表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第III章 グレイズの三匹
97/157

087 バザー 4

バザー編つづきます。

「あぁ、暑い。今日は一段と暑くなるなぁ」

「そうねぇ。こう暑いと喉が渇くわぁ」



『さぁ、さぁ、みなさ~~~ん、お暑いですよねぇ~、そんな皆さんに耳よりのお知らせです!今、東地区バザーの奥のお店ポプリでは、とーっても冷たいお水を無料でお配りしていますよ~!暑いときに氷の様に冷たく冷えたお水が欲しい方は、私の持っているこのカードをお持ちになって下さ~~い!』



「まぁ、これは何かしら!?」

『これはとーっても冷たい水との引換券となっておりま~す。どうぞ、お一ついかが?』

「えぇ、いただくわぁ」

「おぉ、私も一枚貰おう」

「はい、どうぞ!」



 私は一枚ずつ二人に渡したわ。

 二人は券を受け取ってしげしげと眺めていたわね。

 


『さぁ、さぁ、どうぞ暑い日差しにお困りの方は冷たい水で喉を潤しませんか~。』



 私はこの時の為に用意した白い羽飾りの帽子とふさふさの腰みのでくるくると回転しながら練り歩く。その後ろをライルがぎこちないながら青いパンタロンスーツで続くわ。私達の服に括り付けられた鈴がシャンシャンと動く度に鳴るから誰もが振り向いて私達を見る。そこにすかさず掛け声をかけて無料サービスを告知。



「キョウさん、行きます!」



 ライルが無料券をポケットに仕舞いナイフを構える。

 私もポケットに無料券をしまうと彼に正対する。

 ライルが構えると服の袖の下のすだれがサラサラと動いて綺麗ね。オレンジ色のライルの髪に青の対比がとっても良い感じに目に涼感を届けてくれる感じがするわ。そこにキレのある彼の動きが一層場を引き締める。

 私も真剣な目つきでそれに応える。

 ライルがナイフを二本立て続けに投げ込んだ。

 しゅっという風の音と共に放られたナイフが私に迫る。



(グラビティハンド)



 手の周りに魔力を集中させると指向性のある重力が働き前方に力が伸び、射線上のナイフを私の手に引き付けたわ。そして、それは私の指と指の間に見事にパシリと吸い付いて止まった。周りから見たらまるで私がしっかりとキャッチしたようにしか見えないでしょうね。

 見事キャッチして成功した様に振る舞うと、指笛や拍手が巻き起こったわ。

 あら、その中には目を輝かせたパトラッシュとインディの姿も見えるわね。

 あの子達、しっかり人だかりを見つけてやってきたのね。



「お集まりのみなさ~~~ん!この続きは東地区奥のポプリのお店で行いますので、ご覧になりたい方は私の配布するこのチケットで冷たいお水を頂きながらお越しになって~~~!」



 そう告げてポケットから無料券を出して周囲に見せると、一斉に観客が押し寄せてきたわ。

 物凄い反応よ。

 やっぱ大道芸っぽい余興は正解だったわ。

 うふふ。


 用意した無料券を配り終えた私とライルは、行きと同じようにダンスをしながらゆっくりと客を引き連れて歩いたわ。それに釣られる様に人々が私達の後を付いてくると、沿道のお店をついでに覗いてお買い物をする客も出てきたわね。


 よしよし、良い反応よ。


 パトラッシュがはしゃいで出てくるかと思っていたんだけれど、インディが止めていたわね。

 この辺は空気を読むインディの凄いところかしら。

 二人は私達の芸が終わったらいつの間にかいなくなっていたわ。

 どこへ行ったのかしら。

 そんなことを考えながら歩いていたら、私達を追い越して行った町の人々がお店に殺到していたのよ。あらやだ、私達もお店手伝わないとと思っていたら、パトラッシュとインディがお店でしっかり手伝っていたの。まぁ、なんて可愛いのかしら。

 ここは場を一層盛り上げるためにも、宣言通りの余興をおっぱじめるしかないわね。


 私とライルは投げナイフ芸やライルの弓による的当てなど、様々な芸を披露して観客を魅了したわ。

 観客達は無料券を使って飲んだ水のあまりの冷たさに最初驚いたような顔を見せるんだけれど、その後にこにこしながらぐびぐびと飲んでいくのよ。そしてもう一杯とばかりに銅貨一枚を払っていくのが見えるわ。

