第113話 さよなら
魔法陣でダンジョンの入口に戻ると、凄い倦怠感。
あー、あれですか。
前の時は気絶した……。
早々に屋敷に戻らねば……。
「悪い、酔った。
早々にゼファードの屋敷に戻るぞ!」
そう言って急いでりゼファードの屋敷まで帰り、門をくぐったところまでは覚えている。
そこで安心したのか、それからの事は目を覚ますまで覚えていない。
「早く起きないと、みんなが心配するわよ?
いや、それよりも笑われるかもね」
なぜかミハルの声が聞こえる。
えっ、何でミハルが?
目を開けると見たことのない天蓋のベッド。
いや、見たことはある。
ああ、ゼファードの屋敷の主人が寝るベッドか……。
ふと見ると、周りにクリス、アイナ、リードラ、マール、増加してフィナとラウラ、カリーネにエリスが寝ていた。
まあ、この広さなら寝られなくはないけどよ……。
皆を起こさないように体を起こすが、アイナが目を覚ます。
「おはよう」
「おう、おはよう」
俺を見てアイナがクスクスと笑う。
ん?
「マサヨシは気付かないんだ」
ん?
「みんな、マサヨシが起きたよ」
アイナが皆を起こす。
「あっ、おはようございます」
「マサヨシおはよう」
「主よおはよう」
「「旦那様おはようございます」」
「マサヨシ……おはよう」
「義父さんおはよう」
皆が俺に挨拶をしたので、
「おっおう、おはよう」
と、何が何だかわからないまま皆に返した。
そして皆がクスクスと笑う。
ん?
「何かあったか?」
と俺が聞くと、ニヤニヤ笑いながらクリスが鏡を持ってきた。
鏡を覗き込むと見たことがあるが最近見たことのない顔が写る。
おっと、お久しぶりです。
若いころの俺。
ん?
ってことは、呪いが解けたのか?
まさか弱くなった?
焦る俺はすぐに、
「ステータスオープン」
と唱えた。
ステータスを確認すると全部のパラメータにEX-Sが浮かぶ。
弱くはなっていないらしい。
「マサヨシって痩せると変な顔。
でも嫌いじゃないよ」
クリスが言った。
まあ、痩せていると言っても典型的な日本人顔。
西洋系の顔が多いこの世界じゃ珍しいかな?
変な顔と言われても仕方ないか……。
「それはありがとう」
太っているのと痩せているのとどっちがいい?」
クリスはモジモジすると、
「それはわからないわね。
だって、まだ痩せたあなたと暮らしていないから」
と言う。
「結局、抱いてもらうのも痩せたあなたになるのね」
そうか、俺が勝手に作った縛りも無くなるのか……。
そんな事を考えていると、
「まずは、ダンジョン攻略おめでとう。
私が言った一年半なんて比較にならない位の速さで攻略しちゃったわね」
と苦笑いをしながらクリスが言った。
「んー、みんなで頑張ったからだろ?
俺も含めて五人居なければ無理だったよ。
それに屋敷に居て食事を作ったり洗濯をしたりして手伝ってくれたたみんなが居たから攻略できたんだとおもうぞ?」
俺はフィナとカリーネ、エリスにラウラを見て、
「こちらこそ皆に『ありがとう』だな」
頭を下げた。
すると、
「マサヨシ、あなた、ダンジョンはどうなるの?」
とカリーネが心配そうな顔をして聞いてくる。
「俺があのダンジョンのダンジョンマスターになったから……」
「えっ、ダンジョンマスタァー!」
カリーネは驚き大きな声をあげた。
「ああ、ダンジョンコアを隷属したから、あのダンジョンは俺が管理するものになった。
だから、ダンジョンは消えない……らしい」
「相変わらず驚かせるわね。
想像の斜め上の事をする。
という事は?」
「今まで通りだね」
そう言うと、カリーネがホッとする。
ああ、冒険者ギルドの収入源でもあるんだよな。
「さて、マサヨシ。
あなたはダンジョンを攻略した事を報告しなければならない。
ただし、あなたが嫌っているゼファードの冒険者ギルドに報告する事。
『マットソン子爵の息子がゼファードのダンジョンを攻略した』ってね」
「証明する方法は?」
「金箱を持ち込めば問題ないわ。
金箱はダンジョンマスターから得られると言われている」
カリーネが少し考えると、
「ごめん、ダンジョンへ入る許可証でもいい。
ゼファードの冒険者ギルドでモニターしているんだった」
「わかった。
でも、今持ち込んでも俺だとわからないような気がするんだが」
「そうねぇ……。
しばらく経ってからにする?
この前はいつ行ったの?」
「ん?俺何日寝てた?」
「三日かしら」
「だったら一週間ぐらい前か……」
「んー、知ってる?
金箱の中身の一つにスリミングの薬って言うのがあるの。
通常ハズレの中身なんだけど、一部の貴族には好まれる薬。
それを飲んだってことにすれば?」
「それは勘弁だな……。
だったら努力して痩せたことにするかなぁ。
一カ月ぐらい待てばいいんじゃない?」
などと報告の対策を考えていると、リードラがフッと笑い、
「主よ、主がいつもの服を着て我らを連れ、堂々とゼファードの冒険者ギルドに行けばいいのだ。
容姿が変わったからといって特には気にする必要はあるまい?
主は主だ」
と言う。
「そうです、クリス様とリードラ様、アイナちゃんに私が居れば赤いユニコーンであることは認知されます。
ですから、今日にでも冒険者ギルドに行きましょう」
マールも言う。
そうだなあ、今後はこの体で生きることになるんだ。
割り切るか。
ギルド職員がわからなくてもステータスプレートの名前は変わらないし……
「マサヨシ、あなたはバケモノなの。
だから、体も変わる。
それでいいじゃない」
「私は、マサヨシがいい」
クリス、アイナが言う。
「アイナは極論だのう。
しかし、アイナの言う通り、皆『マサヨシがいい』のだ。
安心するがいい、我々は変わらん。
主よ何を不安がっている」
リードラはニヤリと笑い、俺の心を見透かすように言った。
そりゃそうだよな。
俺にはこいつらが居る。
不安がってもいかんか。
「じゃあ、朝飯食ってギルドに行こうか。
俺たちのパーティーの強さを見せつけてやろう。
そして、オウルへ帰ろう」
皆が頷いた。
まあ、年を経たら、太ってメタボに戻るかもしれないが。
今はメタボな体とはサヨナラだな……。
こうして皆で朝食へ向かうのだった。
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