第130話 味噌づくりからの……期待。
短いので二話投稿です。
当然この世界に味噌樽などない。
調理場に行って、
「フィナ、どっか酒樽を売ってるようなところはないかね?」
と聞いてみた。
「んーそうですねぇ。
新しいものがいいのですか?」
「いや、古くてもいい。
頑丈であればね」
ふと閃いたのか、
「マサヨシ様、樽買いして空いたワインの樽がありますが、それを使いますか?」
フィナが言う。
「おお、いいねぇ。
それでいこう」
調理場の奥に一抱えぐらいありそうな大きな樽があった。
「俺、ワインなんて食事の時にちょろっと飲むぐらいなんだけど。
義父さんもあまり飲まないし」
「それはっ……。
この屋敷に居る私も含めた成人女性が……夜な夜な飲みますから」
言いづらそうにフィナが言う。
「発起人はクリスあたりか……」
「まあ、大体はクリス様で、たまにカリーネ様でしょうか?
マサヨシ様のことを話しています。
イングリッド様もたまに来るのですよ。
最近の話題は……ダンジョンの攻略が終わった後、寝所であったこととか……」
フィナが真っ赤だ。
あいつら……。
そんな話を共有する必要もあるまい。
「まあいい。
みんなの仲がいいのならな」
「すみません」
なぜかフィナが謝る。
「じゃあ、この樽貰っていくぞ」
こうして、味噌樽を手に入れた。
一応魔法で加熱殺菌しておく。
さて、俺の爺さんの家では手作りで味噌を作っていた。
大豆をよく洗い一日水に浸けておく。
大豆を煮込んだあと水を切って冷やし、ミンサーと言う肉をミンチにする道具で大豆をミンチ状にしてそれに塩きり麹と言う塩を混ぜた麹をまぶしていた。
しかし、ミンサーなんて便利な道具は無い。
と言う事で、レッドユニコーンのメンバー集合。
「何をするのだ?」
「どうするの?」
「何なの?」
「旦那様、何でしょうか?」
女性陣から疑問の声。
「味噌づくりの手伝いをして欲しい」
「何をすればいいの?」
クリスが聞いてきた。
既に煮た大豆は準備してあるので、
「この大豆の山を握りつぶせばいい」
と、大豆を掴みした後、ギュッと握り指の間から潰れた豆を出す。
「こうかの?」
リードラがやると、カッチカチの大豆の塊ができた。
「いやいや、指の隙間からはみ出すように……こうな」
再び大豆を握りつぶし、実践する。
「こうだね」
「こうですね」
アイナとマールはすぐに覚えた。
クリスは……勢いよくやりすぎたのか、薄黄色い大豆の塊が顔に飛び散る。
んー、エロいな。
「我がドラゴンに戻り、一度にやったほうが早くないか?」
リードラが聞いてきたが、
「少しづつやったほうが確実なの。
力加減を間違えれば『あれ』だぞ」
「確かに、あれは嫌だのう。
主にはそんな趣味はないようだが、あれはあれで良くない」
リードラが頷く。
「『あれ』で会話しないでよ!
私だって嫌なんだから」
何度か失敗してコツを掴んだクリスだったが、顔と髪についたペースト状の物があまりよろしくない
拭けばいいのに拭かない。
クリスは、
「洗うほうがよく取れる。
だから、お風呂までおいておくの」
と言っていた。
大豆を潰し終わり、大豆の量に合わせた塩切り麹を混ぜる。
これも手でぐにゅぐにゅと混ぜた。
混ぜ終わると、丸めて蓋をとったワイン樽に投げつけるように入れていく。
八分目ほどまで入ると、その上に羊皮紙を敷き、その上から程々の大きさの洗った石を置いた、
後はできるのを待つだけか。
「ありがとう、後は時間待ちだね」
さて、一年後が楽しみだ。
味噌たまり醤油もできるといいなぁ。
そんな事を考えながら俺は倉庫にワイン樽を仕舞った。
こののち、しばらくして匂いが問題になり、味噌の入ったワイン樽は庭の隅にストックハウス程度の石壁の倉庫を作り、その中に置くことになる。
読んでいただきありがとうございます。