第114話 ダンジョン攻略完了の報告1(逆ですが)
予約投稿が一日ズレていたようです。
修正して再投稿です。
フィナの朝食……今回はパン粥ではなく、パンに牛乳、スープにオムライス、更にはサラダがついていた……で腹を満たすと、俺はクリス、アイナ、リードラ、マールと共に再びゼファードの冒険者ギルドに行った。
「誰だあれ?」
「女は見たことは有るが、あの時はデブが連れてなかったか?」
「だよなぁ……。
急に痩せるって言ってもひどすぎるだろ。
にしても、服は一緒だぞ」
「違うだろう、あの男がデブからメンバーを引き抜いたんだ。
そうに違いない」
「ゼファードのダンジョンを攻略したパーティー出たんだろ?」
「そうらしいが、普通にダンジョンには入れたぞ?
そいつらはダンジョンコアを壊さなかったんだろうな」
様々な憶測が飛び交う。
さて、回答は……。
俺は受付けのカウンターに座ると、ドンとカウンターを叩き、
「レッドユニコーンのマサヨシというものだ。
ゼファードのダンジョンの攻略完了の報告に来た。
ギルドマスターを呼んでもらいたい」
と、受付嬢に言った。
騒いでいた冒険者たちがシンとする。
そして冒険者たちは一言、
「マジか」
と口をそろえて言った。
「えっ、えっ、許可証は有りますか?」
と、受付嬢が言うと、
「これね」
許可証を取り出しカウンターに投げた。
受付嬢はさっと許可証を取ると、確認をしてカウンターの奥の部屋へ向かう。
受付嬢がえらい興奮しているな。
そう言えば、ダンジョンの許可証で俺等はどこまで進んだか知っているはず。
つまり「最後まで行った」ってことを知っているからか……。
「これはこれは、マサヨシさん。
ゼファードのダンジョンの攻略完了おめでとうございます」
手揉み付きでウォーレンが現れた。
笑い顔に下心が見える。
「一応、攻略が終わればギルドマスターへの報告の義務があると聞いていたのでここに来たまでです。
そういうことなので帰りますね」
俺は立ち上がる。
「えーっと、金箱は?」
金銀宝石で飾られた宝箱……つまり金箱を収納カバンから取り出して再びドンとカウンターの上に置いた。
「これは私どもが貰っても?」
ウォーレンは訳がわからないことを言い始めた。
「いいや、これはオウルに居るグランドマスターに渡すことになっている」
と返す。
「ちょっ、ちょっとお待ちを……」
すると、ウォーレンは焦ったように俺を止めた。
「元来、金箱はダンジョンを攻略した印です。
そのため、パーティーからダンジョンがあった冒険者ギルドに譲渡されるのがルールなのです」
そんなことをウォーレンが言っていると、
「そんなルールは聞いたことが無いわね」
話しが聞こえたのだろう……クリスが俺の横に立った。
ウォーレンの「チッ」という舌打ちが聞こえる。
「マサヨシの『こ・ん・や・く・しゃ』であるグランドマスターのカリーネに聞いてみたら?
正確なところを教えてくれるかもしれないわよ?」
ニヤリと笑うクリス。
そんなに「婚約者」を強調せんでも……。
「余計なことを言いやがって……」
と、ウォーレンが呟くのが聞こえた。
やっぱり、こいつは好きになれないんだよなぁ。
ファイアーボールをぶっ放すし。
「そうだな、オウルに戻ってカリーネにその辺のことを聞いてみるよ。
それで、この冒険者ギルドに金箱を納めなければならないのなら、持ってくるようにする。
それでいいだろ?
とりあえず俺たちは帰るけどいいかな?」
「えっ、ええ、どうぞ。
攻略完了の件はこちらからもオウルに報告しておきます」
ウォーレンが渋々俺に言うのだった。
これ以上は言っても無駄と判断したようだ。
「ギルドからの報告をよろしくお願いしますね」
俺はカウンターから立ち上がる。
「ちなみにダンジョンはどうなるのでしょうか?」
ウォーレンが聞いてくる。
「ダンジョンコアを壊してないので、しばらくすれば新しいダンジョンマスターが居付くと思います。
特に変わりなく攻略を続けられますよ」
嘘だけど……。
そう言った後、クリスを連れ皆の元に戻る。
「このギルド嫌な感じ」
アイナが呟いた。
「帰りますか……」
と俺が言うと、
「「「「賛成!」」」」
と女性陣から返事が返ってくる。
「じゃ、帰るか」
俺たちは、メタボが細くなったことを驚いているのか、ゼファードのダンジョンの攻略を終えたことなのか、それとも両方なのかわからないが、冒険者たちに「信じられない」という目で見られながら冒険者ギルドを出てゼファードの屋敷に戻るのだった。
玄関を入ると、
「どうだった?」
カリーネが出迎える。
「何か『ダンジョンの攻略が完了したらギルドに金箱渡せ』って言われたけども、そうなの?」
さっそくカリーネに聞いてみた。
「誰が?」
カリーネが聞く。
「俺が」
「誰に?」
「ゼファードのギルドマスターに」
「そんな通例は無いわよ?
