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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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061 水神祭 前編

ついに水神祭です。

第61話「水神祭 前編」


 水神祭当日日程……夕方5時より広場にて決起集会。

 進行は下記の様な感じ。


 村長挨拶→供物参上→水源地行列→供物入場→水神降臨→供物献上伝達→終了散会。


 夕方より開催予定ね。

 白装束を着て生贄は向かう。道中は保護者同伴オーケーよ。

 広場で村長が杖を振るうと生贄は意識を失うので、その状態で箱に収めて水源地まで荷車で押していくという話。ただこの祭り、子供の参加は出来ない。……これが儀式についての簡単な説明ね。



「ジェシー」

「姉ちゃん……」

「……」



 兄弟が儀式の衣装に身を包んだジェシーちゃんとの別れを惜しむ様に抱き合って泣いていたわ。私達は彼らに掛ける言葉も見付からず、その様子を眺めているしか出来なかった。


 軽々しく彼らになんとか出来ると言う事は出来たとは思うけど、そういう期待が何らかの不測の事態で裏切られる結果とならないとは言えないから、私達がすべきは不言実行有るのみね。


 村の広場で行われた集会で村長が演台に上がって口上を述べた後、音楽が鳴り始めたの。独特の音色の民族楽器の演奏が始まる中、男達によって棺の様な箱が用意されたわ。


 箱の用意が終わると厳かにジェシーちゃんが呼ばれたの。

 彼女は凛とした表情で返事をしてその箱のもとへ向かったわ。

 箱の前に立つと儀式の衣装に着飾った男達が四人ほど彼女のまわりに集まって、その後演台を降りてゆっくりと村長が彼女のもとに歩いて行く。


 彼女の前に立った村長が、何やらもごもご小声で呪文の様なものを唱えた後で杖を振るうと、その杖が青白く光りだして、その杖の先でそっと彼女の額を小突くと、彼女は唐突に気を失ってその場に崩れそうになったわ。

 そこに彼女の周りに立つ四人の男達が彼女の体を支えて抱え上げ、儀式の音楽とともに箱に収めたの。箱は男達によって抱え上げられると、これまたゆっくりとした動作で荷車の上に乗せられたわ。

 これで生贄の運び出し準備は完了といったところかしら。



「出発!」



 威勢のいい声で衆人が監視する中、水源の洞窟への行列が歩き出す。

 先頭を歩くのは村長の息子アレン。彼は儀式の独特の民族衣装に身を包み、武装して前を歩く。いわば護衛の役割を担っているのよ。彼の手には松明が握られているわ。


 そのすぐ後ろを民族楽器の笛や太鼓を叩く人達が歩いて、その後ろを男衆が引く生贄の箱が積まれた荷車が行き、最後尾に家族が参列する。


 私は家族枠で彼女の兄と参列したわ。


 子供は家族でも参列出来ないから、弟君を含めてインディとパトラッシュもこの場にはいないわ。

 あの村長、最初は私の参加も渋る気満々だったんだけれど、彼らの保護者として家も買い取って住まわせている現実を無視するわけにもいかず、渋々許可を出したの。


 仮に拒否されても透明人間で追えば済む事だからこちらに困る事は無かったけれど、出来れば普通に参加したかったからとりあえずは一安心ね。……というわけで、私もこの村の民族衣装を用意して参列してるってわけ。

 衣装だけど、この衣装は先日編んだコースターサイズの編み物もタスキの様に使われていて、この村の普段の服装からしたら随分と華やかよ。まぁ、行事ものに使うからこその晴れ着って感覚なんでしょうけど。


 水源の洞窟まではゆっくりとした歩調で進んだわ。


 夕暮れ時だから松明を片手に持って進んでいるので炎が揺らめいて良い雰囲気よ。やっぱりこういう行事ものって上がるわよね。お神輿をわっしょいやりたくなる様な暑いムンムンな雰囲気とかそそるじゃない?


 え、それは視点が不健全ですって?

 おネエにそれは愚問よ。



 水源の洞窟に到着する頃には日が暮れたわ。

 先頭に立っているアレンさんを見ていたら、何だか面食らった様な様子ね。……まぁ、見るも無残に崩れ去っていた洞窟が綺麗なトンネルになっているんだもの、驚かない方が不思議なくらいだとは思うけれど、彼はどっちを知っていての驚きなのかしら。

 そんなことを思っていたら、他の村人達もざわざわと話し始めたわ。

 話している内容はどうなっているんだとか、水神様の神秘だとか色々だけど、過去の洞窟より変わったという印象を共通して持っていることは間違いないかしら。



「し、静まれ!これより洞窟へと入る。水神様の聖域故静かに行動するのだ!」



 彼の言葉の後、また行列は進み始めたわ。

 道は綺麗に整備してあるから荷車を通しても余裕のよっちゃんよ。

 私達は何事も無く洞窟の奥深くに進んでいったわ。

 まぁ、一度来ているから何も無いってことは分かっているけれど。

 そうこうしていたら、洞窟の最奥の手前で村長さんが立っていたのよ。

 あらら、村長さんは村にいるんじゃなかったかしら?

