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第126話 大豆と米と。

 そろそろ和食も楽しみたい。

 若干現実逃避。

 準備をしましょかね。


 俺は顔をパンと叩き、コタツから這い出た。


 米と大豆、あるかなぁ……。

 おっと、表示された。

 こっちに行けばある訳ね……。



「フィナ、暇か?」

「ええ、暇です」

「俺も暇だ……。

 でさ、デートに行かない?」

「デート?」

 フィナの尻尾がブンブン振れる。

「……と言う名の買い物だが行くか?」

「どこへですか?」

「んー、俺の欲しいものがある場所」

「はい!」

 フィナは俺を見上げて笑う。


 フランの時に使った荷馬車を歩かせながら市場で米と大豆を探す。

 一応隷属化したので、馬力もアップしていた。

「大豆は結構あるんだよねぇ。

 義父さんも言っていたし。

 フィナ、知ってるか?

 大豆で作った乳も胸を大きくするんだぞ」

「大豆を使った乳ですか?」

「ああ、イソフラボンなる成分が乳を大きくするという」

 牛乳のせいか成長のせいかわからないが、少し大きくなった胸を押さえながらフィナが

「でしたら、ぜひ買いましょう」

 ウンウンと頷いていた。


 米を扱っている店は王都の中に一店しかなかった。

 いつも向かっているロルフ商会とは反対方向。

 俗にいう貧民街だった。

「マサヨシ様、こっちは……」

「ああ、貧民街という奴だな、フィナ、危ない所に行くかもしれないがいいか?」

「守っていただけるのでしょ?」

 フィナがニコッと笑って見上げる。

「当然。

 ついでにマナに出てもらおう。

 お菓子ができなくなれば困るだろ?」 

「当然、言われなくても……」

 スッとマナは現れた。

「今、私が(ぬし)の下に居る理由は契約もあるが、あのお昼のおやつ……。

 あれが無い生活なんて考えられない」

「と言うことらしい」

 マナはフィナの前では実体化する。

「ありがとね、マナ。

 また何か作るからお願い」

 フィナがそう言うと、マナがにっこりと笑った。


 馬車を進ませて米のある光点の場所を目指す。

 すると、汚い店だが多くの穀物を置く店を見つけた。

 麻袋の口が開き見たことのある物が置かれていた。

 馬車を止めると、


 おっと、懐かしい。

 籾だね。

 籾摺りと精米かぁ……。

 ちょっと面倒かな?

 ん?

 大豆もあるね。

 物は……わからん。

 でもこれで味噌に醤油、日本酒にみりん、一気に日本食に近づくな。

 麹が要るけどね


 ああ……豆腐にTKG(卵かけごはん)もいいねぇ。

 魚の干物もいいなあ

 そう言えば、干物って無いのかね……。


 勝手な妄想をしていたようだ。

「マサヨシ様?

 どうなさったのですか?」

 と、不思議そうにフィナが言った。

「ん?ああ、俺の欲しいもの……あれだよ」

「何ですかアレ?

 私も見たことがありません」

 不思議そうにフィナは俺を見た。

「この世界ではどうなんだろうな、向こうでは『(コメ)』って言った。

 俺としては美味い物だとは思う。

 ただ、うまい状態に持っていけるかは不安だな……」

「でも食べたいんでしょう?」

「ああ、できれば食べたいな」

「あんたら、その穀物に興味があるのかい?」

 店の奥から爺さんが現れる。

「俺はゼムって言うんだ。

 この店の店主って奴だな」

「俺は見たことが無い穀物を探していて、ここにあると聞いてきました」

 俺は嘘を言った。

「そうかい、確かにこの国では珍しいだろうな。

 ドワーフの国ではこのリスを育てる所がある。

 温暖な気候で水が多く使える場所。

 バカな誰かが買ったんだろうな。

 この王都で麦以外に売れるはずがないのに」

「ああ、目先の欲で仕入れたが売れなかったって訳か。

 そして、そういう穀物を買って、売っているのがあなたなんだな?」

「兄さん、頭がいいな。

 そういうこと、食べ方も知らないような穀物を仕入れる商人も居る。

 結局在庫が余ってしまって困ってる男たちから俺が買う。

 これがいい商売になるんだからな。

 お前らのような奇特な奴も居る。

『穀物』って言うだけで貧乏人に売れるっていうのもあるしな。

 売値も破格だから手を出す者も居る」

 ニヤニヤしながらゼムと言うジジイが言った。

「この、リスって言うものを全てもらいたい。

 いくらになる?」

 俺を値踏みすると、

「金貨三枚」

 と爺さんは言う。


 爺さんは俺の懐がインフレーションしているのを知らない訳で……。


「いいよ、買った」

「えっ、買値の十倍だぞ?」

 ジジイが言う。

「ええ、私はそれでも十分買う価値があると思う」


 俺は米が欲しいのだぁ!


 と叫んでしまいそうなのを抑え込んだ。

「それじゃ、これで」

 俺は金貨三枚を払い、荷馬車に五つの袋を積み込む。


 うし、米ゲット。

 籾は面倒だが、上手くすれば生産が可能になる。

 水路が必要だろうが田を作ることができればな。


「じいさん、このリスって言うのはどこで採れるんだい?」

「確か、バストレスク王国。

 南の方の国だね。

 今は国交はない。

 正直言うと、そのリスは数年前の物だ。

 食べられるかどうかさえもわからない」

 苦笑いしながら言う。

 サラサラと乾燥したもみを触りながら、

「籾なら問題ない」

 俺は言った。

 続いて大豆を買う。

 フィナの目でも「悪くはない」物らしいので気にしなかった。


 米と大豆を手に入れて、ニコニコしながら馬車に乗る俺を見て、

「楽しそうですね」

 とフィナもニコニコしながら隣に乗っていた?

 そして、俺にもたれてくる。

「いいですか?」

 と、フィナの事後報告。

「ん?

 どうした?

 疲れたか?」

「いいえ、凄く楽しくて……。

 だって、今二人っきりでお買い物ですから。

 だから、甘えさせてもらっていいですか?」


 確かに屋敷以外で二人っきりってのは少なかったような気がする。

 主に買い物のとき。


「いいぞ。

 たまたまとはいえ二人っきりだ、好きにすればいい」

 フィナは俺にもたれ体の匂いを嗅ぐ。


 獣人は嗅ぐのが好きなのかね……。

 カリーネも嗅ぐしな……


 俺は満足して、フィナは恍惚として荷馬車でゆっくりと屋敷に帰るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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