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第105話 ゼファードの冒険者ギルド

指摘がありました、ゼファードの冒険者ギルドに行った回です。

                                                                                               

 俺、クリス、アイナ、リードラ、マールでゼファードの屋敷の玄関に転移した。

「うわっ、綺麗じゃない」

 クリスがソファーで座る。

「ふかふかのソファー」

 アイナはポンポンとソファーで跳ねる。

(われ)はコタツのほうがいいのう」

「私もですね」


 リードラとマールはオウルの屋敷のほうがいいらしい。

 いや……コタツがいいらしい。


 そんな話をしていると、ボーとカリン姉弟が現れる。

「初めまして、カリンと言います。

 こっちが、ラムとロム。

 私の弟です」

 俺は、メンバーの紹介をする。

「こいつがクリス。

 一応エルフの王族だ……一応な」

「『こいつ』って……それに『一応』が余計!」

 と、クリスが俺に文句を言った後、

「よろしくね」

 とカリン姉弟に言った。

「そしてこの子がアイナ。

 うちのパーティーの回復役」

「ん、よろしくね」

 とアイナが頭を下げる。

「彼女がリードラ……人化したホーリードラゴン」

「よろしゅうな」

 とリードラ。

「ドラゴンって、あのドラゴンですか?」

「そう、あのドラゴンだ」

 カリン兄弟が怯えているので、

「人と同じ。

 リードラは優しいぞ」

 俺は言った。

 すると、ラムとロムがリードラのところに行き、

「うん、母ちゃんや姉ちゃんと同じ匂いがするから優しいと思う」

 と言った。

 リードラはにっこりと笑い、ラムとロムの頭を撫でる。

「最後に、彼女がマール」

「よろしくお願いします」

 とマールは見事なお辞儀を見せた。


「まあ、ここに来るのはこのメンバーとカリーネぐらいか。

 カリーネは昨日会ったから知っているな」

「はい」

 頷くカリン。

「俺たちはこのままダンジョンに向かう。

 あとは、ボーとカリンに任せる」

「「畏まりました。

 お気をつけて」」

 と言うボーとカリン。

 そして、

「「行ってらっしゃーい」」

 というラムとロム。

 四人の声に見送られ、ゼファードの屋敷を出るのだった。


 数分歩けば見覚えのある冒険者ギルドの看板。

 定番の両開きの扉を開けて中に入った。

 入ると、見慣れないデブがこれまた見慣れない美女を連れていることに騒然となる。

 相変わらずである。

「何であんなデブが」

「あり得ないだろう」

「いい女連れやがって」

 など、いろいろ囁く声が聞こえた。


 すると、

「知らないくせに」

 怒ったアイナが威圧する。

「慣れてるからいいぞ」

 と俺が言うと、

「でも……」

 というアイナ。


 気に入らないのだろう。

 でも、ありがたいことだと思う。

 まあ、静かにもなったし、今日することをしようか。


 俺はアイナの頭を撫で、受付に向かう。

 アイナのお陰か、俺が近づくと並ぶ冒険者が割れ、すんなり受付の前に着いた。

「ロルフ商会から赤い一角獣へ指名依頼が入っていると思うんだが、来てはいないか?」

 と聞いてみる。

「えーっと、ああ、昨日依頼が入ってます」


 早速マクシミリアンさんは依頼していたようだ。


「リーダーのマサヨシだ。

 受付をしてもらえないか?」

 俺はギルド証を出した。

「はい、畏まりました。

 しかし、内容を見ますにオーククイーンとオークプリンセスはこちらのダンジョンで十階のボスを倒す必要があります。

 ダンジョンに入る許可証はありますか?」

 俺は許可証を差し出した。

「手続きをしてまいりますので、しばらくお待ちください。」


 女性陣の様子を見ていると、四人を中心に三メートルほどの円形の空間ができている。

 アイナの威圧で、そこからは近寄れないらしい。


「マッ、マサヨシ様。

 ギルドマスターがお会いしたいと……」

 と、さっきの受付がいそいそと俺のところに来る。

 しかし、

「さっさとダンジョンに行きたいんだ。

 俺の所属はドロアーテだし、このギルドに用事は無いしね。

 さっさと手続きをして欲しいのが本音なんだよ」

 と、その話を蹴る。

 すると態度を変え、

「冒険者ギルド証と許可証はこちらで取り上げてもいいのですよ?」

 受付が俺に言った。


 この受付、上からだなあ。


「あっそう。

 だったらいいや、帰る。

 冒険者ギルド証も許可証も再発行してもらうんでね。

 オウルのグランドマスターに言えば再発行も早いだろう。

 別に許可証の再発行費が惜しいわけでもないしね」

 俺は席を立つと、女性陣の元へ行った。

「えっ?

 なんで、グランドマスターを?」

 後ろから受付の声が聞こえる。

「俺の婚約者だから知っていてもおかしくないだろ?

 もともとロルフ商会の話も、冒険者ギルドを通す必要もなかったんだ。

 ただ、グランドマスターのカリーネの顔も立てないといけないと思っただけ。

 依頼を達成する期間が延びても『ゼファードの冒険者ギルドの横暴』って言えばいいから気にすることもないし、それじゃ帰るよ」


 そう言って冒険者ギルドを出ようとしたとき、

「待ってくれないか。

 この受付の態度ならば怒るのはもっとも」

 と言って、ローブを着た男が現れた。

「私はウォーレン。

 このギルドのマスターをしている。

 今回のことは私も謝る。

 すまなかった」

「ほら、お前も謝るんだ」

 ウォーレンは受付の頭を押さえて謝らせたあと、冒険者ギルド証も許可証を出し、

「これで許してもらえないだろうか」

 と言う。

 ギルドマスター相手に引かない男が珍しいのか、冒険者たちは静かに俺を見ていた。

「ただ依頼を受けに来た俺が、こんなふうに言われるとは思いませんでしたね」

 と俺が言うと、

「確かに。

 しかし、君たちもこのギルドに顔を見せずにダンジョンを進んでいるではないか」

「ダンジョンを進む者はギルドに顔を出さなければならないとか?」

「そういう理由は無いが、武器の整備、素材の売却、食料の補充などをしなくて大丈夫なのかね?

