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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第III章 グレイズの三匹
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077 護衛

久々の彼です。


 自由商業都市グレイズは山の斜面に出来た街で、街を囲む西と北の城壁に門があり、そこ以外の出入りは海路のみとなっている。街に入ると山の上のメインストリートに冒険者ギルドと商業ギルドのビルが立ち並び、旅の商人や冒険者の為の飲食店や宿泊施設が置かれている。


 メインストリートを南下すると港までグネグネと道が続いていて、山の手が高級住宅街で、下に下がるにしたがって労働者階級の家が立ち並ぶ。

 港の近くには商店やバザーが開かれるお買い物広場とバザーストリートがあり、商業ギルドでお金を払って区画を買えば商店を開くことが出来る。

 

 商業ギルドビルの敷地には二つの独立した建物が建っていて、一つは西側の商人が集う西方商業組合ビルで、もう一つが東側の商人が集う東方商業組合のビルがある。これら二つのビルはそれぞれの組合に所属する商人達が集い、情報交換をしたりしている。

 

 東西の商業組合には私設傭兵組織があって、冒険者等を傭兵として雇い、ボディガードをさせたり討伐に向かわせたりする。実質この町の軍事力の中心はこの東西私設傭兵組織となる。

 この傭兵組織がなかなか侮れないものらしく、東側のガルド帝国は幾度も攻撃を仕掛けるも退けられている。


 ……というのがグレイズの紹介かしら。


 この町に来て暫く経つけれど、キョーコもケリーも来ていない様なのよねぇ。

 最初は広い街だからすれ違うこともあるだろうと、色々なところを探し回ったりして見たものなのよ。でも、見当たらないし、鑑定にも表示されなければそれらしい情報も入ってこない。……そもそもあの二人がいたら普通に目立つと思うから、誰かが見掛けたら絶対話のネタになっているだろうと思うのよね。

 とは言ってもねぇ……流石異世界というべきか、猫耳やしっぽが付いた様な人達や、明らかに肌の色があたしの知っているのとは違う、半ば病気みたいな痛々しい色付きの怪しい連中がいるし、髪の色もカラフルな一般人とかがいるから、これじゃ普通の人が怪しいというか、怪しいがデフォ? ……軽く頭痛を感じる程よ。


 あたしは幸いにしてクンルーさんの庇護下にあるから食事にもありつけているし、住まいも良い所に住まわせてもらっているし、仕事もしているから給料も入ってきているんだけれど、あまりにナチュラルに馴染んでいる自分にちょっと疑問も感じてはいるのよ。

 本当にこのままでいいのかしらって。


 でも二人の足取りを探るにも全く情報が無かったらどうしようもないでしょう? あの川の上流の何処かで油を売っている可能性も無きにしもだけれど、だからとここから動くのは愚策だと思うのよ。なんだかんだとあの川の終点はグレイズだから、グレイズまでやってくることは間違いないはずなの。というか、あたしが二人の立場ならグレイズを目指すわ。

 そこを考えるとここから動くわけにもいかないから、我慢してこの場所で仕事をしながら二人の到着を待つ他に無いかなと。


 この町に入ってからはギルドの資格もしっかり取ったわよ。

 何だか紆余曲折有ったけれど、あたしのギルドランクは黒ってことになったわ。

 ちなみに白→茶→青→黒→赤→紫って感じにランクの色分けがされていて、黒は三番目に高いランクって感じ。ただ、赤や紫って人はいわゆる生きた伝説みたいな人らしくてね、この町にもそんな人はいないって話だから、事実上の最高ランクみたいな感じ。

 まぁ、普通に驚かれるわよね。

 でも、このランクの本登録への課題がえげつなくてね。

 討伐依頼の出ていた黒ランクの魔物が最近海に出没する悪魔だとか言うから、あたしの想像では半魚人みたいな感じの魔物かと思ってたの。そうしたら、見事なまでに私の予想の遥斜め上を行ったわよ。いや、ある意味お約束って気もしないでもないけど、巨大なイカとタコよ。


 何故にセット?

 イカならイカ、タコならタコで良くない?


 もう、どうしてこいつらをセットで倒さないといけないのかしらと思ったけれど、登録のためにぶった切ってイカはスルメにしたし、タコは小麦粉と玉葱っぽい野菜でたこ焼きにして食べたわ。ソースの調合に手間取ったけれど、調合スキルが身に付いたし、出来もなかなか美味しかったわね。

 クンルーさんなんて流石は商人というべきかしら、しっかりと干物で利益上げてたし、たこ焼きもグレイズの新名物として売り出すとか言い出して、西洋文化圏ってイカやタコ苦手って聞くから、この世界でも同じじゃないかと危惧したんだけれど、蓋を開けて見れば大盛況で売り切ったわ。

