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第140話 イタズラとその結果。

 領主側からの連絡があり、

「領主様は出来れば今晩にお会いしたいとのことです」

 と領主の使いに言われた。

イングリッドを見ると、

 コクリと頷く。

「わかりました。

 こちらから参上すればよろしいでしょうか?

 それとも、迎えが?」

「日が暮れたら馬車を出しますので、日が暮れてしばらくすればこの宿の外に馬車が着くと思います」

 とのこと。

「それでは、それまでに準備をして待っています」

 と俺が言うと、

 領主の使いは帰って行った。


 黒いローブに三角帽を着たイングリッド。

 確かに、ちょっとした魔法使いに見える。

 イングリッドが俺たちのパーティーに入って領主に対面する作戦のための服装。

「これなら、バレませんか?」

「まあ、幼体しか見たことがないのならバレないだろうな」

「それではこれで行きますね」


 日が暮れてしばらくすると豪華な馬車が宿の前に着けられた。

 俺たち四人が乗ると馬車は走り始める。

 そして、高い塀に囲まれた屋敷の中に入ると、その玄関に着いた。

 馬車の扉が開き、俺たちは外に出る。

「うちと一緒ぐらいだな」

 ボソリと呟く俺。

 執事に連れられ、一つの広い部屋に着いた。

 そこにはワインやエールのような酒と豪華な食事が並ぶ。

 しかし、総じて見栄っ張りな貴族にしては少ない。


 手を抜かれたかな?


「ここでしばらくお待ちください。

 料理を食べてもらっていても構いません」

 と言うと執事が去っていった。

「お待ちらしいな」

「この広い部屋に、あの量の料理は少ないですね。

 何か意図があるのでしょうか」

 マールが言う。

 俺は料理に近づき収納カバンに入れてみた。

「眠り薬と催淫薬入りだってさ」

「我々を眠らせ催淫薬を飲ませてどうするのでしょうか?」

 イングリッドが聞いて来た。

「まあ、三人とも美人だからねぇ。

 冒険者ギルドで噂にでもなったのかね?

 領主は捕まえて奴隷にでもするか、自分の愛人にするつもりじゃない?

 要は、抱きたいのだろう。

 催淫薬で言うことを聞かせるつもりなのかもしれないね」

「美人のう……」

 ちょっとうれしそうなリードラ。

「美人ですか?」

 口角が上がるマール。

「美人……」

 頬を染めるイングリッド。


 まあ、三者三様で美人なのは確かなんだが、この会話内容の「美人で」は反応しなくてもいいと思う。

「奴隷」とか「愛人」とかに反応したほうがいいんじゃない? 

 もうちょっと危機感を持とうよ……。

 とりあえず、キュアーを料理に唱えて解毒だ。


 俺はキュアーを唱えた。

 収納カバンに入れて再確認。


 何も無し。


 俺たちは適当に料理をつまんだ。

「フィナのほうが美味いのう」

「そうですね、フィナ様のほうが美味しいです」

「んー、無駄に香辛料を使ってます。

 舌の肥えていない人なら誤魔化せるでしょうが、フィナちゃんの見事な味のバランスでは霞みますね」

 とのこと……。


 皆、舌が肥えているようです。



 料理を程々食べると、

「宿に戻ったら、屋敷に帰って夜食を貰うか?」

 と聞いてみた。

「マサヨシよ、賛成だの」

「旦那様、賛成です」

「マサヨシ様賛成です」

 こうして、一時帰宅が決まる。


 そんなことを話し終わると、執事とともにデブな領主が現れた。

 料理が食べられているのを確認すると、

「見事盗賊団を倒したというのはお主たちか?」

 と領主が聞いてきた。

「はい、私どものパーティーで捕らえました」

 リーダーである俺が答える。

「おうおう、美人がそろっておる。

 おまえ、相当な好き者なのであろうな?」

 舐めるように女性三人を見る領主様。

「好き者のつもりではないんですがね、元々は一人だったのですが、助けている間に増えました」


 最初は本当に一人だったんだよな……。


「それは羨ましいことだ。

 食事はどうだった?」

「思ったよりは美味くありませんでした。

 これは私の父の屋敷に居る料理人のほうが腕は上なのでしょう」

 プライドを傷つけたのか領主のこめかみがピクリと動く。

「そなたが連れた女の種族は?」

「ダークエルフと竜人、そして魔族になります」

「竜人とな?