 君らは大きな背嚢を持っているわけでもなく、すぐに持ち物がいっぱいになりそうだが?」

「要りません。

 俺にはフォローしてくれるものも多いので……。

『必要ないからこのギルドへ来なかった』ではいけませんか?」

「それでは我がギルドに恩恵がない。

 ゼファードのダンジョンの物はゼファードの冒険者ギルドが管理しないといけないのだ」

「誰が決めたので?」

「私だ」

「そんなことを聞いたことが無かった。

 今回来たのは、ロルフ商会のマクシミリアンさんの依頼を受けるためだけです。

 それもカリーネに義理立てして、マクシミリアンさんに冒険者ギルド経由にしてもらいました。

 ちゃんと恩恵は手数料として入っていると思うんですがねぇ。

 それなのに『ギルドマスターに会いたくない』と言ったら、冒険者ギルド証と許可証を取り上げるといわれるとは思いませんでしたよ。

 これはオウルの冒険者ギルドに行って報告させてもらいます」

「そんなことをさせるとでも?」

 ウォーレンが魔力をまとう。


 さて何をするのやら。

 女性陣はニヤニヤして傍観してるし……。

 俺の心配をしないのかね……。


「また脅すのですか?」

 俺はウォーレンに尋ねる。

「マサヨシ、ファイアーボール。

 多分当たってもマサヨシに傷一つつかない。

 でも、守ったげる」

 マナの声が聞こえた、

 ウォーレンはニヤリと笑うと、

「その恰好、所詮戦士だろうに。

 私のファイアーボールに耐えられると思っているのか?」

 右手を出しそこに火球を作った。

「撃っていいですよ」

 とクイクイと手のひらで挑発する。

「ばかめ、消し飛ぶぞ?

 それともその脂肪が守ってくれるのか?」

「んーそれに近いかな。

 早く撃てよ。

 早く!」

 俺が煽ると、

「ギルドマスターのファイアーボールが出るぞ」

「逃げろ!」 

 冒険者たちは出口へと殺到した。


 多分普通の人にはこのウォーレンと言う男が放つファイアーボールの威力は高いのだろう。

 しかし、マナに守られた俺には効かない。

 


「後悔するなよ!」

 とウォーレンが言い放った後、バスケットボール大の火球が連続して発射された。

 ただ、俺の目の前には薄い水の膜が展開され、その膜に当たると「ジュッ」と言って火球が消えていく。

 ウォーレンは口を開け唖然としていた。

 

 驚きすぎて声が出ないのだろうか……。

 相当自信があっんだろうなぁ……。


「そこの受付!

 早く依頼の処理をしてもらえないか」

 今度は威圧しながら言った。

「はっはいー、ただいま」

 受付は手を震わせながら処理を始める。

 そして、俺に依頼証を渡した。

 それを受け取ると俺は女性陣を連れゼファードの冒険者ギルドを出ていった。


「気に入らなかったの?」

 クリスが聞いてくる。

「ああ、気に入らなかった。

 言い方が上からだったからね。

 言うことを聞かないとわかると、脅したんだ」

「脅されたから脅し返した?」

「そうなるんだろうな」

 と俺は言った。

「私もあのギルド嫌い。

 ジロジロ見る人多いし。

 マサヨシのことバカにするし」

 怒るアイナに

「ご主人様、私も嫌いです」

「そうじゃのう」

 同意するマールとリードラ。

「みんな、ありがとな。

 俺も冒険者だからといってギルドマスターに頭を下げる気はない。

 尊敬できる人ならそうかもしれないが、尊敬できない人には無理だなぁ。

 グレッグさんしかり、カリーネしかり。

 どこか尊敬できるから言うことを聞く」

 女性陣も頷いていた。

「さあ、マクシミリアンさんに肉を届けて依頼を終わらそう。

 それからダンジョンへ潜るかね」


 俺たちはロルフ商会のゼファード支店に向かい、マクシミリアンさんに早速肉を届ける。

「肉がこれ」

「見事なサシですね。

 肉の中に脂が網の目のように……」

「あと、元々肉は持っていたんだが、カリーネは冒険者ギルドの職員だからギルド経由にしたんだ。

 手間を取らせて申し訳ない」

「いいえ、私としては肉が手に入れば問題ありません。

 思ったより早いですしね」

 とマクシミリアンさんは喜んでいた。

「それでは依頼証に完了のサインをしますね」

 依頼証にサインをしてもらうと、さっさとゼファードの冒険者ギルドに戻る。 


 ほんの十分で帰ってきた俺を見て受付は驚いていたが、

「よし、それじゃ、達成の処理をしてもらおうか」

 俺は依頼証を出した。

「これでいいな」

「はい」

「だったら、報酬をくれ」

「わかりました、急いで持ってきます」

 俺の前に、ジャラリと金の入った袋が置かれる。

 中身も確認せずに金の入った袋をとると、俺は再びギルドを出るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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