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第127話 にがりと無人島

 調理場には入らない穀物を適当に倉庫へ入れる。

 一部の大豆を持ってくると、俺は水に浸けた。

「何を作られるのですか?」

「豆腐って奴だよ。

 できるかどうかはわからないけどね」


 にがりが無いから岩塩の塩水でいけるのかね?

 最悪豆乳で終わりかなぁ……。

 だったら豆乳鍋かね……。


 俺はフィナの頭を撫でながら考えていた。

 くすぐったそうなフィナ。


 木の板を探し出して、高圧水流を使って切る。

 当然ほぞ加工。

 組み合わせて、そのサイズに合った底蓋と押し蓋を作った。

 ちなみに、水が抜ける穴も少々開けておく。

 つまり、豆腐の枠。


 これで豆腐が作れるといいんだけどねえ……。



 次の日の朝、水に浸けた大豆がパンパンになっていた。

 不思議そうにそれを見るフィナ。

「これをどうなさるので?」

「ん?これをすりつぶすんだ」

 そう言うと

 蕎麦の時に使った石臼を出した。

 そして、水にふやかした大豆をすりつぶす。

 おから交じりの豆乳出現。

「牛乳のようなものが……」

「これが豆乳って言うんだ。

 豆の乳……そのままだろ?」

「でも、細かい塊が……」

「これは布に入れて濾して使うんだ」


 俺は鍋にとってこれを沸騰させる。

 これを布で濾しておからと分けて……。

 あれ?視線を感じる。

「そっそれを飲むと、むっ胸が大きくなるのですよね?」

 フィナのどきどきが止まらないようだ。

「ああ、そう言われている。

 健康にもいいらしいぞ?」

「少し飲ませてもらっても……」

 俺はコップに豆乳を入れて渡す。

「ちょっと粉っぽいですね」

 そう言いながらフィナが豆乳を飲むさまを見ていた。


 岩塩を溶かした塩水を入れてと……。

 塩化マグネシウムが混じってればいいんだが……


 しばらくすると、豆乳が固化を始める。


 おっと、固化したね。

 後は型に入れて、軽く重しをしておくかな。


 ちょっと緩いが形にはなった。


 後は型から抜いて、水の中に入れて……。


 一部切り取って皿に置いた。


 んー醤油が無い。

 とりあえず何も無しで……。

 目標の一つだね。


 パクリと食べると、口の中に大豆の甘さが広がった。

 多分ニッコリしていたのだろう。

「美味しいですか?」

 フィナが興味津々である。

「食べてみたらいい。

 大豆の味が濃いぞ」

 フィナがスプーンで掬ってぱくりと食べる。

「あっ、本当です。

 大豆の甘味が……。

 これなら、薬味を載せて、ちょっと香味油を垂らして、塩を振っても美味しそうですね。

 豆腐というもの単体の味は濃くありませんから、スープに入れてもいいかもしれません。

 でも、水分が多いから、スープは濃いめのほうがいいかな」

 フィナが「豆腐」という食材の分析をする。


 言っているのは、まんま冷奴。


「他にも湯豆腐なんかが美味いな」

「湯豆腐とは?」

「そうだなぁ、食材が揃ったらやってみるか」


 せめて昆布出汁が欲しい。

 海藻系も探してみるか。


「はい、楽しみにしてますね」

 フィナが目を細めて言った。



 後日……

 少し春めいてきている。


 あのあと何度か豆腐を作ってはみたが、少し緩い、やはり「にがり」のほうがいいのだろうか。


 悩む俺が居た。


 海水でも良かったはずだが……。

 海水と言えば海……。

 そういや、海が見たいな。


 最初は「にがりが欲しい」だったものが「海が見たい」に変わった。

 ふと横を見ると、リードラが居る。

「どこか行きたいのかの?」

 俺の心を読んだようにリードラが聞いてきた。

「ん、海が見たい。

 この世界にも海は有るんだろ?」

(われ)も見たことは無いな。

 ただ、この国にはないと聞く。

 遠いぞ?」


 この国は海に面していないそうな……。


「リードラならすぐだろ?」

「だな。

 (ぬし)よ行くか?」

「ああ」

 俺は調理場に行って大鍋を収納カバンに入れると扉を出し、オウルの外へ行く。

 ドラゴンの姿に戻ったリードラが地に伏せていたので、俺はその背に乗った。

 そして空に舞う。

「さて、どっちへ向かう?」

「そうだな、南へ行こうか。

 暖かそうだ」

 俺とリードラは南へ飛んだ。


 リードラが羽を畳み加速すると音速を越えドンという音がする。

 低空で飛ぶと森が裂けた。

 衝撃波で木々が吹き飛ぶ。


 こりゃ、風防魔法してなきゃ摩擦で燃えるかも。

 マッハ1なら、時速1224キロ。

 大阪から沖縄まで約一時間ぐらい。


 メタルなGの時計で一時間強を南に飛ぶころには、亜熱帯の雰囲気溢れる場所を飛んでいた。


 人が居そうな大陸から離れた三日月のような無人島らしきものを見つける。

 結構大きな島。

 火山なのか煙を吹く山もある。

 三日月の島はサンゴ礁で繋がり、中には穏やかな内海が広がっていた。

「ちょっと降りてみようか」

「心得た」

 と、俺とリードラはそこに降りる。


 レーダーで確認して見ると、人が居ないのがわかる。

 魔物は……無数の小さな光点に大きな一個の光点があった。

