第153話 領内は繋がってないとね。
「それじゃ、とりあえず街道を作ってくるから」
と俺が言うと、
「へ?」
と驚くルカス。
「街道をですか?」
と聞くルカスに。
「そうだよ?」
と俺は当たり前のように返事をする。
できるものは仕方ない。
すると、
「ルカス殿、マサヨシ様がやることにいちいち驚いていては身が持ちませんよ」
クロエが苦笑いをしながら言った。
「そうそう、あの男は人ができないことをする。
半日もすれば『メルヌからリエクサを通ってボルタオに至る街道を作った』と言ってここに戻ってくるかもな」
ニヤニヤ笑いながらテロフも言う。
まあ、実際そのつもりなんだが……。
そんな三人に見送られ、俺とリードラは一度リエクサの街を出た。
そして、リードラの背に乗り、まずはメルヌを目指す。
「やっぱり街道が細いよなあ。
これじゃ馬車がすれ違うのが難しいだろ。
それに舗装されていないから走り辛そうだし、馬車の故障の確率が上がる」
そんな独り言を言った後、
「マナ、お手伝い頼む」
と声をかけた。
言葉に反応して、
「はいな」
とマナが現れる。
「あの道を三倍ぐらいの幅にして、道は平らでカッチンカッチンにできる?」
「できますよ?」
さも当然のように言い、マナが軽く輝くと、森の中にあった道が一気に広がり、オセーレ行きの時の風呂のような材質の道が出来上がる。
見た目モルタル。
「リードラ、降りてもらえるか?」
「心得た」
俺たちは出来上がった街道に降りた。
コンコンと地面を叩く。
まっ平だ。
「主よ、土を硬質化させただけですが、鉄の剣でも切れないぐらいの硬度はあります」
マナが胸を張って言った。
「それなら十分か」
それでも、一度馬車を走らさないとな。
一度リエクサの街に戻り、高高度からボルタオの街まで森を見る。
「意外と平坦だな」
「森だけだのう」
リードラが言った。
馬車で三日ぐらいかな?
四か所ぐらい野営できる広場があればいいか……。
できるだけ平坦で頑丈な道。
「俺の考えを読めるか?」
「ええ、主の思うことはわかります。
それでは、主の魔力を使わせてもらいますね」
軽い脱力感とともに、リエクサの街から森の中に平地を走る一本の道ができる。
繋がるのはボルタオの街。
さて、魔族側と繋ぐのはどうしよ……。
えーっと、マティアス王と話をしてからかなぁ。
何かいい産物探さないと……。
あっ、魔物が居るって言ってたな。
……ん?
俺はふと閃いた。
ケルの住処が近い……。
あとでケル達に魔物を狩ってもらうか。
手に負えない魔物は呼んでもらえばいい……。
さて、とりあえずこんなもんかね?
「それじゃ、リエクサの街へ帰ろうか」
「心得た」
リードラがリエクサへ向かう。
「ありがとな、マナ」
「どういたしまして」
マナは俺の体の中に入って行った。
リエクサの街に戻ると、
「あのー『急に森に向かって街道が出来た』と報告が……」
とルカスが聞いてきた。
後でボルタオ側も「急に道ができた」と報告が上がったと聞いた。
「ああ、街道は作ったよ。
ここからボルタオの近くに街道を繋いだ。
ボルタオの街もうちの領土だからね。
道も堅いから馬車での移動も早くなる」
「はあ……」
唖然としているルカス。
「言ったでしょ?
マサヨシ様は規格外なんだから……」
笑っているクロエが居た。
「魔物はどうなさるのですか?」
「ああ、従魔に任せる。
ケルベロスをトップにした、オルトロスとフォレストウルフの群れが居るから、そいつらに魔物を狩ってもらう予定」
「我々には従魔と別の魔物差がわかりませんが」
「ああ、そこはわかるようにしておく」
ケルみたいに、腕か首に赤いスカーフでも巻いておくか……。
「相談があるときは、どうすれば?
手紙を書けばよろしいでしょうか?」
ルカスが聞いてきた。
「ああ、ちょっと待って。
扉作るから。
クロエ、倉庫ある?」
「ええ、確かこっちです」
クロエに連れられ、倉庫らしき部屋に行った。
倉庫とはいえ、置かれている扉は豪華絢爛。
無駄遣いだよなぁ。
その扉の一つをリエクサとオセーレを繋ぐ転移の扉にする。
登録者はクロエ、テロフ、ルカス。
まあ、そのうち、うちの女性陣も増えるだろう。
とりあえずこれでいいでしょう。
「今後はどうするおつもりで?」
ルカスが聞く。
「そうだな。
こんだけ森があるんだ。
開墾して畑を作る」
「しかし、周辺の村だけでは労働力が……」
「畑は俺が作るし、民はそのうち集めるよ。
この地の税率は他の貴族よりも少ない。
それだけでも、我が領土に来る理由にならないかな?
安く畑を売り、そこで得た作物で支払ってもらって自分の物にしてもらう。
頑張れば頑張るほど、自分の土地を得られるんだ」
「確かに……。
農家の次男、三男は成人すればその家を出ます。
大体が冒険者や兵士など危険な仕事に就くとか……。
そういう者に土地を与える。
その土地はいつか自分の物になる。
夢が現実になるのなら、労働意欲は上がるでしょう」
「そうなればいいけどな。
しかしそれでも今は現状維持。
魔物の件も、準備ができたらこちらから報告する」
「畏まりました」
ルカスは頭を下げた。
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