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第155話 リードラの体調不良。

「ん?どうかしたのか?」

 何となくリードラの動きがおかしい気がした。

 いつもはかかない汗をかき、少し髪が濡れている。

(ぬし)よ、どこか広い所は無いかの?

 皆に見られることが無い場所が良い」

「思い浮かぶのは、リードラの巣とゼファードのダンジョン最下層」

 俺がそう言うと、リードラが俺にもたれてくる。

「どちらでもいい、連れて行ってもらえぬかの?

 姿を戻さねばならん」


「わかった」

 俺はミハルと戦った最下層の広間へリードラを連れて移動した。

「何とか間に合ったのう」

 そう言うと、リードラがホーリードラゴンの姿に戻り、崩れるように横になる

「大丈夫なのか?」

(ぬし)の精を注いでもらったことで、魔力が溜まったのか……」

 俺の言葉には反応せず、リードラは独り言をポツリ。


 俺は、リードラの体をさする。

 リードラの体には傷など無く治療魔法やキュアーを使っても何の変化もなかった。


 病気やケガじゃないってことか?


 フウー、フウーと苦しそうな呼吸をするリードラ。

 訳がわからなせいで不安を感じる。


 確か、ダンジョンマスターの部屋に椅子があったな。


 長丁場になりそうなので、椅子を取りにダンジョンマスターの部屋へ向かった。



 ダンジョンマスターの部屋を開けると、

「マスター!

 寂しかったですぅ」

 と飛びついてくる鳥。


「誰?

 俺は鳥に知り合いは居ないんだが……」

「寂しい事をいいますね。

 まあ、この姿になったのは最近ですからわかりませんか……。

 私はダンジョンコアです。

 このダンジョンを管理する者です」

「おお、そう言えばデカい魔石が無いな。

 で、なぜフクロウに?」

「この姿の鳥はフクロウと言うのですか?

 この世界には居ませんね。

 この鳥を選んだのはマスターが好きな鳥だからです。

 女性が良いのかとは思ったのですが、既に多くの女性を娶られているようです。

 そこで、私はマスターの記憶と繋がっていますので、その記憶の中から好きな動物を選ぶと、フクロウになってしまいました」

「まあ、森の賢者と言われるフクロウは嫌いではない」


 ダンジョンコアが真似ているのはコノハズクらしい。

 小さくてかわいらしいのは良いのではないだろうか。


「そこでです、私に名を下さい」

「名前ねぇ」

 ドキドキなのかモジモジなのかわからない動きをするコノハズク。

「オウルって言うと、王都と被るから、木の葉だから『リーフ』ってのはどうだ?」

「リーフですか……」

 コノハズクは少し考えると、

「はい!リーフで!」

 と、飛び跳ねて喜ぶ。

「マスターはなぜこの場所に?」

「ああ、俺の婚約者の一人が苦しんでいるんだ。

 病気でもなく怪我でもなく妊娠でもないんだと思う。

 妊娠して居ればアイナが教えてくれるだろうから……。

 看病するにしろ、少し時間がかかりそうなんで、『そう言えばダンジョンマスターの部屋にイスがあった』と思ってな」

「そうですか……。

 私も診ていいですか?