 お客の中にはハーブティを頼む客も出てきたわね。

 それを飲んでまた評判が評判を呼ぶという好循環が発生しているわ。

 お店の方もアレンが目を回しそうな勢いで仕事しているわね。

 周囲のお店にも沢山の人が訪れているわ。

 価格的に安い商品が多かったから、人が来れば売れることは間違いないのよね。

 お店で買い物している人の中には、お水の入ったコップを持って近くの丸椅子に座る人も見えるわ。お水を片手に練り歩き、飲み干したらお店に渡せば戻してもらえるというサービスに協力してもらったことで、気軽に遠くの店にも出かけている様ね。



「ん???」



 あれ? 隣のお店の二人が居ないわ。というか、商品も何もないわね。

 どうなっているのかしら。

 私が周囲を探して見ると、意外なところで二人の姿を見つけたわ。

 なんと、うちの店を手伝っている二人の姿があったの。


 本当にどうなってるの!?


 二人は必死の形相でカップを私が用意した浄化水に漬込んだり、お水を差しだしたりとやってくれているわね。それをシャインやパトラッシュがせっせとお客に渡しているのが見えるわ。

 インディはお会計を引き受けてくれているわね。


 用意した無料券分はあっという間に出し切っていたから、何度か私が戻って追加の水をガレージに用意したわ。ハーブティも完売したほどよ。うちの周囲のお店でも完売が続出で、うちから離れていても東地区のお店はかなり売ったのか商品在庫がまばらになっているのが見えたわね。

 これまでは人の方がまばらという状況だっただけに、みんなほくほくの笑顔をしている。

 昼前まで死んだような眼をしていた人々とは思えないくらいの変化よ。


 バザーが終わる夕刻にはほぼ全店完売に近い売り上げで終わったわ。

 お店が終わった頃には沢山の店主さんに感謝されたのよ。



「いやぁ、あんたがたすげーな。本当に人を集めてきた。おかげでうちの店は始まって以来の完売だったよ」

「おらの店もだ。これまでだったら何を言っても買ってくれなかったが、あのぷらいすかーどってのは凄いだな。お客の方がお金を用意してまっててくれるんだよ。おかげで計算せずに済んだし有り難いことだな」



 お店に戻ったら、お隣の店主さんが深々と礼をしてきてこれまたびっくり。

 


「いえいえ、お二人のおかげでしっかりとうちのお店も稼がせていただきました。有難うございます」

「あぁ、礼なんてとんでもねぇ。こっちが例を言いたいくらいだな」

「まぁ、そんなに? それにしても、どうしてうちのお店を手伝ってくださったんです?」

「そりゃ、あれだけの波が来ちゃ捌き切れないだろう。あんたの店が仕掛けた以上、あんたの店で出た不満は伝播しちまうからなぁ。そうしたことが無いように滞りなく進めないとやばかったとおもうぜ」

「あらら、そんな対応まで考えていてくれただなんて、ほんと有り難いお話です」



 そこに周囲の元々東地区にお店を持つ店主と思しき人達が沢山来たわ。

 彼らの手には私が貸し出したトレーがあって、空のカップが載っているわね。

 ちゃんと返却に協力してくれている。



「俺達も沢山稼いだことだし、このまま打ち上げとかどうでしょうか!」

「おぉ、いいないいなそれ!」



 沢山の方々がその声に賛同した結果、私達はスペースの撤去後にみんなで彼らのお勧めの料理屋で祝勝記念会をやる事になったの。

 みんなが喜んでいる笑顔を見ていると、無碍に断るわけにもいかないので参加することにしたわ。

 遂に反転攻勢に出たキョーコ達は広場の人から魅了し、最終的に東地区の売り上げを大幅にあげることとなりました。大成功のおかげで気をよくした店主たちはキョーコ達を祝勝会に連れて行ってくれると言います。そこはどんなお店なのでしょうか。



予告通り深夜の投稿となりました。

まってくださっていた方には申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