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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第III章 グレイズの三匹
89/157

079 会議 後編

会議の続きです。

 キンバリーはゆっくりと歩いてくる。

 剣は両手で捧げ持つようにしているので、あの状態から素早く抜剣することは難しいため周囲の警戒感は和らいだ。とはいっても、傭兵の誰もが剣の柄に手を掛けている姿勢は変わりないけれど。

 キンバリーは自分の席の前に立つとあたし達に見えるように剣を見せたわ。



「こちらは犯行に使われた剣です」

「……それは、オームラ会頭がグウェインに下賜した宝剣ではないか。確かグランベルンといったか。精霊が封じられた使用者を選ぶ剣だと聞いたことがある」



 アイリンが驚愕の表情を浮かべながらそう話したわ。精霊封入による使用者制限というのは、たぶんあたしの剣と同じね。つまり、キョーコはあの時にそんな高度なことをやってのけたってことになるのよね。全く非常識極まりないものを作ったもんだわ。

 キンバリーは彼女の発言に頷いて両手で捧げ持つように見せていた剣を左手で掴み、右手で剣の柄を握る。

 その動作を見て周囲の傭兵達も表情こそ変わらないけれど、自身の得物に触れる手に力を込める。

 キンバリーが剣を抜こうとする……が、彼には抜くことが出来なかった。

 


「ご覧の通り、私には抜くことが出来ません。グランベルンを使用しての犯行ということは、グウェイン以外には不可能なのです。どうぞ、皆さんでおあらため下さい」



 キンバリーはイディの背後に立つカシムに剣を差し出した。

 カシムはそれを受け取り抜けないか確かめるように触れるもカシムにも抜くことは出来ず、カシムはあたしに剣を渡す。

 あたしも抜けるか試してみたけれど、どんなに力を加えても抜けそうにはないわね。鑑定でも使用者制限ありとあるから話に間違いは無いようね。あたしは確認したあとパイに渡したわ。

 パイも一通り試して抜けないことを確認すると、キンバリーに剣を返したわ。



「これで彼以外に不可能なことがお分かり頂けたものと思います」



 確かに犯行に使われたというこの剣を他者が使えない以上、グウェインが使用したということが確定するわね。でも、あたしは違和感を感じるのよね。何かとても大事な事を見落としている様な。



「では、次の議題……本日の本題に移りたいと思います。規約上、組合長の辞職・失職・死亡による空席が発生した場合、一月内に臨時役員会を開き、次期組合長選出のための会議を実施し、合議の上で推挙または選挙の実施をする方向となります。役員の皆さん、ご判断をお願いします」



 キンバリーが話を進める。

 彼の言う通り、規約通りに進めると推挙または選挙となるけれど、推挙は全会一致が原則のため、大抵一致することは無く選挙となる。今回はというと……、



「選挙」

「選挙」

「選挙」



 という結果。

 あぁ、やっぱりね。

 役員全員推挙する人無しだったわ。

 


「選挙ということで一致しました。この決議により東方商業組合長選出方法は選挙となります。組合規約により本日から候補者登録の受付を開始し二週間後に登録を締め切り、それから二週間の選挙期間を経て、本日から一か月後、投票により選出と致します」

「異議無し」

「異議無し」

「異議無し」



 こちらも役員全員一致したわね。

 


「では、本日の臨時会の議題は全て終了いたしました。これで臨時会のしゅ……」

「ちょっと待って下さる?」

「なんでしょう、ローラン会頭」

「先程の殺害に使われた宝剣について、一つ疑問が有るんだけれど良いかしら」

「はい、何でしょうか?」

「犯行に使われた……というけれど、その剣がどうして犯行に使われたと分かるのかしら」

「それはグウェインの持つ……」

「えぇ、それはグウェインの物よ。そして、彼にしか抜けないことも分かったわ。でも、それが使われたかどうかなんて、抜いて刀身を見てみないと分からないわよね。そもそも、犯行現場にいる際に貴方が居るのにグウェインが抜剣していないというのも不思議な話じゃないかしら」



 あぁ、確かに彼女の言う通りだわ。

 あたしが感じていた違和感もこれね。

 そうなのよ。鞘に収まった剣があることが不自然なのよ。

 普通、剣を奪ったり犯行現場に残されていたりしたなら、鞘は相手の腰ベルトとかに残っているはずだから剣のみしか残らないはずなのに、どういうわけか鞘ごとあるのよね。

 でも、キンバリーは動じた様子は無いわね。



「ローラン会頭の仰る疑問はごもっともです。実際に私がグウェインと対峙した際には彼が抜剣していました。ですが、お忘れでしょうか。彼が二刀流の使い手であることを。私は彼の剣を受け止めて一本を弾きましたが、彼は失った剣の代わりに鞘を持って剣の代わりとして私の前に対峙したのです」

「では、弾いたというもう一本は?」

「私が持ってるこちらです」


 

 キンバリーは自分の腰に左手を持っていくと、そこから一振りの小剣を出した。

 再び周囲の傭兵達に緊張が走る。しかし、彼はゆっくりとした動作でその剣を抜き、前に掲げるように左手でその姿を晒した。



「……確かに、それもオームラ氏が下賜した宝剣グリフィシス。使用者制限は無いが優秀な小剣と聞く世界に一つの剣」

「ご納得いただけましたか?」

「……えぇ。でも、それほどの腕を持ちながら、何故取り逃がしたのです? グウェインは貴方の言う通りであるとすれば、グリフィシスもグランベルンも鞘すらも持たぬ丸腰でしょう? そこまで追い詰めているなら逃がすことも無かったのではないかしら」

