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第132話 住人を確保しよう。

 三日月島……俺が開拓した島、俺が勝手に言っているだけ、いまだに住人無し。

 草引きとかの管理は、俺とマナで何とかなっているが、やはり住人は欲しい。

 建物もないのは少し寂しい。

 何とかしないとな……。


「マサヨシよ、マティアス王から反乱の鎮圧を依頼された。

 かのバロー子爵の領内の村の一つらしい」

 と、義父さんが言ってきた。

「原因は何なのですか?」

「税率だろうな。

 バロー子爵家の税率は七割。

 ちなみに儂のところは四割な。

 世代交代で少々は変わると思っておったところに、一割増の七割と言うたせいで、農民たちの離散と反乱が起こった」


 まあ、日本でもそれぐらいの税率だったこともあるはず。

 とはいえ、しんどいのも事実なのだろう。


「何で俺が?」

「王には反乱を鎮めろと言われたからな。

 潰せとは言われていない」

「血を流す必要がないと言う事でしょうか?」

「そうだろうな」

「ちなみに、三日月島のことは王も知っておる。

 一応、マティアス家の領土として認めてもらったぞ。

 ただ、住む者もいないとも報告をしてある」

 義父さんが笑った。

「ちなみに、反乱を起こした農民はどうなるので」

「基本は死刑だ」

「つまりは、その村の者たちを全て殺したことにして、島に住まわせろと?」

「そういう事だな。

 そして、領民を管理できないバロー子爵家は潰れる」

「お膳立てはできているわけですね」

 義父さんはニヤリと笑った。


 俺はリードラとともに空からバロー子爵の領内へ飛んだ。

 山の間の細い道が広がったところに村はあった。

 広がる手前に関があり、そこには数人の村人。

 剣を持つ。

 村の周りには堀があり、その中に柵。

 櫓があって弓を持ち警戒する者も居た。

 こりゃ、攻め辛そうだ。


 さすがに上空は無警戒だった。

 俺はその村の広場に直接舞い降りる。

 いきなり現れた純白のドラゴンと、白いローブに黒服の男。

 警戒する村人。

 子供たちを下げる女たち。


 あー、まともな装備がないじゃん。


 前に出てきてフォークやスコップで俺とリードラを囲む男たちが居た。


 剣を持ってるやつらは兵士の者を分捕ったのかね?


 汚い服に垢まみれの顔。

 歯なんか黄色いし……。


「いきなりで悪いんだが、この村の村長と言うか、リーダー的な人が居れば出てきて欲しいんだけど」

 ドラゴンの姿で甘えるリードラの頭を撫でながら俺は言った。

 ドラゴンを撫でる男ということで、すでにバケモノ認定されたのか、何人かの男がどこかに行く。


 その辺の人を連れてきてもらえると助かるんだがねぇ


 しばらくすると、少し白髪が出始めたような初老の男が現れた。

 腰には剣を帯びている。

「儂がこの村の村長をしておるベイトという。

 あんたがこのドラゴンの(ぬし)か」

「そういうことになるかな。

 俺はマサヨシ。

 一応貴族で、ドラゴンに乗っている。

 そんな俺がここに来た理由は何となくわかるでしょう?」

「わかる。

 反乱の鎮圧だな?

 我が村は地形の良さから、バロー子爵の騎士団を退けておった。

 しかし、ドラゴンとともに上空から来るとはおもわなんだ。

 ドラゴンなど、我らで勝てる筋合いはない。

 ベイトさんは苦い顔をしていった。

 そして、

「では、我らを殺すのか?」

 と、聞いてくる。

「そこで、一つ提案なんだが、バロー子爵の領土から逃げる気はない?」

「逃げようにもあの道からの敵を守るのはできてもあの道から出るのは難しい」

 山に挟まれた細い道を指差してベイトさんは言った。

「ここから逃げ出して自分らが暮らせるような土地があれば、暮らすかって事。

 ただ、育てる物も気候も食べ物も全然違うことになる」

「だから、守りには硬くとも攻めるのは難しい地形だと……」


 通じないなぁ……。

 詳細を言っていない俺も悪いか。

 俺は扉を出すと、三日月島へ繋いだ。

 そして扉を開ける。

「こんな感じの島なんだが、土地を作ったものの住人が居なくてな。

 作りたい作物もいくつかあって、手伝ってくれると助かるんだ。

 この島はマットソン子爵の管轄になる。

 だから、生産した物の四割は税金として取ることになる。

 それでよければと言うことになるが……」


 話を聞いてる?


 ベイトさんは唖然と三日月島に広がる土地を見ていた。

「あっ、これね、俺専用の魔道具。

 一度行ったことがある場所ならその場所に行ける扉。

 えーっと移住してもらえるのならば、作物ができるまでの食料はこちらが出す。

 食べるに不自由なものもあるので、こちらで買い取る形になるとは思うが、どうだろう?」

「本来は私たちに待つのは死だけなのでしょうな」

「まあ、一度反乱を起こしてしまえば、そうなるだろう。

 この村を許してしまえば、他の村も許さなければならなくなる。

 最終的にはバロー子爵のほうは処罰されるだろうが、だからと言って、その過程で起こされた反乱を許すとも思えない」

「そうですか……。

 向こうでは何を作ればいいのですか?」

「そうだなあ、サトウキビとリス(米)、かな?

