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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
76/157

T05 全部!?

T編でーす。

 ギルドの建物は城下町に出てすぐだった。

 割と目立つ建物で、街の中でも一際立派な石造りで高い建物だった。


 この町の殆どの建物が精々二~三階建のところを五階建なんだから、嫌でも目立つよね。

 クラウスの話では一階は飲食店で、二階に登録や依頼受注や報酬受取の窓口、三階は以降は宿として機能しているそうなんだ。

 田舎から出てきたギーは、ここの宿には泊まったことが無いって言っていた。

 この宿はランクの高い冒険者が泊まる高めの宿らしく、初心者レベルの人はもっと安い庶民的な宿に泊まるそうだ。僕達も宿を探すとしたらそういうところを探した方が良いんだろうな。


 中に入ると一階は確かに飲食店で沢山の人がわいわい話しながら食事をしていた。

 僕らが入ると何人かの目線を感じたけれど、すぐに興味を失ったようで何事もなかったかのように会話したり食事を続けている。

 部屋をちらちらと見回してみると、正面にカウンターがあるのはよくある風景(?)かなと思うけれど、左側の壁に沢山の紙が張り出されていて、その周囲に人が立って見ているのが目に入る。

 たぶん、依頼が掲示されているんだろう。

 右の壁側には階段があって上に登れる。

 僕らは右の階段に登って二階に上がる。

 その間も僕らのことをちらちら見る視線を感じたけれど、よくあるファンタジーネタのギルドで絡まれるといったことは無かった。


 二階に上がると廊下になっていて、手前から依頼受注窓口、報酬受取窓口、登録窓口という順番で部屋が分かれている。

 僕らは一番奥の部屋に向かう。

 一番奥の部屋のドアを開けると、前の方に応接椅子のセットがあって、そこのテーブルの上にベルが置かれている。部屋の奥にはドアが見えることから、ベルを鳴らしたら誰かが来るのだろう。


 僕はテーブルのベルを鳴らした。


 程無く「はいはーい」と軽い調子で若いお姉さんが入ってきた。

 城でも何人か変わった髪の人を見たけれど、桃色の髪の人は初めてで内心驚いたけれど、とても綺麗なお姉さんで、長い薄桃色の髪を綺麗にリボンで束ねているのが印象的。



「あ、どうぞ、お掛けになって」



 お姉さんが笑顔でそう促したので椅子に座ろうと思ったけれど、この椅子に全員は座れそうにない。

 どうしようかと思っていたら、イズが手を僕の手を引いてさっさと椅子の方へ向かってドカッと座った。その後ろからウラもやってきて僕に頷くから、僕はクラウスとギーには悪いけれど座ることにした。

 二人は椅子の後ろに立っている。

 僕らが座ったのを見ると笑顔で彼女が話し始める。



「ようこそ冒険者ギルドへ、本日ご登録なさるのは5名の皆さんですか?」

「いえ、僕が登録するだけです。他の皆は既に登録しているので」

「まぁ、左様でしたの。畏まりました。では、登録事務に入りたいと思いますので、少々お待ちください」



 彼女はそう言って離席すると、後ろのドアに戻っていった。

 そして程無くいそいそと書類を持ってくると、僕に書類の内容を説明する。

 それら書類にはギルドのルールについての説明があり、それらルールを守れるかということの宣誓書として最後に署名を促される。

 僕がそれに署名すると、その瞬間に書類の僕の名前のところが光りだして、その光が紙全体に行きわたると「ポン」という音と共に煙が出て紙は一枚のカードになっていた。

 大きさはポイントカードとかと同じくらいの僕にもお馴染みのサイズかな。



「さぁ、どうぞお持ちください」



 彼女に促され、僕はテーブルの上のカードに触れる。

 すると、カードに緑色の葉っぱが表示され、カードの縁が赤く縁どりされた。

 その変化にお姉さんは勿論、周りの仲間達も注目しているのが分かる。



「あの、ミシマ様は、本当に初めてのご登録なんですよね? あの、もし紛失をされての再発行をご希望でしたら、その様に対処させて頂きますがお間違いございませんか?」

「はい。初めての登録です」

「そうでしたか。では、引き続き説明させて頂きます。こちらのカードですが、まだ仮登録証です。本登録は我々のギルドで出している依頼をクリアされた時となりますが、その期限は本日から一月以内です。宜しいですか?」

「はい。あの、依頼はどの依頼でも良いのですか?」

「えぇ。ただ、クリアした依頼の内容で貴方のランクが決まります。クリアできる能力の参考としてカードの縁どりやシンボルの色で判断できまして、一階にございます依頼の書面に押されておりますギルドシンボルのスタンプカラーがカードと同じでしたら、その依頼はクリアできるものとされています。……とはいえ、赤縁の緑色ですからねぇ。うちの依頼でクリアできないものは無さそうですが、最高ランクでも黄色ですから、とりあえず黄色をクリアして頂ければカードの本登録処理を致しましょう」

「分かりました。では、依頼を受けてクリアしたらまたこちらに来れば良いですか?」

「えぇ。クリア後は通常は報酬窓口に行くのですが、初回はこちらの窓口で受け付けますので、こちらにお越しください」

「はい。では、これで」

「えぇ、ご武運をお祈りしておりますわ」



 登録窓口を出た僕らは一階に降りて掲示板の前に向かった。

 先程はあまりよく見てなかったけれど、色々な格好の冒険者がいた。

 いずれもいかにもって感じの大きな剣とかを背負った人がいたり、魔法使いっぽい格好の人がいたりとそれらしい雰囲気がある。

 微妙に気が引けるのを感じつつも、その中をわしゃわしゃかき分ける様に前を目指す。

 掲示板は大体学校の黒板くらいの大きさがあるんだけど、そこに所狭しとB5サイズくらいの紙が貼られていて、依頼の内容や報酬に先ほどの話に出ていた色々な色のスタンプがついているのが見える。