確かに冒険者ギルドへ金箱を納めたって話はあるけども、それはそのギルドがパーティーを親身になって世話をした感謝として納めたって話。
それも百年単位の古い話。
通常はダンジョンの攻略を終えるのに何年もかかるからね。
あのギルドに顔出したのなんて片手で数えるぐらいでしょ?」
「そうだけど」
カリーネが少し考え、
「あのギルドマスター、寂びれたところに飛ばしてやろう……」
と呟く声が聞こえた。
あっ、左遷。
「一応これで、ゼファードの冒険者ギルドにすることは終わったんだよな」
ホッとする俺。
「ええ、一週間もすれば早馬でオウルのほうに報告が上がるでしょう。
その後は、攻略完了者と王城への報告を私がします。
その後、普通は王に呼ばれるんだけど、マサヨシは御前試合に出るんでしょ?
だから、そこで紹介されるんじゃないかしら」
「面倒だねぇ」
「でも、王の覚えめでたいというのはいい事よ。
特に武を誇るマットソン家では重要な事でしょ?」
カリーネが人差し指で俺を差し、忠告するように言った。
その後、
「本当はゼファードの冒険者ギルドへの報告は後でも良かったの。
クラウス様のところへ最初に行く方が良かったんだけども、クラウス様が『余計なことは先に終わらせろ』とおっしゃって……」
「そうだったのか……」
そして、カリーネは、
「さあ、クラウス様に報告に行きなさい」
俺をビッと指差しながら言う。
「クラウス様はあなたがダンジョンの攻略を終えたことは知っているわ
だから、早く行ってあげて」
ニコリと笑うカリーネに急かされるのだった。
その場で扉を出し、直接オウルの屋敷の執務室に繋ぐ。
ノックをすると、
「入れ」
という義父さんの声が聞こえた。
俺とパーティーメンバーであるクリス、アイナ、リードラ、マール、そして、カリーネが中に入った。
おっと、プリシラ様も居るねえ。
「報告させていただきます。
ゼファードのダンジョンの攻略を完了し、ただいま帰還しました」
俺は気を付けをして義父さんに言った。
「ご苦労だった。
お前の功績が我がマットソン家の名を高めるだろう……。
というか、これじゃ堅苦しいな」
苦笑いの義父さん。
「まあ、とにかくよく頑張った。
ゆっくりするがいい」
「義理の息子が、こんなに強いとは……。
それにしても、後ろの子たちはどうするの?
あなたもそろそろ跡継ぎを作らないと……」
あれ?
そっちに振りますか?
「二十二歳ならばなおさら。
次代のマットソン子爵家を担う者を作る必要がある。
聞いたわよぉ。
『ゼファードのダンジョンを攻略して終わったら』ってね」
よくお知りで……。
しかし、母さんの言葉に背後に居る女性陣の気配が変わるのがわかった。
「その気は有りますよ」
「だったら、早くやっちゃいなさい。
本妻も側室も決まってるんでしょ?
さて、孫が先かしら、グスマン家の後継ぎが先かしら……」
ニヤリと義母さんは笑った。
「マサヨシよ、イングリッド殿下から聞いたのだが、帰国の護衛をするらしいな?」
「よくご存知で」
イングリッドと義父さんいろいろなタイミングで話をしているんだろうなぁ。
「プリシラと話をしたんだが、当主交代はイングリッド殿下の帰国が終わった後と考えている。
まあ、お前が帰ってきてから申請をせねばならんから、実際に代替わりが行われるのは申請が終わった後、一カ月から二か月後になるだろう」
「わかりました。
そのように考えておきます。
しかし、フリーデン侯爵への通知はどうしましょうか?
私が代替わりするまでにポルテ伯爵家の土地を得ることになっていますが……」
「それはあいつらが調べて知るべきこと。
儂が申請をしたところで、どこかからあいつのところにも伝わるだろうて」
「わかりました」
「さて、お前もまだ疲れておろう。
今日はゆっくりするといい」
「またね」
義父さんと義母さんが言った。
ちょっと邪魔だったのかね?
「はい、それでは失礼させてもらいます」
俺たちは執務室を出た。
読んでいただきありがとうございます。