 私の中には、これまでに来た冒険者、それに歴代のダンジョンマスターの知識があります。

 マスターの知識もいただいているんですよ。

 だから、何が起こっているのかわかるかもしれません」

「ああ、だったら頼む」

 そう言うと、リーフは俺の肩に乗る。

 それを確認すると、俺は椅子を持ってリードラのところに戻るのだった。



 目を瞑りフーフーと荒い息をするリードラ。

 俺が頭を撫でると、少しは楽になるようだ。

 その周りを無音でリーフは飛んでいる。

 そして俺に近寄ると、

「マスター、わかりました。

 進化が起こっているようです」

 と俺の右肩にとまると教えてくれた。

「進化?」

「脱皮は少しだけ大きくなる時に起こります。

 ですから、ゆっくりと体が大きくなります。

 しかし、進化する時は、体が急激に大きくなることがあります。

 体が急激に大きくなる時は外殻が破れ内部から進化した体が出てくるはずなのですが、

 何のせいか皮が固く抜け出せないのでしょう

 早く皮が破けないと、あのドラゴンは死んでしまう」


 病気でもなく怪我でもないって訳ね……。

 でも……、


「簡単に死ぬって言うな……。

 方法があるなら俺はやる。

 要はドラゴンの皮に切れ目を入れて、破れやすくすればいいんだな?」

 と言ってしまう。

「ええ、でもドラゴンの皮は堅いですよ?」

 リーフが心配げに言う。

「そこは、まあ、何とかするさ」

 そう言うと、俺は収納カバンの中にあったオリハルコンのナイフを出す。

 そして、リードラの背中に上がった、

 古い皮には少し切れ目のある部分が有るが、なかなか上手く破れないようだ。

 俺は、既にある切れ目を大きくするように……オリハルコンのナイフで新しい皮を切らないように……古い皮を裂いていった。

 頭から尻尾の先まで裂き終わると急に背が盛り上がり、昆虫が羽化するように背中からドラゴンの体が抜けてくる。

 そしてぶっとくなった腕や足が抜ける。

 すると、脱皮した皮に入るはずのない大きさのドラゴンが現れてそのまま横たわるのだった。

 

 リードラは疲れたのかフウフウと大きく呼吸をしていた。


 おっと、元嫁と同じぐらいの大きさ?

 六十メートル級か……。

 でも、白いのは白いが、少しメタリックな感じだな

 特に異常はないようだ。


 リードラはドラゴンの姿のまま眠り始めた。

「リーフ、ありがとな。

 お陰で対処できた」

 俺が言うと、

「当然です。

 私はこのダンジョンにずっと居て、色んな知識を持っているのですから!」

 リーフは胸を張っていた。



【アイナ、聞こえるか?】

 アイナに念話で声をかける。

 ケルは「繋がりの強い者と会話ができる」と言っていた。

 リードラともできたのだ、当然婚約者で奴隷のアイナにはつながると思ったのだ。

【えっ、何でマサヨシの声が?】

【念話って奴だ。

 ケルに教わった。

『今日は遅くなるか、戻れそうにない』って皆に言っておいてくれ】

【どうしたの?】

【リードラが脱皮で疲れて寝てしまった。

 起きたら帰る】

【わかった、伝えておくね。

 二人っきりだからって変なことしないように】

【ドラゴン状態のリードラの寝こみは襲えないだろ、

 それじゃ切るぞ】

【リードラを頼んだよ】

【任せとけ!】

 俺はアイナとの念話をやめた。

 クリスに念話してもいいのだが、身重だし心配させてもいかんしな。


 椅子を前後ろ反対に座って様子を見る俺。

 知らない間にイスにもたれて寝ていたようだ。

 ふと目覚めると、見たことのある裸体。

「何とかなったか?」

「ああ、(ぬし)のお陰で何とかなった」

「今回は俺だけじゃないなぁ。

 リーフ?」

 声をかけると、リーフは無音で飛び、俺の肩に乗ってきた。

「凄い魔力だな」

「はい、私はマスターにより隷属化した、このダンジョンのダンジョンコアですから。

 隷属化した今では、魔力に関して言うとマスター並みにあります。

 あなたほど力はありませんけどね」

「何にしろ、(われ)を助ける手助けをしてくれてありがとう」

 リードラは頭を下げた。

「いいえ、気になさらず。

 私は今までの知識をマスターに教えただけです」

 そしてリードラを見ると、

「でも、人化しなくて良かった。

 私の知っている女性では、美しさでこの女性を越えることはできなかったでしょう。

 コノハズクと言う鳥の魔物。

 この姿なら私はマスターの傍に居られる」

 リーフは口角を上げた。


 んー、リーフの立ち位置は……知恵袋っぽいな。

 にしても、全裸のリードラ。


「リードラ、お前、裸のままはいかんぞ?」

「上手くいかないのだ。

 進化したせいかの?」

「ん?

