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第121話 あれ? 誰か侵入してきました。

 今日はクリスの日。

 しかし疲れているのか今日はそのまま寝ていた。

 鼻を突っついても、ほっぺたを弄っても起きないぐらいだ。

 そんな寝顔を楽しみながら俺も眠気が襲い始めたころ、何かの気配を感じた。

 レーダーに出すと、皆の光点以外にもう一つ。


 場所は……天井裏?

 部屋を確認しては別の部屋に移動している。

 魔物ではないのはわかる。

 ハニービーの警戒を潜り抜けてくる技量。

 相当なものだと思う。


「どうするの?」

 マナが出てくる。

 マナも気付いているようだ。

「まあ、何しに来たかだよね。

 とりあえず、何しているのか見て来よう」

 俺はベッドから出ると、屋根裏部屋への入口へ飛びあがった。


 暗視モードで気配を殺し何かに近づく。


 人型か……。

 曲者?

 アイナ関係?


 曲者の背後まで行くが気付かれない。

「姫様……どちらへいらっしゃるのですか?」

 そう呟いて誰かを探す黒ずくめの男が居た。

 その耳は少し尖っている。


 あっ、クリス系か……。

 ついに来たかな?


 未だに気付かない曲者の横に付くと、

「何か用か?」

 と声をかけた。

「うわぁー!」

 と言って驚く黒ずくめ。

「ああ、残念……私がしたかったのに」

 俺の背後には黒塗りのダークエルフの短剣を持ち、残念そうなマール。

 その後ろには、

「マサヨシ様、やりますな」

 と笑うセバスさんが居た。


 とりあえず縛り上げて応接室に転がす。

 アイナにリードラ、カリーネにエリス、ミランダさんにベルタ、クロエ、アランなど寝ていた者も起きだしてきた。


 唯一起きないのがクリス。

 転がされても睨み付けてくる曲者。


 起こしてくるか……。

 というか起きろよ。


 マールとセバスさんに監視を任せ、俺はクリスを呼んできた。

 クリスを見た瞬間黒づくめが、

「姫様!」

 と、声をあげる。

 姫様と呼ばれたクリスは黒ずくめの顔を見て、

「あら、テロフ」

 クリスはあっけらかんと声をかけた。

「テロフ?」

 俺は聞く。

「私のお父様の影ね」

「影というのは密偵とかをする?」

「そう、たまに暗殺もね」


 怖いことを言う。

 しかし、それを言っていいの?


「姫様!」

 テロフはクリスを止めた。

「言っちゃダメだった?」

 しかし、クリスに聞かれると

「姫様ぁ……」

 テロフは諦め気味に言った。


「それで、テロフ、何をしに来たの?」

「姫様、それを言いますか!」

 テロフの手がフルフルと震えている。

「ずっと連絡もせずに……。

 探れば、フーティーの街で奴隷落ちとわかり、メイナード王がどれほど心配していたか……。

 その後の足取りがわからず、ドロアーテからクリス様の手紙が届いたとき、メイナード王がどれほど喜んでいたか。

 メイナード王の指示でドロアーテで姫様の足取りを探ると、マサヨシという冒険者と一緒になり、マットソン子爵のメルヌの街に一時滞在した後の足取りがわかりません。

 しかし、領民に聞いてもマサヨシという名は出ますが、クリスティーナという名はほとんど出ません。

 ドロアーテの冒険者ギルドで受付に聞いたら、マサヨシという男の婚約者になっているというではありませんか。

 その話の中でオウルにマットソン子爵の館があると聞いて、やってきたのです。

 ダンジョンを攻略してダンジョンマスターを倒したとかも聞きました。

 その辺のことを聞こうとマットソン子爵の屋敷に侵入してきた訳です」

「あっ、そう。

 私の婚約者、マサヨシがこの人ね」

 クリスが俺を指差した。

「この男が?」

 睨み付けるテロフ。


 捕まえたのもあって恨まれてるかなぁ。


「それにしても何で普通に来なかったの?

 わざわざ忍び込む必要が無いでしょう?

 私の知り合いだと言えばいいのに」

「それは、エルフを奴隷として扱っている者は基本性奴隷として奉仕をさせることを目的とします。

 ですから、捕まっている物と思うのが当たり前でしょう」

 クリスは俺を見ると「プッ」と笑った。

「私が性奴隷……。

 元々はそうなる予定だった。

 ドロアーテの商人に送られる途中、ゴブリンに襲われた。

 それを救ってくれたのがこのマサヨシ。

 それに、私から婚約者になったの」

「姫様が?」

「ええ、私がね。

 この人ね、前の奥さんのこと引き摺ってて、私に手を出したのだって最近。

 エルフの美貌をよ?

 私が誘っても『抱き枕ぐらいならなるが……』って言って抱かなかったの。

 それぐらい硬いの。

 それに、やさしいしね」

「それでは、姫様は人間の妻になると?

 エルフは血統を重んじます。

 このままハーフエルフを産むというのですか?

 子供ができても王家は継げませんよ」

「ええ、そのつもりよ。

 王家なんてどうでもいいわ。

 それに、どんな子を産んだとしても、この人は気にしないと思う」

「それを王に報告しても?」

「ええ、親子の縁を切ってもいい。

 あなたもエルフならマサヨシと一緒に居る精霊を見てごらんなさい」

 クリスに言われ、テロフは俺を見た。

 そして驚愕の表情になる。

「完全な人型!」


 精霊は人型に近いほど力を持つらしい。


「ええ、次期精霊女王だと自称しているわ。

 あの精霊もマサヨシの奴隷。

 エルフの中にあんな精霊を持つ者が居る?

 あの男に勝てる?

 お父様でさえ無理」


 話しが長引きそうだったので

「クリス、話を続けるなら、紐をほどくぞ。

 このままじゃ、まともに話もできないだろう?」

「そうね。

 テロフ、マサヨシに手を出さない事。

 わかった?」

 返事は無かったが、俺はテロフの紐を解いた。

 素早い手刀が俺の首を狙うが、その手を俺は掴む。

 掴んだ時にはセバスさんとマールの短刀がテロフの首元に添えられていた。

「ゴクリ」と生唾を飲むテロフ。

「うちにも、いい影は居るんだ」

「マサヨシ様はそれを超える方のようですね」

 俺はテロフに睨みつけられた。

「まあ、それなりにな。

 テロフって言ったっけ?

 さて、どうする?

 正直俺はもう寝たい。

 宿があるのなら、そこに帰ってもらって夜が明けてから改めてこの屋敷に来る。

 それとも部屋をすぐ準備するからそこで寝る?」

「クウ……」

 誰かの腹が鳴る。

 真っ赤なテロフ。

「第三は考えていなかったんだが、軽く食事を……ってところかね」

 俺は少し笑いながら言った。

「あなたご飯食べてないの?

 なんで?

 活動資金貰ってるでしょ?」

「姫様、長すぎます。

 私が国を出て何年姫様のことを探していると思っているんですか!」

俺は、

「フィナ」

と声をかける。

「畏まりました」

 フィナは調理場へ向かう。

 その途中で食堂に灯をつけていた。


 あまり時間がかからずに、フィナの食事が出来上がる。

「あまりものですが……」

 パンとスープが出される。

「えっ、何だこのスープ。

 これが余りもの?

 経費節約で、今まで食べてきたものは何だったんだ!」

 フィナが出してきた物をむさぼり付き涙を流しながらテロフが食べていた。


 結局テロフは屋敷の一室に居付くようになる。

 フィナの食事が美味かったからだそうな。

 さて、こいつどうするつもりかね?




読んでいただきありがとうございます。

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