 遠目に見えた彼の様子は頻りに中へ入ろうと試行錯誤している感じかしら。

 ……ふふん。やっぱりねぇ。


 アレンさんも彼に気付いて驚いている様子ね。

 彼が声を掛けたわ。



「父上、何故こちらに。てっきり私は村にいるものと」



 声を掛けられた村長は見るからに落ち着かない様子ね。

 私達の接近を見て居住まいを正すと、何時もの尊大な態度で答えたわ。



「お前の初めての仕事振りが気になって来たまでだ。よくやっているな。では、私は帰る」



 彼はそう言って帰ろうとしたわ。

 でも、それじゃ楽しくないじゃない?

 折角来ているんですもの、逃す手は無いわ。

 私は彼の前に出ると腰に手を当てて立ってやったわ。

 これ見よがしに尊大に。え、いつもの彼へのあてつけだって?

 そうよ。うふ。

 それでも口調は飽く迄丁寧に、顔は営業スマイルで。



「あら、村長さん。折角ですから息子さんの晴れ姿を最後まで見届けて行かれてはどうです。村長さんは経験者ですから、これからの儀式の引継ぎをする上でもご一緒された方が安心だと思いますよ?」



 私の声に周囲の村人も同様の意見の様で、是非村長さんもご一緒にと期待の眼差しと言葉で相槌を打ってくれるわ。

 さて、どうするのかしら?

 彼は手を前に出して断った。



「ならぬ。私は儀式から身を引いた身。この場は息子に譲ったのだ。村に戻る」



 そう拒否する彼だけど、私は彼のもとへ静かに近付いて腕を掴んだわ。

 私の唐突な行動に彼の顔が歪む。



「何をする」

「いえ、つれないことを申されるから、私が強引にでもご一緒して頂こうかと思いまして。それなら村長さんも面目が立つでしょう? 私が無理矢理誘ったから仕方なくって。さぁ、行きましょう!」



 彼の顔が驚愕に歪む。

 周囲の人達はそれは仕方ないと笑顔を見せて、私達のやり取りを見守っているわ。

 私は彼の手を引っ張って最奥の間に入ろうとすると、村長は脂汗をかいて必死に止まろうとしている。私はそれを力任せにずずいと中に引っ張り込んでやったわ。

 彼が思わず叫ぶ。



「やめろぉお!!!………へ?」



 何事もなく中に入った村長。

 村人達も村長さんのあまりの拒絶振りに驚いている様子。

 彼は呆然として立ち、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているのよ。

 そうよね。有り得ないことが起こったのだものね。



「あら、どうしました? そんなに汗をかいて。何かありまして?」



 私の声に彼は姿勢を正すけれど、さすがに噴き出した汗までは引っ込めきれないわよね。



「いや、何でもない。……要望通り、しかと見届けよう」



 懐から出した布で汗を拭いながら答える彼に、息子のアレンは喜色満面ね。

 そりゃいつも尊大で厳しいお父様が彼を認めてくれている様な話だもの、無理もない。

 村人達も呆然としていたけれど、流れが正常化して彼らのやり取りを見てからは笑顔ね。



「有難うございます!父上!」

「……さぁ、私が見ている。儀式を進めよ」

「はい!」



 アレンはその後はテキパキと儀式を進めたわ。

 男達に荷車から箱を下ろさせると、それを池の前に持って行ったの。

 そして、男達が奉納の舞を楽隊と共に踊ったわ。

 その踊りも終わると、アレンは池に向かって呼び掛ける様に言ったの。



「水神よ、我らの安寧を約束する契りを続ける証として、我らが用意した贄を受け取り給え!」



 徐々に水面が泡立ち始める。

 淡く青白く光る水面からボコボコと泡が浮かび上がり、それが徐々に形を作っていく。



「おぉ……」



 周囲から感嘆の声が漏れたわ。

 私達の目の前には、宝石の様にキラキラと輝く一匹の青く透き通った龍が出現した。

 流石の私も実際に自分の目でこんなものを見られると思うと、妙なわくわく感があるのは正直なところよ。でも、想像しているよりはファンタジーというより、恐怖映画の恐竜とかの類に見えるデザインかしら。間違っても良いものとは混同しない感じ。

 実際、村人達の反応もどちらかと言えば恐々といった様子よね。

水神祭当日になりました。

滞りなく行事は進行しています。

水源地での祭祀には参加しないはずの村長さんは、何故か来ていました。

折角だからと同行をお願いしたキョーコですが、強引に引っ張り込むまで拒否の構えでした。

そして、問題の水神様のお出ましです。


次も続きます。

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