……リッチは、最初は死にたくない一心でトラップやら扉やら迷路やらを必死に作っていましたから」
んー俺はレーダーを見ながら最短距離だったし、俺が規格外だから少々のトラップじゃ意味無かったしなぁ。
メンバーも強かったし……。
申し訳ない。
「そう言えば、俺はダンジョンを放ったままだが、大丈夫かね?」
「リッチ時代のトラップがありますから問題ないかと。
もう少しえげつないトラップを作ってもいいかもしれませんが……」
「どんなの?」
「ワンフロアが溶岩で、熱に強いレッドドラゴンを数頭放っておけば、マスターぐらいでなければ戦えないかと」
うん、えげつない。
話しをしながら寄り道もせず最短コースで十階まで到達した。
そして、広間のような場所に向かう。
「ダンジョンマスターの部屋はここでいいのかね」
「間違いありませんね」
リーフが頷く。
「ラスボスは?」
「ダンジョンマスターが強い魔物の場合、ラスボス兼ダンジョンマスターと言う事も有ります。
まさに今のマスターがそうですね。
ただ、勝てる者が居ると考えられません。
長い間生きてきた私もEXsなどというステータスは初めてです。
本気で暴れれば、大陸が割れるかと……」
ちょっとした〇ラレちゃんレベルらしい。
部屋に入ると、三十メートルほどの茶色のドラゴン。
早速俺に向いて吠えた。
何となく圧力を感じるが、平然と立つ俺。
?マークを付けてドラゴンが俺の前に近づいた。
その巨体に俺は威圧をする。
するとドラゴンがひっくり返り俺ではなくリーフに向かって何かを吠えた。。
「あれ?
ダンジョンマスターが負けを認めました」
「なんで?」
「死にたくないそうです」
「ほう……。
俺のいうこと聞く?」
コクリとドラゴンは頷いた。
「リーフ、あのドラゴンはダンジョンコアに操られている系だよな」
「はい、間違いありません。
コア自体の能力も低いので、完全にあのドラゴンを掌握できていないのでしょう。
私の下に居るならば、死ぬまで戦わせますから……」
「おっ、おう……」
結構厳しい意見。
リーフはリッチが死ぬことさえ許さなかったからねぇ。
さて、ダンジョンコアを隷属させるか……。
俺はゼファードのダンジョンコアの半分ほどの大きさのコアへ近づき、契約を行った。
魔力が抜ける感じがするが、リーフの時に比べればなんてことは無い。
簡単にダンジョンコアは隷属した。
すると、コアは小さくなり、赤い色のインコになった。
「私の真似をしてますね……」
ジロリと新参者のインコを見る。
「ええ、私も生き残りたいですから。
マスターの記憶から見つけた鳥の魔獣の形になってみました」
インコが言った。
「まあ、いいや。
お前はコンゴウと名付ける」
コンゴウインコを思い出しただけだ。
こうして、俺の肩にインコとフクロウが常駐することになる。
変な帽子を被れば、海賊状態……。
「マスター、このダンジョンはどうすれば?」
「ああ、五階までの初心者用のダンジョンにしようかと思っている」
最下層以外の残り四つは、なんか使えないかと考え中。
この点はゼファードのダンジョンもそうだね」
「マスターのところで、無いものを作ればどうでしょうか?」
リーフが言った。
「無いもの?」
「我々ダンジョンコアは、魔力を使えば目的に合ったフロアを作ることができます。
常夏の海、寒い平原、条件はいろいろあるでしょうが、それこそ多様に。
岩山の下にダンジョンの入り口を作り、その行き先を一つの階層に限定するのです。
その入り口の向こうは鉱石ばかりの鉱山であれば、当たり前のように採掘ができます。
純度の高い鉄、銅、金、銀、ミスリル、白金、更にはオリハルコンやヒヒイロカネまで、それが採掘できるとなればどうなるでしょうか?
それも、再配置されると、採掘されたはずの場所に再び鉱石が出てくる。
私とコンゴウが生きている限り、マスターの領地に富をもたらすでしょう」
胸を張るリーフ。
「採掘をする者、精錬をする者、加工をする者、それを売る商人……。
確かに、多くの民が集まりそうだな」
しかし、俺は少し考える。
「精錬では加熱する必要がある。
あと、それを冷却する水も。
すると、その水は汚れ下流に流れてしまう。
鉱山を作れば煙害や鉱毒の問題が出る」
「それは……」
リーフの勢いが止まった。
利益の事を考え不利益については考えていなかったようだ。
「マスター、スライムとガストをお使いなさい。
スライムは何でも食べます。
鉱物だろうが毒だろうが何だろうが。
大きなため池を作り、そこにスライムを放つのです。
そして、スライムは魔力の塊であるコアに、魔力として溜め込みます。
そして、スライムを倒せば、ただの魔石になるのです。
そして残るのは綺麗な水。
ちなみにガストは空気中に浮遊するものを食べます。
主に魔力ですが、チリや埃、それ以外の大気中の成分も食べます。
そして、魔石に溜め込む。
あとは、スライムと同じです。
スライムとガストであれば、リーフ様と私が居ればいくらでも呼び出すことができます」
「公害がないのであれば、それでいいか」
骨がやられたり、ぜんそくになったりする者を見たくない。
薪や炭での精錬は考えていない。
畑を作る際に伐採した木は住居を作る際に使えばいいと思う。
だから、魔法が使える者が要る。
大量の水も要るな。
水を処理する施設……ため池か……。
「あー、リーフ、コンゴウ、凄いやこれは。
うまくいけば、マットソン伯爵家に入る金は膨大な量になる。
バランスを考えないといけないだろうがね。
その辺は考えるから、協力を頼む」
「「はい」」
リーフとコンゴウは頷いた。
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