表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
71/157

068 後始末 中編

前回と視点が変わります。

 痩身の村長が息子に支えられて広場に出てくると、事のあらましを既に聞き及んでいる村民達がどう反応して良いのか困惑した表情を見せつつ集まっていたわ。そもそも普段見ていた村長とはあまりにかけ離れた変わり果てた姿を前にしては、誰だって言葉を失うものよね。


 ただまぁ、この場に立つ私も正直体力的な話を言えばどうしようもない状況よ。なんせ、ステータスを見たらLPが1だもの。他もガス欠同前。……もしかしたら死んでいてもおかしくなかったんでしょうね。

 懸命に私を回復させて繋ぎとめてくれた二人には本当に感謝ね。


 さて、問題はインディがラズウルドオルムと関係しているとバレてしまっていることかしら。

 芝居を打って欲しいとは言ったけれど、まさかそのまま正体晒すとは思っていなかったのよねぇ。とはいえ、そんなこと言っていられないくらいシリアスな状況になっちゃったから仕方がないけれど。


 その時、唐突にインディが出したのと違う水龍が現れたわ。

 インディは出していないし、どういうことかしら。

 この出現に村人達は驚きの声を上げ、自警団の人達が武器を構えたわ。

 そこに村長が声を上げる。



「皆の者、静粛に。自警団の皆は武器を下すのだ。この方こそ、我らと契約された水神様である」

『……いかにも、我がその方等と契約したラズウルドオルムである』



 この声に村人達は静まり、自警団も矛を収めた。

 村長はアレンに支えられながら龍の方へ近付き、アレンの手を解くとその場に跪いた。



「水神様、この度の件は私共の一存によるものであり、決して村の総意によるものではありません。お怒りのこととは存じますが、どのような責めをも私は受ける覚悟でございます。どうか村を、民をお救いくださいませ」



 いつも見ていた尊大な村長とは違いひたすらに低姿勢な彼の姿を見て、村民達は目を疑うような表情をしている。身形も見る影が無いのに、その態度まで違ったら人違いのレベルでしょうよ。


 まぁ、無理もないわね。


 たぶん、成り代わらなかった本来の村長というのはこういう性格の方だったのでしょうね。

 まぁ、そうでもなければアレン君みたいな子は出てこないとは思ったけれど。

 水龍は彼の方を見ると、ゆっくりと話し始めたわ。



『我が契約の始まりは、我らが地ラズウルドへと侵入した愚かなる人間達を罰することから始まった。本来であれば既に滅んでいたであろうこの村を、当時の村長による我に贄を捧げる代わりに村の平和を約束してほしいという願いを聞き入れ、今日に至った。

 しかし、我が契約の不備を利用し、我を騙るものが現れて契約が歪められていたことで此度の件と相成ったことは至極残念である。我が希望するのは、その方等がラズウルドへ入らぬことであり、贄を欲していたわけではない。だが、この贄がその方等にとって大きな重荷となり、此度の件を作り出す要因となったことは重く見ている。

 そこで我は思う。契約を終了することを。そして新たな契約を提案する。贄を受けるのをやめ、その代り侵入者を見つけ次第、村を滅ぼすこととする』


 

 龍の契約更改の話は皆にとても大きな衝撃を与えた。

 つまり、これの意味するところは滅びと言っても過言ではないからね。



「水神様、その内容は村民に限った事なのでしょうか。我らの者以外が立ち入るのを防ぐことは、困難というほかにございません」

『……ふむ。其の方の言い分も理解できないことではない。だが、我が望むは領域への侵入者の排除にある。少なくとも、其の方らの村周辺の責任を負うことくらいは出来よう。そもそも、この更改は其の方等が起こした問題に対するものであり、我の責に因らない』