 殆どは赤か橙色のスタンプが押されていて、僅かに黄色のスタンプの依頼が見える。

 僕は黄色のスタンプの依頼に注目する。



 傭兵求む。日数7日。報酬金貨30枚。

 詳細:ラインツベルンからローブルグの間の傭兵業務。グリム街道を通り、ローブルグへ向かう間に起こりうる危険から保護、討伐業務。食事は依頼者支給。依頼主:アイン商会。


 討伐求む。期日なし。報酬金貨3枚。

 詳細:グリム街道のドレスゲン平原に出没したタイゲーバーンの討伐。現在三頭の出没を確認。討伐者には一頭当たり3枚の金貨。食事は各自用意。依頼主:ラインツベルン冒険者ギルド


 討伐求む。期日なし。報酬金貨1枚。

 詳細:グリム街道のヤーフェンホーフに出没したシュバルツァングの討伐。群れで行動しているのを確認。討伐者には一頭当たり1枚の金貨。食事は各自用意。依頼主:ヤーフェンホーフ村長



 どれもグリム街道というところに関係しているものばかり。報酬額が低く書かれているものも一頭当たりと書いているあたり、相当数の出没が有り得るからということなんだと思うから、実際の価格は不明だし、そもそも頭数が多かったら厄介なんじゃないか?



「ねぇクラウス、クラウスならあの三つの中でならどれを選ぶ?」

「あの中であれば、タイゲーバーンを選ぶだろうな」

「なんで?」

「そもそもタイゲーバーンは東方の魔物でこの辺ではそれほど見ない種類だ。しかもタイゲーバーンは通常群れでは行動せず大抵一頭で出てくる。それが仮に群れていたとして三頭以上の頭数を考慮に入れても五頭を超えることは無いだろう。その上でこちらの戦力と比較するならば現実的な範囲ではないか」

「ふーん。んじゃ、ウラやイズならどれを選ぶ?」

「私はシュバルツァングかしらねぇ。アレはそんなに強くないから数出てきても対応できるでしょう? 頭数次第ではむしろ大儲けじゃないかしら。」

「私はクラウス殿と同じタイゲーバーンだな。理由も似たようなものだ」

「うーん、んじゃ、ギーは?」

「僕なら……傭兵かな。報酬も良いし、食事の支給有りって嬉しいからね」



 うーん、タイゲーバーン二票かぁ。

 でも、イズの言う理由も悪くないよな。

 弱いなら数を相手にしても安定して戦えそうだし。

 でも、ギーの言う食事の用意は確かに有り難いことなんじゃないかなぁ。

 うわぁ、どれが良いんだろう。

 ……でも、待てよ。グリム街道沿いに出るなら、全部受注してしまえば丸ごと稼げるんじゃないかな。

 僕の力試しというのもあるけれど、みんなとどこまで戦えるのかというのもあるし、一度旅をしてみないとそういうところも含めて分からないんじゃないかな。

 だったら、一石二鳥を狙っても良いよね。

 よし、決めた!



「みんなの意見を参考にした結果だけど、ギーの希望した傭兵募集に志願しようと思う」



 ウラやイズ、それにクラウスも驚いた顔をして僕のことを見ている。

 ギーは自分で選んでおきながら何故か不安げな表情だ。

 ギー、君はそれで大丈夫か。



「っていうかね、正しくは全部」

「「「「全部!?」」」」

「うん、みんなの意見からすればタイゲーバーンが不確定要素が少なくて良いんだと思うし、シュバルツァングも強さから考えたら楽なんだと思うけれど、そのどちらとも戦う機会があって食事も支給される傭兵業は道中の補給を考えたらお得でしょう? だから傭兵をメインに二つの討伐も受注しておけば、どれも同じグリム街道沿いの話だから討伐機会が巡ってくると思うんだ。だって、そういう危険を感じているから傭兵を募集しているんだろうし」



 僕の話にクラウスはなるほどと頷き、イズは大胆ねぇと言いながらカラカラ笑ってその話乗るわと同意した。ウラは命知らずなと零していたけれど、仕方ないと同意していたし、ギーは苦笑いしつつそういうことかぁとちょっと落ち込んでいた。

 おいおい、しっかりしてくれよギー。

 なんだかんだとみんな同意してくれたから、僕達は依頼を全部窓口で受けることにした。

 幸いというべきか、僕たちのランクと同じグループがたまたまいなかったおかげで受注できる人がいなかったそうなので、3つとも全て受注することが出来た。

 あとは傭兵の依頼主のところに行くだけだ。


 自分で決めておきながら確かに大胆だったかなと思ったけれど、温いことしていても多分育たないってのは某ゲームの世界でも見ているから、こういう場合は大変でもそれなりの戦いを経験しておいた方が良いと思うんだ。

 いわゆる閃きとかを考えても、ある程度の強さの敵と戦い続けないとレベルが上がっただけでは閃かないということだし。

 

 半ば自分で追い込んでいる気もしないでもないけれど、僕達の本当の旅が始まる。

ちひろくんは大胆に全部にしちゃいました。

面白がって同意したイズとは逆に、小心者のギーはその話に嫌だとは言えず泣く泣く同意です。クラウスとウラは方針が定まればそれに従って動くだけと意に介してない様子。

遂にちひろ達の旅も始まります。


次も閑話のつもり。

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