移動は公共交通機関です。
「あの・・・。岩倉さん?」
「ん、クラでいいよー。なにー?」
「じゃあクラさん、俺たちどこへ向かってるんですか?」
「バス停だよー。うちは、バス移動が基本だからね。あ、ちなみにバス代は経費で落ちるから。」
いや、確かにここらへんで移動手段っていえば、バスか歩きか車くらいしかないけど。じゃなくて!この会社、交通系だよね。なんで他社のバス利用しようとしてるんだよ!
文句を言いたいけど言えないまま、黙々と歩く。(別に背が高いから怖いなんてことは、ない)
着いたのは、市の中心部行きのバス停。
「これから、市の中心部へ行きます!」
時刻表を見ると、バスが来るまであと30分以上ある。
てか、今までおとなしくついてきたけど、いい加減教えてほしい!
「クラさん!俺たちはいったい何をしに行くんですか!」
「・・・う~ん。簡単に言うと、除霊、かな」
・・・・・・ジョレイ・・・じょれい・・・JYOREI・・・
「除霊!?」
「うん。俺たち都得は、成仏できなかった霊を地獄へ送ることを主な業務としている企業なんだ」
頭が追いついてこない。
「・・・。全く分からないって顔してるね。・・・まあ、いきなり理解できなくてもいいよ。今から説明するから。
君も霊が見えるんだろ?だったらわかると思うけど、一応ね。
まず、霊っていうのは死んだ人間の精神の部分のことね。普通は、死んだ瞬間に地獄へ送られて裁かれるんだけど、たまーにこの世に残っちゃうのがあるんだよね。
そのままこの世に居続けたら、周りの悪いものを吸って悪霊になっちゃうから、そうなる前に地獄へと送るのが俺ら都得の仕事。
大体OK?あとはやってくうちに分かるようになるから。」
「はあ、まあ・・・。」
ところ変わって、ここはバスの中。結局40分ほど待ってようやくバスは来た。
「てなわけで、今からやることは、霊の捜索と回収。簡単でしょ」
ごめんなさい。すっごく説明分かりやすかった。だけど。
いきなり理解しろって方がおかしいだろ。こんなこと。
こんなところに就職して良かったのか?
「まあ、そろそろ着くし、とりあえずこれあげる」そう言って渡されたのは黒い・・・首輪?
「あの、これ何ですか?」
「ああ、それはね、霊をよりはっきり見るための道具。こんな風に、首に巻いて使うんだ。」そう言って、自分の首元を見せてくる。
へえ、オカルトチック。本物かな?とりあえずつけてみるか。カチャカチャ。
「ただ、つけるととれなくなるから注意して・・・って、あちゃー遅かったか・・・。」
へ?
俺はいそいで首輪を外そうとする・・・が、つなぎ目がない・・・。さっきまで普通のベルトみたいになってたのに、いつの間にか表面がつるっとしたリングになっている。
「とれない・・・。」
「そりゃそうでしょ。なんてったって、うちのボス特製の逸品だぜ。とれる方がおかしいよ。あきらめな」
俺の頭の中で、一時間前に会った幼児がケラケラ笑っている。何なんだよ!
「ちょっと、あきらめなって、これどうすれば「ご乗車、ありがとうございました。まもなく、終点、東市役所前です」」
いろいろ言いたいことはあるけど、どうやら行くしかないみたいだ。