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第134話 現場合わせ

 ロルフさんの所からプラウを受け取ると、二頭のオスと三頭のメスのフォレストカウを連れ、俺とアラン、そしてマイノスさんとともに三日月島に入った。

 マイノスさんが扉を見て驚いていたが『魔道具だ』と言ったら納得していた。


 それで納得されるレベルになってしまったか……。



「蒸し暑いですね」

 マイノスさんが言う。

「ああ、ここは南の島だからなぁ」

「だったら、こんな感じのほうがいいですね」

 アランはハーフパンツにタンクトップという軽装になった。

「お前、よくそんなものを準備していたな」

「俺は売られたとはいえ農家の息子ですよ?

 仕事をしていると体が暑くなりますから、準備していたんです」

 肩口に赤いユニコーンの隷属の紋章が覗く。

「私は、上着を脱ぎましょう。

 それにしてもマサヨシさんは暑くないのですか?」

 マイノスさんが聞く。

「ああ、俺の場合は精霊の加護であまり暑さ寒さを感じないんだ」

「羨ましい事です」

 マイノスさんが手拭いで汗を拭いている。

「それでマサヨシ様、私はどのような事をすればいいのですか?」

 俺は収納カバンからプラウを出すと、

「これを、このフォレストカウが引けるようにして欲しいんだ。

 これは元々奴隷が引くものと言っていた。

 奴隷よりも力があるフォレストカウに引かせてみたいんだ」

「そうですか……」

 そう言うと、フォレストカウに近づき採寸を始める。

 持ってきた革で簡単な装具のような物を作ると、プラウを引っかけた。

「ウン……、これならいけるかな。

 この革はオークキングのものの残りです。

 ですから耐久性は高いので、問題ないでしょう。

 仮にこれでやってもらえますか?」

 ラルフがプラウを付けたフォレストカウのオス一頭に声をかけると、ゆっくりと進み始めた。

 畑の中に入り、犂の部分が刺さると大きく土を起こし始めた。

 鍬なんて目じゃない位に起こされる土。

 一辺百メートルを往復して帰ってくると、

「マサヨシ様、これは楽ですよ。

 このフォレストカウもマサヨシ様に隷属化されてるから、凄い力です」

 ニコニコのラルフ。


 一鍬一鍬、畑の土を起こす時代が終わって、魔物を使う時代が来たわけか。

 馬で引くって手もあるのだろうが、馬は結構高いからなぁ。

 こういうことができるのも、俺の利点なんだろうな。


「でも、この力に革が耐えられるか……」

「革は大丈夫だと思います。

 ただ、装具はもう少し使いやすくした方がいいかもしれませんね。

 採寸もしましたので、私も鞍を改良してまた今度お持ちします」

 マイノスさんが言った。


 もう一頭のフォレストカウにも装具を作ってくれたマイノスさんを屋敷に返し、俺とアランは畑を耕し始めた。

 新しい労働力とその威力を目の当たりにした村人たちは、俺たちを見て驚いていいる。


「あの男の子誰?」

「あの大きな魔物を扱うって……凄い」

 という黄色い声援がアランに届く。


 現在の服装のせいか……こいつ、農業が似合う。

 プラウの扱いも上手い。

 アランも声援に手を振っていた。

 俺は、黙々とフォレストカウを進める。


 何か悔しい。


 おっと、俺のところにも声が……。

「マサヨシ様それは?」


 あーベイトさんの声か…。

 黄色くない声。


「ああ、プラウという道具だ。

 畑を起こすのに使ってもらえばいい。

 牛の世話とプラウの扱い方を教えるのに、このアランを置いていく。

 どこか空き家や空き部屋があったら住まわせてやってもらえないだろうか。

 メスは、乳が出るので、これを飲めば栄養補給にもなる。

 その辺はアランが知っている」

「俺、プラウの扱いなんて初めてですよ?」

「それは、まあ、扱いながら教えればいいだろう?

 実際に扱えているわけだし、お前自身、このプラウとフォレストカウのコンビが農作業を楽にすると感じているだろうに?」

「それは……まあ……」


 わかっているらしい。


「アランには言っておくが、この畑で作る物はサトウキビ、スリ。

 そして、更には塩を作る予定だ。

 多分マットソン子爵の資金を潤沢にしてくれる可能性がある。

 お前は作業についていろいろ考え、皆が楽になるような方法を考えて欲しい

 そのために必要な費用は報告してもらえれば準備する」

 ちょっと真剣にアランに話しかけると、

「わかりました」

 と、アランは大きくうなずいていた。

 オウルの屋敷の庭と繋いだ転移の扉を作る。

 ベイトさんとアランが使用できるように登録した。


 結局のところ、アランはフォレストカウたちとともにベイトさんの家に間借りすることになった。

「アランさんって言うんだ。

 あの凄い道具を扱っていた人でしょ?」

 プラウを試していた時、村長の娘が居たようで、積極的に声を掛けられていた。

 アランは耐性が無いらしく、あたふたしている。

 しかし、そんな二人を見ているベイトさんはニコニコしていた。


 若い二人がくっつくのが良いと思ったのか、俺と近しい者が村に入るというのを好ましいとおもったのか……。

 んー勘ぐり過ぎかね……。


 一週間後、三日月島になみなみと水をたたえる田んぼが四枚、苗を作ってから植えるなどは知識的に無理……籾をばらまいた。

 そして、それにサトウキビを苗代わりに切って植えたサトウキビ畑が四枚。


「白砂糖ってどうやったらいいんだろ」っていうぐらいの見切り発進だが、汁を絞って水分を蒸発させれば最悪黒砂糖はできる。

 何とかなるでしょう……。


読んでいただきありがとうございました。

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