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第135話 ベビーラッシュ。

 夏が近づき王立学校を卒業したイングリッドとクロエ。

 別に卒業式がある訳でなく、卒業証明を貰うだけのようだ。

 それでは寂しいからと、簡単なパーティーをした。

「「マサヨシ様、ありがとうございます」」

 頭を下げるイングリッドにクロエ。

 影のように付き従うテロフ。

「クロエ、テロフとはどうなんだ?」

 アラフォーのオッサンが知りたい事をブッ込んでいく。

「そっ、それは……」

「いつも一緒ですよね」

 イングリッドも気になっているようだ。

「マサヨシ殿、クロエ殿にそんなことを聞かないでください!」

 と遮るようにテロフが現れる。

「じゃあ、テロフはどう思っているんだ?

 人間の事を知りたいからクロエの執事をしてるんだろ?」

「それは……。

 マサヨシ殿は知らないが、クロエ殿は美しく聡明だ。

 だから、クロエ殿を守り執事をする価値はある」


 俺は確かに美しく聡明じゃないけどもよ……そこは出さなくても……。

 でも、まあ、テロフはクロエは気になるらしい。


「クロエはどうなんだ?」

「テロフさんは、気が利いて一緒に居ると気が楽です。

 できればずっと一緒に居ていただければ……。

 長命種であるテロフさんには私は一時の遊びかもしれませんが、私はそれでも十分」

 クロエは悲しげに言った。

「俺は……、そんなつもりはない」

 クロエは否定するが、

「いいえ、寿命の違いは仕方ありませんからね。

 私は結婚を求めません。

 でも、だからこそ、皆さんが子供を欲しがるんだと思います。

 愛する人との結晶として……」

 と、クロエは言った。

「ですよね」

 イングリッドが便乗する。

 何かプレッシャーを感じた。

「子供?

 居ると頑張れるわよ。

 だって、私が一人で頑張って来れたのもエリスが居たから。

 病気しても傍らに寝かせて、世話をしたこともある。

 今はマサヨシが居るから安心だけど、仕事もしながら子育てって大変なの。

 でも、それでも頑張って来れたのはエリスが居たから。

 クロエが子供を欲しがるのはわかるなぁ。

 要は、クロエはテロフの事が好きだってこと。

 まあ、見た感じテロフも好きなんだろうけどねぇ」

 カリーネはチラリとテロフを見た。

「そっそれは……」

 テロフが言葉を詰まらせる。

「やっちゃいなさいよ。

 クロエはそれでいいって言ってるんだから……」

「私はクリス様の事を見守る義務が……」

「すでにそんな事してないじゃない。

 いつもクロエに付きっきりのくせして。

 いざとなったらヘタレになるのはマサヨシに似てるわね」

 今度はクリスが参戦した。


 俺、飛び火。


「私が嫌いでしょうか?」

「それは……好きです。

 ですが、結婚もしてない者が……そういう訳には……」

「あなたも堅いわね。

 マサヨシと一緒。

 クロエは『いい』って言ってるの、

 あなたも好きだって言ってる。

 クロエは貴族の娘だけど、既に縁は切れているわ。

 だから、あなたが気にする必要はないの。

 私とマサヨシの関係に比べたら、問題なんて無い無い」

「クロエさんとあなただったら……そうねえ……私とクラウスとの関係よりもましね」

 更に義母さん登場。

「丁度いいから言っておくわ。

 できちゃったみたい」

「「「「「ん?」」」」」

 近くに居た女性陣と俺、そして義父さんが母さんのほうを見た。

「月のものが既に三回ほど来てないの」

 アイナが近寄ってお腹を触る。

「うん、できてるみたい。

 命の波動を感じる」

「本当?」

「本当。

 元気みたい」

 アイナがニッと笑って義母さんに言った。

 そして、

「クリスもしばらく暴れないように。

 多分できてるから。

 カリーネもね」

 アイナは今度は残念そうに言った。

「「えっ?」」

 アイナの言葉にクリスとカリーネが目を見開いた。

「赤ちゃんができてると思う。

 プリシラ様のようにはっきりとは感じないけど、小さな波動を感じる。

 だから気をつけてね」

「でも何で、残念そうなのよ?」

 クリスが言う。

「新しい命は私も嬉しい。

 でも、無理だとわかっていても私が一番になりたかった。

 仕方ないのはわかっていても悔しいのは本音」

「そういうことか。

 ごめんね」

「謝らない!