「……分かりました。では、村の周囲を我々が保護致します。ただ、その範囲は水源地より三里の範囲と致しましょう。」

『わかった。では、これにて更改とする。其の方等の行動に期待する』



 龍はそう告げると、煙となって消えてしまった。

 私は鑑定眼で何が起こっているのかは理解したけれど、この世界の距離に里が使われているのね。

 一里が確か四キロ程だから、三里で十二キロ程になるかしら。

 そこそこ広いエリアだけれど、野山を管理すると考えれば村長の判断は現実的で妥当なところじゃないかしらねぇ。

 とはいえ、村民達は龍と村長のやり取りに唖然としている感じかしら。そして、顰め面して村長をあからさまに睨む視線もあるわねぇ。そりゃ、村民にとっては現状の規模を考慮すると厳しいと感じるのかもしれないけれど、ペナルティであると考えればそれなりに厳しい処置じゃないと辛さを実感してもらえないものだし、難しいところかしら。

 

 村長は立ち上がろうとするも、よろけて倒れそうになったわ。

 アレンはそれを支えるけれど、彼は父親の勝手な行動をどう捉えて良いか悩んでいるのか、奥さんの方を見た後きつく目を閉じたわね。……あの様子だと相当に堪えているわ。

 そこに彼らに追い打ちをかけるように村民達から声が上がった。



「おい、俺達には一言の断りもなくまた契約を交わしたじゃないか!どうしてくれるんだ? 三里の距離を監視するなんざ、自警団の人数じゃ全く足りないんだぞ!」

「勝手に決めて、また外の人間を貶めるってのか!そんなものの片棒は担がねえぞ!」

「「そうだ!そうだ!」」



 一度始まってしまうと、もう堰を切ったように雪崩を打つとでも言うべきかしら。

 止め処なく続く批判の声の嵐は村長一家を追い詰めていく。

 それまでじっと目をつぶって我慢していたアレンだけれど、耐えかねたのか口を開いたわ。



「皆の者、静かに聞いて欲しい」



 彼の声に批判の声が止んだ。

 皆、アレンが何を言うのか注目している。



「此度の件は我が家が招いた不祥事だ。この責は全て我が家にあることは間違いない。よって、全ての責任をとり、我々は村を出ることとする」



 村を出るという決断は彼にとっては重い決断だったでしょうね。

 でも、この状況でその言葉はちょっと頂けないかしら。



「何を言っている!お前達が勝手に決めた契約を、お前達が去った後に俺達が守るっていうのか!約束だけして逃げるなんて許さねーぞ!!!」



 ほらね。

 予想通りというべきか、彼らにとって故郷を離れるという決断は重い物であったとしても、住民達からすれば傍迷惑な置き土産を置いて行かれて逃げられるとしか思わないわよね。


 私は一息溜息を吐いたわ。


 分かっていたことだけれど、こんなにもその通りに動くと村長さん達が可哀そうに見えてきたから。

 私はパンパンと手を叩きながら村長一家と住民達の間に立ったわ。



「はいはい、皆さんちゅーもーーーく!」



 突然私が手を叩いて前に出たものだから、住民達は口を半開きにしながら間抜けな顔をしてこちらを見ているし、村長さん一家も目が真ん丸ね。



「ちょっとここで物事を整理してみましょうよ。そもそも皆さんの中で被害に遭われた方はいらっしゃいます?」



 私は村民の方を向いてそう呼びかけた。

 村民達は周りに目を向けながらひそひそと話しているけれど、威勢良く「はいはーい!」って手を上げたり前に出てくる人はいないようね。

 そりゃそうよ。



「いませんよね。だって、村長さん一家は古くからの村民を守るために魔族と新たな契約をしていたんですから。村民思いの良い村長さんだと思いませんか? 自分達は契約履行の為に魔族へその身を捧げ続け、古くからの村民には一切手を出させなかったんですよ。凄いことだと思いません?」



 私の声に村民達は先程までの勢いを無くして動揺している様子。

 でも、正しい事実を知っての上で判断しないとね。

村長が水神と新たな契約を結びました。

それに対する批判の声が村民から上がると、アレンは村を出ると宣言します。

しかし、村民達からしたら勝手に約束して逃げるという話にしか聞こえません。

そこに割って入ったキョーコさんです。


次も後始末が続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