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第141話 後始末係を呼ぼう。

 扉をバストル家の門の前に繋ぐ。

「ミスラ様に連絡を取りたいのですが……。

 私の名はマサヨシ・マットソン」

 門番に声をかけると、

「ああ、お(ひい)様の婚約者様ですね、少々お待ちください」


 ラウラは屋敷で「お(ひい)様」と呼ばれていたんだな。


 しばらくすると、ミスラが現れる。

 最近は呼び捨てである。

「どうかしたのか?

 イングリッド殿下の護衛任務をしていたんじゃなかったのか?」

「今、ちょっとゴタゴタに巻き込まれましてね。

 現場で相談したいんですが……」

「わかった、どこだ?」

「こちらへ」

 俺が扉を出すと、

「これがラウラの言っていた扉か」

 とミスラ様はきょろきょろと扉を確認した。

 そして、二人でボルタオの領主のところに向かう。


 広間に転がった領主を見て、

「これは、ブラーム・ブルーキンク伯爵。

 伯爵が何を?」

 俺は、これまでの事情を説明すると、

「ただのバカだな。

 政治力には長けていたはずなんだが……。

 イングリッド殿下に手を出そうとするなんて……」

 ミスラは呟く。


 ブラーム・ブルーキンク伯爵は地雷を踏んだだけのような気がする。

 まあ、ふむなりの趣味があったわけだが……。


「すまん、王に聞かねばならない案件だ。

 王女に手を出したとなれば、このままではレーヴェンヒェルム王国との国交さえ危うくなる。

 しばらく黙っていてもらえるか?」

「それはいいんだが、領主が居なければたちまち政治が滞るのでは?」

「それは、代官を送る。

 マサヨシの力を借りなければならなくなるだろう。

 しばらくこの街に滞在していてもらえないだろうか?

 あと、王都騎士団に送ってもらえると助かる。」

 「それじゃ、ここから王都騎士団までの扉を作るよ。

 俺が居ないと動けないんじゃ面倒だろ?」

 俺は壁から扉を枠ごと取り外すと、王都騎士団のヘルゲ様の部屋と結ぶ転移の扉を作った。

 そしてミスラが使えるようにする。

「これは、俺とミスラしか使えない。

 うまく使ってくれ」

「ありがとう義弟(おとうと)よ!」

 というと、早速扉を開けてヘルゲ様のところへ行くのだった。


 何度か騎士が出入りし、倒れている騎士たちを回収していく。

 ヘルゲ様もこっちに来ていた。

「ミスラが今、王のところへ報告に行っている。

 返事は明日以降になるだろう。

 それまでは宿で待っていてもらえないだろうか」

 俺はヘルゲ様に「暁の光星亭」の場所を教えると、宿に戻るのだった。



「貴族が潰されるって簡単なのですね」

 イングリッドが言う。 

「そりゃなあ、やっちゃいかん事をして、王にバレてしまえば、あとは破滅だけだろう。

 今まで上手くやっていても、知らなかったとはいえ手を出そうとしたのは王女様だからねぇ」

「他にも無理やり手込めにされた女子も居たかもしれんな」

 リードラが言った。

「まあ、その辺はミスラやヘルゲ様が何とかするんじゃないかな。

 どうせ領主の館の隅々まで調査されるだろうし……、そういう娘が見つかったとしても対処はしてくれるはず。

 でも、まず問題なのは、オースプリング王国の貴族が、知らないとはいえレーヴェンヒェルム王国の王女に手を出そうとしたことだろうね」

「そこは気にしなくていいと思います。

 婚約者になるマサヨシ様が護衛として私を守り切ったことのほうが重要です。

 私はお父様に一応報告するつもりではありますが、多分お父様も何も言わないでしょう。

 守るべきものが守るものを守っただけですから。

 私としては領主が処罰されれば問題ありません。

 それより、私はフィナちゃんのご飯が食べたいです」


 食い気優先?


(われ)も屋敷に戻りたいのう」

「旦那様、私も……」

 仕方ないので扉を出して、三人を屋敷に戻す。

「朝には迎えに戻る」

 と言って、俺は一応宿に残ることにした。

 ヘルゲ様やミスラの報告があってもいけないからね。



 どうせ三人を迎えに行く必要があるので、宿へ帰ると主人に「朝食は要らない」と言っておく。

 そして……、

「ふう、久々の一人風呂」

 数人で使えるようになっているのだろう……結構広い。

 お付きの「お背中流しましょうか?」の言葉もあったが、丁重にお断りした。

 髪を乾かし、下着だけで布団に入る。

 なんかいろいろあったせいか、すぐに眠りに落ちた。


 どのくらい寝ていたんだろう……。


 サラサラという衣擦れの音。

 ふと目を覚ますと、見たことのない人影。


 いや、見慣れてないだけか……。


「クラーラ、何をしに来た?」

「皆に言われたのだ。

『今夜は頑張れ』って」


 事前相談済みね……あいつ等……。

 いつ話をしたのやら……。


「こんな貧相な体じゃダメかい?

 リードラさんやマールさんのような体じゃないと抱けないかい?」


 イングリッドが入っていないのはなぜだろう。


「そんなつもりじゃないんだがね。

 それに、さっき会ったばかり、父親の許可が出ているとはいえ、無理に手を出してもらおうとか考えなくていいと思うんだが……」

「でも、『私からアンタが良い』と言って近づいたんだ。

 自分から体を差し出したっていいだろ?」


 はあ……。


「抱き枕にはするよ。

 手は出さない。

 というか、寝てるところを起こされたんだがなぁ」

「邪魔だったかい?」

 クラーラはちょっと悲しそうな物言いだった。

「いろいろ考えたんだろ?

 今更帰れとは言わないから、早くベッドに入ってこい。

 寝るぞ」

「うん」

 恐る恐るクラーラがベッドに入ってくる。

「こっち来い」

 引っ張ると「キャッ」という声のあとクラーラの柔らかい体が俺の胸に当たる。

 トランクスとタンクトップのような下着を着ていた。

「すまない。

 ちょっと力が強かったか」

「痛くはなかったんだ。

 男の傍にいるなんて初めてだから……」

「体が震えてるぞ?」

「だから、初めてなんだって!」

 恥ずかしそうにクラーラはベッドに潜り込んできた。

 俺は一つため息をつくと、

「ほら」

 俺は腕を伸ばす。

 クラーラは腕に頭を置いた。

 頭を撫でると、クラーラの震えが止まる。

「暖かいなぁ。

 二人寝って、こういうことなんだ」

 クラーラが呟くように言った。

「そういうこと」

 クラーラの頭を撫でていると、緊張と疲れからなのかスースーと寝息が聞こえるようになる。

 しかし、がっしりと俺に抱き付いていた。

「さて、俺も寝るかね」

 俺も目を瞑ると、人の温かさで再び眠りに落ちるのだった。


相変わらず誤字脱字が多いようです。

修正していただきありがとうございます。


読んでいただきありがとうございました

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