 こんな事で悔しがってる私が情けなくなるから。

 元気な赤ちゃんを産むのがクリスの仕事」

「私もなの?」

 カリーネも驚いている。

「うん、間違いないと思う。

 プリシラ様のお腹から出ているのと同じ波動。

 小さいけどね」

「そう……」

 愛おしむようにカリーネがお腹を撫でる。

「えっ、私の妹か弟?」

 アイナの声が聞こえたのかエリスが飛んできた。

「ええ、そういうことね」

「嬉しい!」

 エリスはカリーネのお腹に耳を当てた。

「まだ鼓動は聞こえないわよ。

 もう少しお腹が大きくなったらお腹を蹴るようになる。

 しばらく先だけどね」

 そしてアイナは俺の方を向くと、

「クリスとカリーネは屋敷でゆっくりさせること!

 夜は抱っこだけ。

 体が落ち着くまではしちゃダメだからね。

 クリスはグータラだから良いとして、カリーネは仕事があるだろうけど必要最小限で。

 クリスはイングリッドの帰国に同行させちゃダメ」

 アイナが仕切る。

「えっ、ああわかった。

 にしても、よく知ってるな」

「聖女補正なんだと思う。

 何となくだけどわかるの」


 男だからわから実感が無いのか……。

 まだ膨らんでないクリスとカリーネのお腹のせいなのか。

 そりゃできる事をしたわけだからできるのは当たり前。

 我が子ができる。

 ただ、唖然として驚くしかなかった。


 そう言ってる傍で、

「私グータラかしら?」

「多分、そうだと思うわよ」

 という、自分への比喩に疑問を持つクリスとその比喩を肯定するカリーネの会話が聞こえた。



 ちょっと離れたところで放置されていた義父さん。

「儂の……儂の子が……うぉーーーーー!」

 と叫び涙を流しながら喜びを爆発させていた。

「しっかりしてください、今からが大変です。

 私の政務の補佐をしてもらう必要があります」

 義母さんが嬉しそうに言う。

 こんなに喜ぶと思っていなかったのだろうか?

「おっ、おう……」

「だから、しばらくクロエさんを借りますよ。

 私の補佐をしてもらいます」

「ああ、わかった。

 クロエを使ってくれ」

 そう言うと、義母さんはクロエのところに行く。

 それにテロフが従っていた。


 統治の話をしているのかもしれない。


 義父さんは俺の横に来ると、

「儂は何をすればいいのだ?」

 と小声で聞いてきた。

「俺が知るはずがないでしょう?

 俺も初めてなんです」

「それもそうか。

 すまん」

「まあ、とりあえず先ほどのように喜んでおけばいいのではないでしょうか?

 それに、初産ではないカリーネも居ます。

 聖女補正のあるアイナも。

 こういうことは女性陣に任せて、言われた事をしていればいいと思います。

 余計なことを言っても怒られるのがオチです。

 あとは、食べられるものを食べてもらって、軽く運動をして、太り過ぎないようにしてもらえばいいんじゃないでしょうか?」


 妊娠中毒もあるしねぇ。

 その辺は、アイナが何とかしてくれると思うが……。


「お前も良く知ってるな」

「前の世界では普通の知識です。

 それに、この知識よりもこの世界に合った知識を女性陣は持っているはずです」

「要は『あまり口を出すな』ということだな」

「そういうことです……」

「男は役に立たんな」

「ええ、こういう時、男は役には立ちません」

 二人で顔を見合わせ苦笑いをするのだった。


読んでいただきありがとうございました。

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