 進化?

 そういやリーフが言っていたな」

 俺が聞くと、

「そうだぞ(ぬし)

 (われ)は進化したのだ。

 全てが(ぬし)に近づいた」

 とリードラが言った。

 すると、

「あの雰囲気、神龍ですね?

 いつのダンジョンマスターの知識かはわかりませんが、その中に神龍のことがあります」

 とリーフ。

「鱗の色が白くないのは何でだ?」

 リードラが呟いていた。

 それに気付いたリーフが、

「それは、時を経ていないからでしょう。

 千年もすれば白くなると思われます」

 と言う。

「千年かぁ……人の寿命では無理だね。

 俺は真白なリードラをもう見れないんだな。

 少し残念な気がする」

(ぬし)……」

「そうなったら、リードラがゼファードのダンジョンを管理してくれ。

 リーフと共にな」

「はいです!

 マスターの次のマスターはリードラ様ですね」

 黙ってしまうリードラと俺の言葉に元気な声でうなずくリーフ。

(われ)は嫌なのだ。

 (ぬし)と離れるのは嫌なのだ」

「人ってのは生きても百年。

 ドラゴンと一緒にずっとっていう訳には行かない」

「であれば、(われ)は探すぞ。

 (ぬし)と一緒に居られる方法を」

「ドラゴンと一緒の寿命かぁ。

 それだと、逆に皆の死を見なきゃいけない。

 それも辛いかな……」

「うー」

 リードラが考え始めた。

 ふと、

「リッチになりますか?

 私ならば可能ですが?」

 リーフが恐ろしいことを言う。

「いや……いい。

 ボロボロの服を着るのも嫌だな」

「マスターは我儘ですね」

 リーフがそう呟いた。

「そうだな、我儘だ。

 だから、天寿を全うすればいいと思っている」

「長生きしたいのであれば方法はありますが、加齢は避けられません。

 ドラゴンの寿命と比較すればそれでも短い。

 アンデッドは嫌だということなら、別の方法を捜さないといけませんね」

「リーフ、何か方法があるのかの?」

「それを今から探すのです」

「わかったのだ。

 (われ)も手伝うぞ」

「はい、よろしくお願いします」

 そして二人? は一緒に居ることが多くなった。


 こいつ等なら、何か方法を見つけてしまいそう……。

 なんか変なフラグが立ったような気がする。



 横たわる真白なリードラの抜け殻。

「あの抜け殻、防具になるんじゃないのか?」

「はい、最高級の防具になります。

 ホーリードラゴンの皮鎧など、持っている者は居ないでしょう」

 リーフが肩で頷く。

「貰っていいか?」

「いいのだ」

 即答のリードラ。

「じゃあ、仕舞おう」

 収納カバンに仕舞った。

「さて、帰ろうか」

 俺が言うと、

「このままかの?」

 と、全裸のリードラ。

「そう言えば、以前女性陣で服を買いに行ったあと、リードラから預かった服が合ったな。

「『甲斐性があるから、買ってくればいい』と言って買い物に行ったものだの?」

「ああ、あのあと、滅多に使わないからと俺に渡したローブ。

 預かったままだった」

 俺は収納カバンから取り出した。

 箱に入ったままの白いローブ。

「それならば、問題ないのう。

 確か、ダンジョンマスターの部屋に小綺麗なベッドもあった。

 二人っきりですること……」

「何をなさるので?」

 リーフが聞く。

 口角が上がっているのは何をするのか知っているようだ。

「好いた男と女がすることだの?」

「ああ、あれですね。

 それでは暫く邪魔をしないようにしておきましょう。

 心置きなく、ダンジョンマスターの部屋をお使いください」

 そう言うとリーフが音もなくどこかへ去っていく。

 

 結局やることはやった。

 そして、進化して能力が上がったはずのリードラが腰を抜かしているのだった。

 

 俺はやはりバケモノらしい……。


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