「リードラは来たことある?」

「知らぬな」


 ふむ……。


 島内を探索する俺とリードラ。

「虫は居ないんだな」

「虫が居ると何かあるのか?」

 リードラが聞く。

「伝染病とかに気をつけないといけなくなる。

 マラリアみたいな病気とかあったら面倒だからね」

「マラリア?」

「蚊と言う小さな虫が媒介する病気。

 まあ、もしかが居たとしても俺とリードラのVITなら大丈夫でしょう」


 針が刺さらないからね……。


 背丈ほどもある草の中を歩きまわった。

「意外と広いな……海はどこかね」

 三日月の島を表示させながら、内海を目指した。

「飛べば良かったのう」

 リードラの言葉を聞きながら歩いていると見たことがある物を見つけた。


 サトウキビだ。

 沖縄で売ってたよな……これ。

 自生している?


 適当なナイフで切り取って染み出す汁を舐めると、若干の青臭さと共に甘味が広がった。


 ってことは、砂糖が取れる?

 黒砂糖から白砂糖を作るのは難しいが、やってみて損はない。

 ほとんど甘味の無い世界だからね。



 その後、鬱蒼とした熱帯植物の中を歩き続けると急に目の前に白い砂浜が広がった。

「おぉ、海だねぇ。

 プライベートビーチだ」

「プライベートビーチ?」

「そう、今は俺とリードラだけの浜」

「それでは、これは要らぬな」

 そう言うと、白いローブがなくなった。

 たわわな胸といろんなものが見える。

 

 ありゃりゃ……ヌーディストビーチのつもりじゃないんだがなぁ……。


 ちと恥ずかしい俺は木陰にスーツを畳み、トランクス一丁で海に入る。

 要は逃げたのだ。

 一応「デカい魔物の光点をチェックするため」という理由もある。

 泳げないのかリードラは追って来なかった。


 前の体形なら、まんまゴ〇クとか言えそうだ。

 今なら……何だ?

 アクア〇ム。


 俺はウォータージェット推進をイメージして、海の中を飛ぶ。

 水中メガネはないが、まあ、何とかなる。

 息は……無理だった。

 息継ぎで顔を出す。

 再び潜ると、透明度の高い海水のお陰で魚の魔物の中にデカいイカが見えた。


 イカ?

 イカ焼き?

 醤油、タレ……。

 おぉ、旨そう。


 俺は一度戻ると、爆雷をイメージして魔法を使った。

 クラーケンに触れると、爆発する設定。

 数は三つ。

「ズン! ズン! ズズーン!」

 少し時間をずらして三つの水柱があがる。

 水が濁り十メートルは有ろうかと言うイカに大きな穴が開いて浮かび上がってきた。

(ぬし)よ、何をやった!」

 驚いたリードラが全裸で走ってくる。


 んー、確かにたゆんたゆんする胸を見るのは眼福だからいい。

 でも、ちょっと恥じらう所をちょっと強引に脱がしたりするのも必要じゃない?

 解放的過ぎる……。


「リードラ、ローブを着ろ。

 男ってのは、チラリズムが必要なんだ」

「チラリズム?」

「チラチラ見えることにちょっとした妄想が広がる。

 リードラはその素晴らしい体を見せつけてくるが、それがいつもいいとは限らない」

 苦笑いしながら俺が言うと、

「わかったのだ。

 (ぬし)の趣味がそうなら仕方ない」

 と言ってローブを着た。


 ん?

 ローブが短い。

 膝上二十センチ?

 確かに大事なところがチラチラ見える。

 チラリズムのつもり?


「で、何をしておった?

 そこに浮いておる魔物は何だ?」

「あれは、イカって言う海の魔物だな。

 海の中に居る魔物に海の中で使える魔法を使って攻撃して倒したわけだ。

 あれは刺身でも美味いし、焼いても美味い。

 んー醤油が欲しいな」


 しかし、これで、塩が得られる。

 黒砂糖も確定。

 大豆、小麦、塩があれば醤油もできる。

 砂糖があればタレも?

 砂糖があれば菓子のレベルが上がるかな。

 広がるねぇ。


 イカを収納カバンに入れ、レーダーで魔物を標示させた。


 大きな魔物無し、人無し確認ヨシ。

 

 ビーチチェアとビーチパラソルが欲しいね。

 この辺開拓しちゃおうか。

 しかし、爆雷の魔法のせいで海が少し濁ったな。


 白い砂浜を見ながら考えていると、しばらく放置していたことが気に入らなかったのかリードラに砂浜に押し倒された。

「ん?

 どうした?」

「こんな所で二人なのだ。

 いいであろう?

 何か事情があって待たねばならんようだしの」


 その通り、水が澄むのを待っている。


 リードラが舌なめずりした。

「せめて日陰でしない?」

「い・や・だ。

 すぐにしたいのだ」

 リードラのローブが消え再び裸が現れる。

「ふう……」

 一つため息をつくと、

「仕方ないね」

 そう呟いたあと、まあ……いろいろした。

 普通、砂浜の上と言うのは痛いのかもしれないが、補正のせいか痛くなかった。


 事が終わると、爆雷やイカの成分で濁っていた海水が落ち着き綺麗に……。

 その海水を大鍋に汲み収納カバンに入れる。


 本来の目的は海水(これ)だったんだがなぁ。


 海水を汲んだ後、海に入り体を洗うリードラを見ながら頭を掻く俺が居た。



読んでいただきありがとうございます。

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