 後は、塩だ」

「サトウキビとは?」

「砂糖の原料となるキビだな」

「リスとは?」

「穀物だね。

 小麦みたいなもの。

 すべてうまく作ってもらえれば、それなりの収入になるだろう。

 どうだろうか?」

「村の皆と話をさせてください」

「ああ、任せる」

 俺はリードラの腹で寝ころんだ。


「人とは面倒だのう」

「そりゃ面倒だよ。

 人は個と個を繋ぎ社会を作る。

 その区切りの一つが村。

 全体が納得できないと、動くことすら難しいだろうな」

(われ)は出番待ちじゃのう」

「俺も出番待ち、だからリードラにもたれて昼寝」

(われ)も寝るかの」

 俺とリードラは目を閉じるのだった。


「マサヨシ殿」

 ベイトさんの声で目を覚ます。

「決まりましたか?」

「大筋であの島に行く事は決まりましたが、あの島には住む場所がありません。

 どうするおつもりで?」

「ああ……」

 俺はそう言うと、一軒の家に近づく。

「こうするんです」

 そう言うと収納カバンに仕舞った。

 家が無くなったことに焦る住人。

 再び家を置く。

「まあ、こんな感じです」

「あっ、ああ、無理やりですね」

 呆れ顔のベイトさん。

「気候的にこの地域の家が合っていないかもしれませんが、とりあえず夜露をしのぐ場所はできます。

 おいおい、気候に合った家を作っていけばいいと思います。

 それに、住み慣れた家のほうがいいでしょう?」

「この村はどうなるのです?」

「引越しを終えた後この村はこのドラゴンに焼き払ってもらいます。

 そして、焼き払って焼き尽くしたと報告します」

「結局、皆が生き残るには選択肢は一つしかないと言う事ですね」

 ベイトさんが俯く。

「『生き残るには』という条件を外せばいくらでもありますよ。

 私はあなた達が死ぬしかないという現在の選択肢の中に生き残る選択肢を一つ増やしたまでです。

 それは、私の利になるから。

 正直、人が死ぬのを見たくないですしね」

「ずるいですね」

 ベイトさんが俺を睨む。

「はい、俺はずるいです。

 あなた達の弱みに付け込んでいます。

 ただし、私の条件に乗ってもらったからにはあなた達は守る。

 バロー子爵から何を言われても守り切る。

 まあ、あの島の場所を知っている者は王と我が家の者ぐらいなんですけどね」


 この世界の戸籍はあいまいだ。

 どこそこの村のだれだれ程度。

 リードラのブレスに焼き尽くされて死んだということになれば追われることもないだろう。


 ふうとため息をつき、

「わかりました」

 ベイトさんがそう言うと、

「皆の者。

 あの島へ引越しをする。

 荷物をまとめるのだ!」

 と声をかけた。

「いやいや、荷物はまとめなくていいです」


 そこから俺は家の取り込み、再配置を始める。

 元の通り村長の家を中央に置き、住人たちの家を大体元の配置で置いた。

「これで終わり」

「あり得ない早さなのですが……」

 ベイトさんが驚いていた。

「時間もあまりないですし、急がせてもらいました。

 水場は、あの石のところです。

 まあ、この辺の水路に流れている水は真水ですから飲んでも問題はありません。

 ただ上流で何かする場合は、あの石のところで水をくむことをお勧めします」

「わかりました」

「それでは、あの村の処理をしてきます」

「私たちも行っていいですか?

 故郷の見納めになるので……」

 扉を再び出すと村人たちは元の村へ戻る。

 そしてリードラがブレスですべてを焼き払った。

 残っていたすべてに炎が回る。

 それを見て村人たちは泣いていた。


 領民が増えると言う事は責任が増えること……。

 この村人たちを守らないとなぁ……。


 後日、ドラゴンライダーが反乱を起こした一つの村を焼き払ったという噂が立った。

 その炎は遠くからでも赤い炎が見えたと言う事だ。


 結果を執務室の父さんに報告する。

「そこで、サトウキビとリス、そして塩を生産するわけだな」

「ええ、塩はすぐにでも可能かと思います。

 サトウキビにしろリスにしろ、ペパーにしろ土を起こす必要があると思いますので、村に耕作する能力があるかどうかを確認して、補強が必要なら手を加えないといけないと思います。

 私が耕してもいいですが、それでは私が居ないと何もできないことになってしまいますから……」

「そうだな。

 まあ、何にしろあの島が我が家に収入をもたらすように努力することだ」

「心します」

 俺は執務室を出るのだった。


 さて、この世界の農機具ってどの程度なんだろう。

 魔法で解決できるから発達していなかったりして……。


読んでいただきありがとうございます。

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