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第151話 報告と婚約発表

 新しくオウルとオセーレを繋ぐ扉を作る。

 そして、久々の帰宅……と言っても二週間程度。

 長いのか短いのかはわからない。

 しかし、クリスのお腹も、カリーネのお腹も大きくなっていた。

 それを上回るプリシラ様のお腹。

「母さんもいらっしゃっていたのですか?」

「ええ、フィナちゃんの食事はバランスがとれてるし、美味しいから」

 とのこと、クリスやカリーネより二カ月ほど早い妊娠だったため、結構な大きさだ。

「順調だよ」

 ニッコリ笑うアイナ。


 アイナの言葉で安心できる。


 リードラ、マール、イングリッドも一緒に帰っていたので、他の女性陣が気付く。

「やっと、手を出してもらったのね」

 カリーネが言った。

「わかるのか?」

 俺が聞くと、

「雰囲気が変わるから……。

 少女から女性って感じかな」

 カリーネが笑う。

 言われた当人は真っ赤になっていた。

「凄かったでしょ?」

 と聞くクリス。

 イングリッドはコクリと頷く。

「聞くのと実際に体験するのじゃ全然違った。

 何度か気を失うぐらい」

「普通の男はもっと淡白だから……マサヨシの知識が凄いんでしょうね」

 とカリーネが言う。

 フィナやマール、リードラ、ラウラ、クラーラも混じって話が始まった。


 クラーラも仲良くやっているようだ。


 ただ、話の内容が過激なのかフィナとクラーラの顔も真っ赤になる。


 この場は居づらいな。


「俺は、父さんに報告してくる」

 そう言って、俺はその場から逃げるのだった。



「セバスさん、義父さんは執務室?」

「はい、朝食をとったあと、執務室におられます」

 確認をした後、扉をノックする。

「誰だ?」

「私です」

「おお、マサヨシか?

 入れ」

 中に入ると、義父さんは書類に向き合っていた。

 書類を置くと義父さんが立ち上がる。

「イングリッド殿下の護衛は?」

「はい、終わりました」

「さすがに早いな。」

「まあ、帰りは一瞬ですから」

「そうだな、魔道具持ってるしな」

「私が貸し出されたのですが……」

「仕方ないだろう?

 お前とリードラ、マールだけで伯爵の屋敷に行っていたら、国内だけの問題で済んだ。

 イタズラか何か知らないが、その場にイングリッド殿下が居た。

 国家間の問題にした一因はお前にもある。

 お前自身で尻を拭えってことだよ。

 王はそれができると知っているから、貸し出されたんだ。

 期間は『しばらく』だそうな」

 にやにやと笑う義父さん。

「安易にイングリッドを動かした俺に一因があるってことか」

「そういうことだ。

 まあ、お前と代替わりをするって報告はしておく。

 そうすれば、ポルテ家の土地はお前の物になり、ボルタオの街まではマットソン子爵家の領地になる」

「よくご存じですね?」

「当然だ、働きには報酬がある。

 お前がレーヴェンヒェルム王国で尻拭いする代金がボルタオの街なのだからな。

 そして、お前が代替わりした時に伯爵になることは王と話は付いている。

 特殊任務についてもな」


 すでに決まっているらしい。


「代替わりしても、しばらく儂は領土を治めることになるだろうな。

 お前は忙しそうだ」

「すみません」


 謝るしかない。


「いいや、こんな張りのある生活ができるとは思わなかったよ。

 この歳で我が子も抱ける。

 孫もな。

 剣を振るうしか能がないこのマメだらけの手。

 今から赤子が抱けるかが心配だ」

 嬉しそうに両手を見る義父さんが居た。



 女性陣の話も終わったようなのでオセーレに戻ろうとすると、俺の後ろにリードラ、マール、イングリッド以外の女性陣が集まる。


 ん?


 クリス曰く、

「当たり前でしょう?

 私たちもこの扉を使えるようにしてもらわないと」

 とのこと。

 勢いに負け、結局オセーレまでの扉は皆が使えるようになった。


 セバスさん、ミランダさん、ベルタ、義父さんに義母さんまでも……。


「部屋があるからいいじゃない」

 とクリスが言ったら、オセーレ側に女性陣みんながやってきた。


 大所帯。 

 確かに部屋はあるからいいんだけどね。


 屋敷に戻ると、お付きの一人から、

「イングリッド殿下、婚約者のお披露目を明後日行いますと連絡がありました。

 マサヨシ様の服装はいつもの白いローブに黒の服で問題ないそうです。

 あと『ちょっとした演出があるといい』とのこと……」


 演出ねぇ……。


「しかし、王女の婚約の発表などどうやってやるんだ?」

「広場に民を呼び、私とマサヨシ様の婚約をお父様に公表してもらいます。

 その際にはできるだけ派手に、民の印象が良くなるようにしてもらわなければいけません。

 その者が王女に相応しいということを見せつけるのです」


 正直わからん。


「ケルが居るでしょ?

 ケルベロスを従魔にしている者なんて居ない」

 クリスが言った。

「ケルちゃんが居ますけど、もう一つ目立つ物が欲しいですね。

 それではただの強い冒険者になってしまう」

 イングリッドの声が沈む。

「要は『この男は力を持っている』と見せなきゃいけない訳か」

「そういうことです」

「その演出を王は俺たちに丸投げしたってことだな」

「はい」


 面倒なことを……。


「それならば、(われ)が降り立とうか?