 まぁ、あたしはキョーコやケリーみたいにガレージはまだ作れないから、処分してくれる分には大助かりだし、しっかりとボーナスまで来たから文句も無いわね。

 しかしまぁ、このイカとタコに町側は長年苦しんでいたそうで、感謝状まで頂いたので良い仕事をしたとは評価されたみたいだけれど、その後周囲にあたしを雇おうというスカウトマンがごっそり来てね。それはもう酷い嵐だったわ。

 あたしはクンルーさんに雇われてますって答えて逃げたんだけど、そうしたら今度は東方商業組合私設傭兵団所属のクンルーさん専属って肩書が付いちゃったわ。まぁ、実際色々と世話になっているし、鬱陶しいのが消えたから良いんだけれど。

 というわけで、現在のあたしの肩書きはそんな感じ。


 そうそう、肩書きが付いて気付いたんだけど、称号が変化したのよ。

 それまでは「聖剣使いのおネエ」とか中二臭い肩書きに色物付けてみました的な感じだったんだけれど、それが聖剣使いの傭兵に変わってちょっとまともになったの。

 でもね、このステータスにある称号ってギルドカードでは表示されないのよ。

 正しくは全部は出ないって事なんだけど、どういう訳か聖剣使いのおネエを例にすると、聖剣使いで切れるのよ!


 何この当たり障りのなさ!


 いや、そのお陰でおネエネタがババーンって周知されずに済んだけれど、その辺の配慮といい、一体何のために有るのかしら。

 

 そうそう、この町に来て一つ気になることが有るの。

 それは殺意かしら。


 何を物騒なこと言ってるのとか思ってるでしょう?

 あたしも最初は気の所為か程度に捨て置いたこともあったわよ。でも、実際に襲撃者が現れてみるとそうも言ってられないのよね。

 クンルーさんを狙って刺客が現れた事があって、ターレンとフェン君が対応してくれて事無きを得たけれど、その時のあたしは半ば放心しちゃって棒立ちよ。恥ずかしいったらありゃしない。

 そりゃまぁ、対人戦なんて考えたことも無いし、それが殺人だとか考えたら頭が真っ白になるのは平和な日本人してた人間からすれば無理も無いことでしょう?

 ただ残念なことに、あたしの弁解は現代では通用する事だとは思うんだけれど、それじゃここでは生きていけないのよ。


 それからのあたしは頭を切り替えたわ。

 だって、このままじゃあたしは普通に殺されちゃうもの。


 そんな容易くやられる様な柔な存在と舐められるのはここでは危険だと悟ったあたしは、剣術も習い直したし、あらゆる体術や武術の特訓を繰り返したし、苦手な魔法も魔力自体はごっそり有るっぽいからバンバン使いまくって鍛え直したの。

 そうしているとやっぱりこの世界って打てば響く様な反応があるというか、殺意からは魔力感知や気力感知、鑑定眼からは千里眼、様々な武術を習得したら免許皆伝、隠密行動とかを心掛けたら暗殺術と隠密のスキルが備わったし、魔法もなんとか上魔法にランクアップさせるまでは漕ぎ着けたから、死角らしい死角は消えたんじゃないかしら。

 二人と再会する前にくたばるとか良い笑い者でしょう?

 あの子達は転んでもタダでは起きない様な一癖も二癖もあるおネエなのよ?

 あの二人があたしより先に脱落する事は有り得ないのよ。

 

 そんな事を思いつつ現在あたしが何をしているかと言うと、クンルーさんを護衛して商業ギルドの東方商業組合ビルに来ているの。あたし的にはターレンさんも来て欲しかったけれど、今回クンルーさんが出席する会合に同伴出来る側近は一人だけって決まりがあって、必然的にクンルーさんの専属の中で最強のあたしが付き人って事になったのよ。

 この会合には東方商業組合のトップクラスが出席するいわば首脳会談だそうで、クンルーさんって実はグレイズでも相当なトップに立つ商人だったのよ。この会合に連れてくる様な付き人は皆護衛と相場が決まっているから、彼らの護衛でやってくる様な連中はグレイズの冒険者ギルドでもトップクラスの人間って事になる様ね。その中でも黒持ちはあたしだけだから、会合内でも最強の護衛を連れているクンルーさんに手を出そうという愚か者はいないとは思うけれど、油断のならない会合ね。


 でも、個人的にはそんなトップクラスがどんな話をするのかにも興味はあるわよ。

 どういう訳かクンルーさんからは護衛としてだけでなく助手として助言も求められたから、あたしの発言の機会は無いにしても、何かしら頭を使う場面があるという事かしら。って、あたしはそんなに悪巧みは得意じゃ無いんだけど。こういうのはどちらかというとケリーとかケリーとかケリー辺りが適任だと思いつつ、まぁ、いっか? ……ってな具合に来ちゃってるわけ。


「ガリ殿、いよいよですぞ」

「はい」


 横を歩くクンルーさんが小声で話し掛ける。

 目前のドアの向こうが本日の戦場ね。

割と元気に暮らしているガリです。

何が有っても良いようにと自分を虐めまくる感覚はガリならではでしょうか。

次は会合に続きます。

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