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第149話 ママさん登場。

 ケルと戦馬を預け、ウルフを先頭に王城の中に入る。

 そして、ひときわ大きな広間に到着した。

「少し待っていろ。

 父上を呼んでくる」

 ウルフが広間の奥にある扉から外に出ていった。

 既に先触れもされていたらしく、すぐにランヴァルド王が現れた。

 その後ろにイングリッドによく似た女性。

 そして、ウルフともう一人の青年が現れた。


「マサヨシよ、イングリッドの護衛ご苦労だった」

「いいえ、私は冒険者です。

 イングリッドの護衛と言う事ですので喜んで受けます」

「ここに居るのがマリエッタ。

 私の妻だ」

「マリエッタです」

 マリエッタ様が軽くお辞儀をした。

「そしてウルフの弟、イングリッドの兄である、ゲオルグ」

「ゲオルグです」

 ゲオルグも軽く頭を下げる。

「マサヨシ・マットソンです」

 俺は頭を下げた。

 マリエッタ様は値踏みするように俺を見る。

「マリエッタ。

 マサヨシは、クラウス・マットソン子爵の義理の息子になる。

 そして、イングリッドの婚約者とする」

 ランヴァルド王が言った。

「しかし、ただの子爵に王女であるイングリッドを嫁がせるなど……あり得ません。

 本当にあなた様はそれでよろしいのですか?」

 マリエッタ様は納得できていないようだ。

「言ったであろう?

 マサヨシの武力、財力、知識ともに我が国の利になる。

 数万のゴブリンを殲滅できる者など、この国にはおるまい?

 そして何よりイングリッドがそれを望んでいる。

 何が不満なのだ?」

「騙されているのではないのですか?

 そのような成り上がり者で大丈夫なのですか?」

「マティアスも問題ないといっていた。

 非公式ながら、あいつの娘もマサヨシの妻になる予定だ」


 話しが続く……。

 しばらく話し合った後、

「マサヨシさん、それではあなたの知識というものを私に見せてもらえませんか?」

 と、マリエッタ様が言った。

「私を喜ばせる物があれば見せてもらいたいのです」

「マリエッタ様の喜ぶもの?」

「ええ、美味しいものがいいですね」

「そうですか……。

 テーブルがあればそこに出しましょう」

 マリエッタ様が

「テーブルを」

 というと、椅子と白いテーブルが運ばれてきた。

 俺は収納カバンからクッキーにプリン、生クリームをのせたホットケーキ、イチゴっぽい実で作ったショートケーキ、最近手を出したバウムクーヘンを出す。

 マリエッタ様は俺のカバンに驚いていた。

「あっ、新作なんですね」

 イングリッドが喜ぶ。

「ああ、棒に液をかけて焼くんだ。

 同心円の輪っかができる。

 バウムクーヘンというものだ」

「お母様、これは紅茶とともに食べるのがよろしいかと。

 よく合います」

 とイングリッドが言うと、

「紅茶を」

 と声を出した。

 すると、ディーセットが持ち込まれ、その場で紅茶が点てられる。

「それではお召し上がりください」

 と俺が言うと、イチゴっぽい実で作ったショートケーキを食べ始めた。

 続いて、もう一人……。


 ああ、ウルフじゃないほうのお兄様。

 ゲオルグだったっけ?


「えっ、甘酸っぱい」

「これは……いいですね」

 と二人はびっくりした後、紅茶を啜った。

「このフワフワの物に更にふわふわの白いもの、両方が甘い。

 それを締めるようなこの実の酸っぱさがまたいい。」

「そう、さっぱりする。

 この甘酸っぱさが、紅茶に合う」

 マリエッタ様とゲオルグが話していた。

 次々と口をつけていく。

「これを全てマサヨシ殿が?」

 ゲオルグが聞いてきた。

「ええ、すべてをマサヨシ殿が考案しております」

 イングリッドがマリエッタ様に言った。

「馬鹿力と運で成り上がったのではないと言う事ですね。

 マサヨシ殿、イングリッドを妻としてどうするおつもりですか?」

「好きなことをしてもらえればいいと思います。

 その中で、やりたいことを見つけ、やってもらえればいいのではないでしょうか?」

「政治の交渉の駒として使う気は?」

「そんな事を考えられるほど頭は良くありません。

 イングリッドを人質にしたり他の者にやる気も無いです。

 だから、そういう時には力で食い破る。

 たとえ、この国であっても」

「王よ、この者と手合わせしていただけませんか?」

 マリエッタ様が言う。

 ランヴァルド王が「えっマジ?」という顔でマリエッタ様を見た。


 あれ?

 俺、勝ったって言ってなかったの?


「お母様、私がマサヨシの相手をしましょうか?」

 というウルフの言葉に、

「この国一番の使い手が行う必要があるのです」

 と一蹴。

 その言葉にランヴァルド王の背中が小さくなる。

 すると、イングリッドが、

「お父様とマサヨシ様は既に戦っておられます。

 奥義を使ったにもかかわらず、背後を取られ、お父様は負けました」

 絶対の自信を持っていたのか、驚きすぎてマリエッタ様の口が開いたままだった。


 なんか悪いことしたかな?


「そして、このマサヨシ様、リードラさん、マールさん、そして今は居ませんがクリスティーナ様、アイナちゃんの五人で、最後のダンジョンと言われるゼファードのダンジョン最下層でダンジョンマスターを討ち果たしております。

 そして新しいダンジョンを領土内に見つけております。」

 イングリッドは胸を張って言い切った。

「そういうことで、貴族の格ではなく、人の格で負けているんだ。

 儂はイングリッドがこの男に嫁ぐのはいい話だと思っておる。

 国にとっても、王家にとってもな」

 ランヴァルド王がばつが悪いのか頭を掻いていた。

「わかりました。

 私の負けでございます」


 この話、勝ち負けがあったのか?


「マサヨシ殿、イングリッドは私の可愛い娘。

 大切にしていただけませんか?」

 マリエッタ様は俺の前に進み出ると、手を握る。

「はい、大切にします」


 これで、イングリッドとの婚約に異を唱える物は居なくなった。


読んでいただきありがとうございます。

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