 儂は竜人に手を出したことがない。

 どのような味なのだろうな」

 部屋の周囲に光点が集まる。


 おうおう何かが集まってきた。

 んー、数で優位に立っていると思っているらしい。

 本来は眠ってしまった俺と女性陣を運ぶための手合いなんだろう。

 そろそろ、薬が効くころ合い?


「うっ」

 わざと眠気が襲ったようなふりをする。

 俺が振り向いて三人を見ると軽くうなずいて、

「眠いのだ」

「これは……」

「立っていられない」

 三人も這いつくばる。

「やっと、薬が効いてきおった。

 お前、効きが悪いのではないか?」

「ハイオークでも粉を吸っただけで眠る薬です。

 能力の高い冒険者だったので耐性があったのかもしれませんね」

 俺たちは寝たふりをして領主と執事の会話を聞いていた。

「それにしても竜人は初めてだな。

 人化したドラゴン。

 どんな味なのやら。

 早く隷属化して味わいたいのう」

「私どもにも?」

「ああ、ダークエルフと魔族のどちらかをやろう」

「男は?」

「剣を貸せ、私自らが殺す。

 あ奴、料理を気に入っておらなんだ」


 はあ……、殺されるらしい。


 何か棒のようなものでわき腹を押される感じがした。


 ホーリードラゴンのローブとシルクワームのスーツのお陰かこそばゆい。

 まあ、ステータス補正もあるから、滅多なことで傷がついたりはしないんだけどね。


「何で刺さらぬ!」

「服の防御力が高いからではないですか?

 直接頭を!」


 バキンという音がすると、軽い痛みがした。

「痛えなあ……」


 茶番は終わり。


「何!」

「痛いから起きたんだよ。

 何やってるんだか……」

 クスクスとイングリッドが笑っている。

「リードラ、どんな味か知りたいらしいぞ?」

「そうだのう。

 血の味かの」

 リードラが拳を出すと拳圧が頬に当たり、そのまま領主が吹き飛んだ。

「俺は美味しくいただきました」

(ぬし)、それは今言うところではあるまい?」

 ちょっと恥ずかしげなリードラ。


 女子会では結構話しているくせに。


「私は?」

「美味しかったです」

「やた!」

 マールが喜ぶ。

「私も!」

「あなたはオセーレでちゃんと婚約をしてからです」

「ぶう!」

 膨れたイングリッド。


「こいつらどうする?」

「ミスラ殿に突き出しては?

 バストル家に繋げばすぐでしょう?

 騎士が居るなら王都騎士団の詰め所に繋いでもいいでしょうし」

 とイングリッド。

 領主を無視して会話をつづける俺たちが気に入らなかったのか、

「バカにするなぁ!」


 おっと、領主がキレた。


「あいつらを()ってしまえ!」

 その言葉とともに、十数人の騎士らしき男たちが現れる。

 そのことごとくの意識を俺は一撃で刈った。


「終わった、終わった」

 わざと大げさに言って、シルクワームの糸で左右の親指を結ぶ。

「お前、何者だ?」

 領主が聞いて来たので、

「俺はイングリッド・レーヴェンヒェルム殿下の護衛のクラウス・マットソンの息子、マサヨシ・マットソン」

「クラウス・マットソン……鬼神の息子だと?

 冒険者ギルドに潜ませた者からはマサヨシとしか……」

「ああ、冒険者ギルドでは名前だけでも依頼は受けられるからね。

 ちなみに、お前らが犯す予定にしていた魔族の女性は、お遊びでここに来たイングリッド・レーヴェンヒェルム殿下だ」

「えっ、もっと小さかったはず……」

 イングリッドをガン見して驚く領主に、

「あの時は幼体でしたからね。

 さて、楽しいイタズラになりましたね。

 貴族の一つが潰れるところを見るなんて初めてですからね」

 ニコニコのイングリッド。

「あとは、あんたと執事だけだ」

 そう言うと、二人の意識を刈った。


相変わらず誤字脱字が多いようです。

修正していただきありがとうございます。


読んでいただきありがとうございました

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