第106話 下層へ向かおう6(三十七階の壁)。
誤字脱字が多く、ご迷惑をおかけしております。
指摘に合った通り、一話抜けていました。
割り込みで追加してあります。
ついに三十一階に入った。
目視ではほとんど周りが見えない状況。
ノクトビジョンモードにすると周りが明るくなる。
そして、周囲を確認すると、天井が異様に高いことに気付いた。
と言っても十メートルぐらい。
「敵は……レーダーに何カ所か見えるが……ん?
思ったよりは少ないぞと……」
宝箱も何カ所か見えた。ここまできたら期待したいところだね。
罠も……少々。
俺たちは光点に近づき壁の陰から覗き込むと、頭に角一本が生えた青い皮膚の魔物が歩いているのが見えた。
身長は五メートルぐらい?
丸太のような足や腕、片手にはこん棒。
大きな目が一つしかないのが特徴。
サイクロプスだよな。
で、どの程度の強さかね?
まあ、戦ってみないとわからないか……
アイナとマール、クリスが武器を持ち、通路の影で待つ。
この暗闇ではサイクロプスのデカい目でも俺たちは見えないようだ。
元々冒険者たちは魔法やランタンを使うせいで、別にサイクロプス自体、夜目が効かなくても視認しやすいのかもしれない。
ってことは、ライトは使わないほうがいいかね
「向こうはこっちがわかっていない。
息を殺してここで待って、アキレス腱を攻撃しようか」
そう言うと、三人は頷く。
そして、俺たちに近づいてきた一頭のサイクロプスのアキレス腱をアイナとマールは同時に攻撃した。
倒れたサイクロプスの頸動脈をクリスが切る。
真っ赤な血が噴き出す。
そして。
「グアアアアッ」
サイクロプスの叫び声がフロアに響いた。
「ウォー」
その声に反応した他のサイクロプスが声を上げながら集まってくるのが、時間が経つにつれ次第に声が大きくなることでわかる。
「集まってきた」
不安げなアイナ。
「リードラ、戦ってもらえるかな?」
「任せろ。
手を出してもらえんせいで欲求不満だ」
ちょっと違うと思うぞ?
「さて、俺も戦おうか。
俺が声をかけたら目を瞑れ。
『開けていい』と言ったら、すぐに開けて戦うんだ」
そう言うと、皆が頷く。
真っ暗な中で俺たちは待ち、サイクロプスが近づいたところで、
「みんな、一度目を瞑れ」
と言ってライトの魔法を使った。
各サイクロプスの顔の目の前で、いつもより格段に多い魔力を使って発光させる。
目も眩むような光が輝いた。
「グエェェェェ」
目が見えないのか必死になって目を擦るサイクロプス。
「今だ!」
アイナ、マールはアキレス腱を狙い。
倒れたところをクリスがとどめをさす。
リードラがヒヒイロカネのガントレットでサイクロプスの顎を殴ると、顎にクレーターが出来た。
そして、勢いで頸がぐるりと回ってゴキリと何かが壊れる音がする。
サイクロプスの目から光が消えた。
殴ったら勢いで首の骨が折れるのね……。
どんだけパワーがあるのやら……。
さて、俺も頑張るか。
俺は残ったサイクロプスの足を切り飛ばして倒すと、首を切った。
数分でサイクロプス全てが倒れる。
「素材として使えるのかね?」
クリスに聞くと、
「私もサイクロプスは倒したことはないけど、全てが一級品の素材。
肉なんて、一般には出回らないからね」
とのこと、
「じゃあ、一応回収しておくか」
俺は周囲に転がるサイクロプスを収納カバンに入れた。
「皆強うなった」
リードラが頷く。
「リードラは別格ね。
殴ったら変な方向まで首が回ってたし……」
クリスが言うと、アイナとマールが頷いていた。
「我を上回る者がおるであろう?」
リードラが俺を見ていた。
「後は宝箱の回収」
皆で宝箱を回収する。
「あぁ、お金が多いねぇ
でも白金貨の量が多いのは敵が強いってことなんだろうな。
どうする?
