T04 僕はみんなの弟分
引き続きT編です。
城門を抜けると坂道が続き、視界の先に城下町が広がるのが見える。
この国に来てから城の上からしか見たことが無かった城下を初めて巡ることが出来る。
なんだかんだ言っても自由に歩けるというのは嬉しい。
ラインツベルン帝国の帝都クライフェルトは、この世界で一番大きな町と言われているらしい。歴史的にも千年続く都で、様々な出来事がここで起こってきたと教えられた。確かに見たわす限り向こうまで町が続いていて、かなり遠くに城壁が出来ているのが見える。
ちなみに城壁は全部で三つあって、城の周囲を囲む城壁の次は貴族街を囲む城壁、その次が市街地を囲む城壁になっている。
貴族街自体はそんなに広くないけれど、建物が豪華で街並みも綺麗に整備されているから町の雰囲気は上品だ。ここでの移動は殆どの人は馬車で移動しているそうだけれど、僕らにはそんなものは用意されていないから徒歩であるくしかない。
服装も貴族の人達の服装は豪華で綺麗な仕立ての服を着ているものだから、僕たちの様な茶系の集団がここを歩いているのはとても目立つんだ。
それも貴族街を出てしまえば紛れると思うけれど。
「さて、勇者様。この先をどういたしましょう。我々は貴方に従うことが命令されています」
貴族街に入ってからクラウスがそう話しかけてきた。
あぁ、やっぱり命令なんだよね。そうだよね。
「まず、冒険者ギルドに行きたいと思っている。そこでライセンスを取らないと、この先進めないと聞いたからね」
僕の言葉に彼はふむふむといった感じに頷くと返答する。
確かに無表情で何を考えているのよくわからないから不気味かも。
イケメンの無表情怖い。
「左様でしたか。我々王宮勤めとなる者は、予めギルドにて一定のクラスのライセンスを取得することが条件となっておりますので、既に取得済みです。ですから、勇者様の取得をお済ませになられれば城下を出る準備は整うものと思われます」
事務的だけれど分かりやすいから良いかと割り切る僕。
そうか。確かに王宮に務めるなら何らかの試験みたいなのクリアしてそうだもん。
それがギルドのライセンス取得だったとしても、何も不思議なことは無いか。
彼らは多分国外に遠征したりといった任務もあるかもしれないし。
「あのさ、僕はたぶん皆さんの中で一番年下だと思うんだ。だから様付とかやめてチヒロで良いよ。城でもそう周りにお願いしたんだけれど、みんな従ってくれなかったから落ち着かなくてさ。もう城も出たことだし、これからいちいち勇者様だの言われたら悪目立ちするだけだと思うんだ。だから僕はみんなの弟分って感覚で良いよ。実際、僕よりみんなの方がずっと強いだろうし、ずっと色々なことを知っていると思うからさ」
僕がそう話したら、クラウスの目が一瞬大きく開かれたんだ。目力怖いから。
でも、その後唐突に微笑みを浮かべたんだ。
「では、チヒロとお呼びします。私のこともクラウスとお呼び下さい」
彼がそう告げると周りのみんなも笑顔で話しかけてきた。
「フフ、では、わたくしはイズとお呼びになって、チヒロくん。それともおねーさんが良いかしら?」
「わたしはウラで良いです」
「あぁ、僕もギードまたはギーで良いですよ。チヒロ様」
なんだか急にフレンドリーになったんだけれど、名前呼びをお願いするのってそんなに良いことだったのかなぁ。それなら城の皆もそうしてくれたら良かったのに。
それからは彼らと仲良く話しながら道を進んだ。
ちなみに歩く時も陣形を意識して歩くことになっている。
僕の前はギードことギーが立って、僕の後ろがイズ、両隣にクラウスとウラが歩く感じ。
丁度十字型に固まるこの陣形をクロスディフェンダーっていうんだけど、僕を中心として前方と左右に防御力が高まる効果が発生するんだ。この効果を精霊の祝福と呼ぶらしいんだけど、陣形には精霊を呼び込む効果があるらしくて、一定の形状を定めると、それに合わせた精霊が僕達に力を貸すそうなんだ。
クロスディフェンダーでは土の精霊が物理防御を強化する効果があって、盾役のギーが土の加護持ちなので通常より倍の効果が見込めるらしい。ちなみに風の加護持ちが効果の適用位置に居ると効果が半減しちゃうそうだ。
これの場合だと前と両サイドだね。
陣形は戦闘での基本で、陣形を駆使することで自分の持つ能力以上の効果を期待出来たり、敵より早く動くことが出来たりと有利に進めることが出来るっぽい。
この陣形の効果は5人で組むのが最大で、それ以下でも以上でも効果は増えないそうなんだ。だからパーティーを組む場合は5人と決まっているらしい。
ようやく彼らと普通に会話が出来るようになった。
クラウスは相変わらず無駄口は叩かないというタイプみたいだけれど、尋ねれば答えてくれるってことは分かった。
ギーはとっても温厚で体格に似あわず気が弱そうな感じで僕とは性格的に合いそう。
ウラは神官だけあって真面目だけれど、イズが僕をからかって間違ったことを教えそうになるとしっかり諌めて訂正させていたりと、このチームのお母さんポジションかも。
そして、イズは容姿とは裏腹なくらいに奔放な性格の様で、どうも宮廷では猫を被って過ごしていたらしいけれど、いい加減退屈になってきたからこの旅に志願したらしい。……自由の為に僕と旅をしようと考えるとは、随分と酔狂というかなんというか。
四人のことをなんとなく理解した頃には貴族街を出た。
「うわぁ……」
城下町に出たんだけれど、最初の印象は匂いだ。
うーん、そこらじゅうにう○こが落ちてるからなんだけど、一応礼節上大通りには捨ててはいけない決まりらしくて、その分路地とかにはばんばん捨てられる感じっぽい。
「ね、ねぇクラウス、なんで貴族街はこの匂いがしなかったの? 同じ街なら匂いが風で飛びそうなものだと思うんだけれど」
クラウスは平然とした顔をしているけれど、ギーなんかは困ったような顔をしている。
ウラとイズはハンカチで鼻と口を隠しているよ。
「貴族街と平民街は魔法的に仕切られているから、平民街の匂いが貴族街に来ることはない」
「そうなんだ。それにしても酷い」
こんなだから中世ヨーロッパは香水が発達するわけだよな。
はぁ、こんな匂いを毎日嗅ぎたくないと思った気持ちや、う○こを被りたくないと傘をさす気持ちが良くわかったよ。
とはいえ、どうしようもないから、まずはギルドでライセンスを取って、さっさと街を出ることを考えるしかないよね。
旅の始まりがまさかこの匂いと共に始まるとは、誰も思わないだろうなぁ……。
僕は足取りもとぼとぼとギーを先頭にギルド詰め所を目指すのだった。
チヒロ君は仲間達と城下に降りてきましたが、そこで名前は呼び捨てでと頼みました。
仲間達は快く応じてくれました。
次も閑話です。