 我が降りる場所があるのなら、そこにドラゴンの姿で舞い降りるが?」

「ケルちゃんの黒、リードラさんの白、いいですねぇ。

 目立ちます」

「どうやってお披露目の場所に来てもらう?

 俺とイングリッドが居る時に話ができないと意味がないだろう?」


 ん?

 ケルとは念話で話せる。

 繋がりが強い者とは念話で話せる。

 ん?

 ケルとは隷属契約をした。

 リードラとも話せる?


「リードラ、念話ってできる?」

「ああ、できるぞ?

 必要ないからしていないがの」


 ありゃ、あっさりと肯定。


「お披露目の日に俺が呼んだら来てくれるか?」

(ぬし)のため、向かおう」

 リードラは快諾した。



 王城前の広場の二階は貴族たちで埋まる。

 そして、その下に民が集まっていた。

「すっげーなあ」


 数千人ってところだろうか。


「イングリッドって人気あるんだ」

 と呟くと、

「妹は幼体の時代から可愛かったからな」

「はい、国民に好かれていましたから」

 ウルフとゲオルグが言う。

「さて、この国民たちの度肝を抜く演出を楽しみにしますか」

 期待の目で俺を見る二人。


 勝手に丸投げしたくせに。



 ランヴァルド王が広場の一段高いバルコニーに出ると、民たちの声が大きくなった。

 そして、ランヴァルド王が手を上げると、その声が引き静けさが訪れる。

「民たちよ、よくぞ集まってくれた。

 我が国にとって喜ばしい報告を行おうと思う。

 我が娘イングリッドの婚約が成った。

 その者の名はオースプリング王国のマサヨシ・マットソン。

 聞いたことがある者も居るだろう、オースプリングの鬼神の名を。

 その息子になる。

 ただの子爵の息子と言うものも居るだろうが、この者は最後のダンジョンと言われるゼファードのダンジョンを踏破している。

 この者の持つ知識は我々の知らない物もある、わが国の益となるであろう」

 そう言うと、ランヴァルド王は俺とイングリッドに目配せした。

 出て来いってことなのだろう。

 俺とイングリッドはバルコニーの前まで行くと手を振った。

 そのタイミングで、ケルがバルコニーに上がってきて座る。

 イングリッドがケルに近寄るとケルは頭を下げた。

 そして、その頭をイングリッドが撫でる。

「おお、すげぇ。

 ケルベロスが居る」

「王城にケルベロスが入ったっていうのは聞いていたが本当だったんだな」

 すでに、ある程度の噂にはなっていたようだ。


 まあ、メインの通りを歩いたから仕方ないな。


 ケルは現在は与えられた屋敷の庭に居る。

 そこで、デカい扉で移動してもらった。

【そろそろかの?】

 念話が聞こえる。

【ああ、頼むよ】

 誰もが見えないような高度から、リードラがドラゴンの姿で急降下してバルコニーにわざと開けていた空間に降り立つと、勢いでブワリと広場に風が舞った。

 四十メートル級の純白のドラゴンなど見たことなどないだろう。

 イングリッド以外は唖然としていた。

 俺はリードラに近寄ると頭を撫でる。

「聞いたことが無い?

 オースプリング王国でゴブリンが大発生した話」

「ああ、ドラゴンライダーが現れて町を救ったって話?」

「そうそう、あれって、白いドラゴンと白いローブを着たドラゴンライダーだったわよね………………」


 ありゃ?

 いろいろ噂が広まっているのね。


 マリエッタ様、ウルフ、ゲオルグが俺の周りに来た。

「美しいドラゴン。

 あなたにはこのような守護者が?」

 マリエッタ様が驚いていた。

「お母さま、あのドラゴンの守護者はマサヨシ様です。

 マサヨシ様はあのドラゴンより強い。

 お母さまが馬鹿力と運で成り上がったというのはある意味正解ですが、バカ力の次元が違います」

 イングリッドがニコリと笑う。

「あなたも言うようになったわね」

 マリエッタ様もニコリ。

「私は婚約者ですから」

「女に?」

「ええ……。

 多分お母様が知らないようなこともしました」


 母と娘の舌戦が始まっている。


 怖っ……。


「マサヨシよ、あのドラゴンは?」

 ウルフが聞いてきた。

「ああ、ホーリードラゴンです」

「この大きさなのか?」

「はい」

「お前とあのドラゴンだけで一軍に相当するな」

「そうですか?

 魔物に対してこの力を使うのはいいですが、人には使いたくないですね。

 一軍に相当しても、そんな心持ちの俺じゃこの国の役には立ちませんよ」

「抑止力にはなる。

 我が家の一員になったのだ、そういう使い方をされても仕方ないだろ?」

「俺の力が何かの抑止力になるのなら問題はありませんが、戦争に加担して不特定多数を殺すってのは遠慮します」

「まあ、そういうことにしておこう」

 ウルフが言った。

「兄さん、この年上の義弟(おとうと)はバケモノだね」

「ああ、想像もつかないバケモノだ」


 久々にバケモノ認定をされる俺が居た。



読んでいただきありがとうございます。

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