もう魔物は居ないから先に行く?」
「そうだのう。
確かカリーネが三十七階までしか誰も行ったことがないって言っておったな。
そこまで目指してみてはどうかの?」
とリードラが提案した。
「そうね、そこに何があるのか確認するだけでもいいと思う。
対策もとれるし」
「私もそれでいい」
「私もそれでいいです」
クリス、アイナ、マールがリードラの意見に従う。
「わかった、時間まで三十七階を目指そう」
どの階でも流れはあまり変わらない。
敵を倒して宝箱を回収。
途中赤い皮膚の二本角のサイクロプスが出てきたが変わらず俺たちで瞬殺だった。
俺とリードラが参加することで殲滅速度の上がったパーティー。
昼を過ぎる前には、三十七階に到着していた。
部屋に水量の多い川があるようで「ゴー」っと流れる音がする。
にしても、ダンジョンに川ですか……。
俺は音の聞こえるほうへ歩くと川岸が見える。
なぜか護岸されていた。
セメント風のもので固められている。
んー対岸は見えないね。
マップから言うと両対岸に少し陸があってあとは全部川だった。川幅十キロメートルぐらい?
普通の人ではなかなか先には行けないだろう。
あと気になるのが中央にある一つの光点。
川のど真ん中に居座っている。
ボスじゃないけどボスに近いかな?
宝箱は……無いね。
「さて、どうするかの?」
腕を組むリードラ。
「川幅が広いわね。
流れも速い。
だから先には行けなかったのね」
クリスも頷いていた。
「ちなみに、結構な大きさの魔物が川の中に居る。
知らないで中に入ったら嬲り殺されるんじゃないだろうか」
初見殺し。
鎧を着たまま泳ぐなんて無理だろうし、ボートのような物をここまで持ってきても、流れに流される。
流されないとしても、魔物に襲われる。
こりゃ先に行けなくて当然か。
「マサヨシ、どうする?」
アイナが聞いてきた。
「リードラは無理か?」
「ああ、我が元に戻って空を飛ぶにしても天井が低すぎるのう」
「マナ、何か手はない?」
「私に聞かれてもわからないわよ」
「ふむ……」
俺は少し考えた。
高速移動ならホバーだから行けそうだし、それが無理なら足が沈む前に次の足を出す「水走り」だな。
今の俺ならできそうな気がする
「ちょっとやってみるよ」
と皆に言うと、まず高速移動で水面に出ることにした。
意外と浮くね。
コレなら行けそうだ。
試しに「水走り」をやってみたが、これもすんなりできた。
しかも高速移動よりも格段に速い。
高速移動って格好だけで俺にとっては遅かったのね……。
今さら気づく真実。
「水走り」で水面を走る。
ちょうど川の中央あたりに来た時に光点が俺を確認したようだった。
速度を上げ追いかけてくる。
向こうの方が若干速いかな?
じりじりと俺に追いついてくる。
「水走り」をして五分もすれば対岸が見えるところまできた。
二本脚でどんだけのスピードが出てるんだろ……。
俺のステータス補正のお陰なんだろうがね……。
もう少しで対岸という所で、俺の後ろ三十メートルぐらいまで何かが近づいてくる。
対岸にたどり着き滑り込んで振り返った瞬間、水面が爆発したように盛り上がり何か飛び出した……けど?
俺を越えて何かが飛んでいった。
びちっびちっ……魔物が跳ねる音……。
見て見るとと十メートル以上はあるデカいブラックバス……っぽいのが転がって跳ねていた。
水面を走る俺に食いついてきたが飛び出して地面に激突したようだ。
「…………」
しばらく見ていると動かなくなる。
所詮魚か、陸上では息ができないらしい。
力なく横たわるブラックバス……。
こいつに食われたらどうなってたんだろ……。
俺は何もしなかったけど……こいつ死んじゃったね。
こいつが素材になるかわからんが回収だな。
後でクリスかカリーネに聞けばいい。前の世界では白身でから揚げにしたらブラックバスが美味いって聞いたこともある。
この大きさじゃから揚げは無理だろうけどね。後で捌いてみるか……。
とりあえず収納カバンにデカいブラックバスを入れた。
「ただいま」
扉で対岸に向かう。
「あっ、大丈夫だった?」
クリスが飛びついてきた。
「クリスは心配でウロウロしておったのだ。
我は大丈夫じゃと言ってたのだがのう」
とリードラが俺に言う。
「リードラも少しイライラしてたよね。
ずっと足が動いてたし。
落ち着きなかったしねー」
アイナがマールに同意を求めると、
「はい、落ち着きがありませんでした」
と、笑いながらマールが言った。
「言うでない」
とリードラが膨れる。
「それじゃ先に行こうか……てところなんだろうが、まずは腹ごしらえだね。
この感じならボス部屋まで行けそうだ」
俺たちはフィナの弁当を開けて食べると、扉で三十八階に降りる階段へ向かうのだった。
読んでいただきありがとうございます。