「……えぇ、彼一人であればね。しかし、思わぬ助勢が入りました」

「ほぉ。それは何者だ」

「……ガストンです」

「ガストンですって!? 生きていたの!?」

「……彼も消息不明であって、死亡が確認されているわけではありませんからね」



 アイリンが信じられないものを見る顔で見ているけれど、キンバリーの説明の通りだとすると確かに筋は通る話になるのかしら。

 ガストンというのは三年前にオームラ会頭の暗殺未遂を起こした傭兵で、元々グウェインの使っている剣はガストンに下賜されたものだったそうなのよね。つまり、ガストンが生きているとなると、ガストンにも犯行を行えるという状況が見えてくるし、逃亡中の彼が元同僚のグウェインと共謀して暗殺計画を遂行するというのは有り得ない路線じゃないわ。

 ただ、グウェインは過去の事件の時にどうやってグランベルンを手にしたかって疑問も出てくるんだけれど、奪い取ったということにして託されたとすれば分からない話でもない。

 こうなってくると、グウェインによる犯行という線はなかなか否定が難しそうに感じるわ。



「……では、今回の件の首謀者はガストンということになるのかね」



 イディ・カーンの言葉にキンバリーは頷いて答える。



「状況を客観的に見るのであればその可能性はありますが、そもそもガストンの過去の犯行も未遂とはいえ逃亡は成功していると考えれば、裏に何らかの手引きをする勢力があるのやもしれません。例えば西側であるとか……」

「軽々しく口にして良い言葉ではない。キンバリー控えなさい」

「申し訳ございません」



 クンルーさんの言葉でキンバリーが謝罪し口を噤んだわ。

 でも、キンバリーの言う可能性は有り得るのよ。

 ただの傭兵が自分の雇い主の会頭を暗殺したところで路頭に迷うだけでしょう? つまり誰かと二重に契約しているという可能性があるのよ。

 まぁ、そこを言うとグウェイン達に限らず、他の傭兵にだってそうした可能性は有り得るのがこの世界みたいだけれど。

 


「しかしなクンルー殿、西や海の連中がわしら東側の人間を疎ましく思っておるのは事実であろう。この地は元々クロイツェンの領域だ。我ら東側の帝国民がこうして活動しているのをスパイ活動だとかなんだと難癖をつけてくるのは茶飯事ではないか。此度の一件もそうした文脈で見るならば、よくよく警戒して動くに越したことは無いと思うぞ」



 イディ・カーンの話を聞いてアイリンが頷いている。



「……そうね。珍しく貴方の意見に同意するわ。ただ、だからと悪戯に対立を煽る行動をするのも愚策よ。貴方の言う通りここは西の帝国の領土であり、我々は西側に与することを呑んだ上でこの地に根を張っているという事実を忘れてはいけないわ」

「……左様。我々は商人であり政治家ではない。商売に洋の東西は関係無い。グレイズが自由商業都市として栄えるのは政治に左右されぬ独立した商人としての視点あってのものだ。仮に何らかの謀があったとしても、我らは我らの自由の為に話し合い、決議し、動くのみじゃ」


 

 クンルーさんの言葉でこの話は選挙を行うということで戻ったわ。

 流石年の功。



「では、これで本日の議題は全て終了しました。改めて本日の臨時役員会を終了致します」

「おほん、これにて散開」



 キンバリーの終了の言葉の後、クンルーさんの散開の言葉で会議は終了したわ。

 キンバリーは私達に散会後すぐ用事があると言って出て行ったわね。何を急いでいるのかしら。

 散会後はそれぞれが従者を伴って帰っていくわ。



「あの!」



 あたし達がクンルーさんと一緒に部屋を出ようとしたら、背後から呼び止められたわ。誰かしらと思ったら、先程の会議にまるで空気のように座っていたヨウ・カトーって子ね。

 確かオームラ商会の代理人だったかしら。

 彼は私の方を見て緊張した面持ちでいるわね。



「何でしょう?」

「貴方が新しくクンルーさんのところに入られたという最強の傭兵、ガリさんですよね?」

「最強かどうかは分かりかねますが、ライセンス上はその様です」

「ご謙遜されずともあの海の主を倒したという事実だけで十分な証明です。……その、よかったら僕と握手していただくことは出来ないでしょうか」



 あらやだ、あたしのファン!?

 もじもじと言われちゃうと可愛らしくて萌えるじゃないの。

 こんな可愛い子が握手してとか、まさかこの子、おネエを悩殺するスキル持ちとか!? ……って、んなわけないわよね。分かってるわよ。

 あたしは喜んで快くオーケーしたわ。



「有難うございます」



 彼と握手したの。その時、彼はあたしに何かを握らせた。

 その時の顔がとても不安そうな祈るような表情をしている様に感じたから、あたしはあえてそのことには触れずに笑顔で手を放したわ。



「何をしているんです。貴方も早く来てください」



 声をした方を見ればキンバリーが怖い形相をしてカトー君を見ているわね。



「すみません。では、有難うございました」

「え、えぇ」



 カトー君はぺこりと深く礼をして足早にキンバリーのもとに走って行ったわ。



 さて、どうしたものかしら。

 手の中にある物の感触を感じながら、あたしはクンルーさんと会議室を後にしたわ。

会議後編です。※前回1としましたが修正して前編としました。


新しい東方商業組合長選挙の実施が決まりました。

しかし、前組合長の殺害犯の裏には何やら色々と思惑が働いている様子。

そして帰り際にカトー青年がガリに渡したものは?


次はシーン変わります。

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