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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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059 村長への挨拶 後編

村長への挨拶の続きです。

 確かに私の物語を躱すには丁度良い予防線だけれど、私がそれを想定していないとでも?



「生贄……ですか。それは本当に必要なものなのですか? その、何かその対象となる証の様なものがあるのかと。何もないなら彼女である必要はありませんよね?」

「必要だ。この掟を破ろうとしたことで、村は幾度も危機に瀕した。掟を破ることは出来ない。水神の贄となる者には水神の紋章が現れる。ジェシーにはそれが有るのだ」



 出たわね。水神の紋章。

 村長は知っていることは当然だとして、さて、この人は何処まで知っているのかしら。



「それは大変ですね。私も村の掟と言われましたら何も口を出すことは出来ません。ただ、それは本当に水神の紋なのでしょうか」

「客人、何が言いたい」



 彼の目が鋭くなる。

 私はポーカーフェイスを崩さず笑顔で話し続ける。



「いえね。そもそもその紋章が水神のものだと誰が教えてくれたのかと」



 村長は私の言葉に何か反応するでもなく、時が止まったように長考した。

 私は彼が何か言うのを待っていたわ。

 暫くの長考の末に彼が出した言葉は。



「それがいつ始まったのかは分からぬ。伝承故にそうであったとしか答えようが無いからな。だが、その紋を付けたものが拒絶されたことも無い以上、それが水神の思し召しと考えることに異論はあるまい」



 なるほど、都合の悪いことは知らないが一番お利口さんよね。

 実際、百年も昔に作られただろうものを、現代の人間が正確に知っていることは稀よね。それこそ伝承する書面などが残っているならともかく、それら資料は村に存在しないことは私も把握済み。

 上手い躱しね。



「推論は成立しますね。ただ、私は客観的に見てこうも思うのですよ。仮にも神と名乗る存在が生贄を得なければ生きていけないのだとすれば、その神は随分脆い存在だなと思いましてね。私は彼女が本当に必要なのか水神に問うてみたいと思うのです」

「何だと」



 彼の視線が一層鋭くなって、眉間に皺が寄ったわ。

 ただでさえ無駄に強い眼力がより一層引き出されている感じ。

 これはこれで悪くはないんだけれど、私は老け専じゃないからパスよ。



「そう怖い顔をなさらないでください。私としては代わりになるものが有るのであれば、その方が良い。それが人でなければ、もっと良いとは思いませんか?」

「……それはそうだが」

「ならば、今一度交渉する価値があるというもの。私は商売人ですゆえ、交渉するということを生業としております。水神様がどうしてもと仰るのであれば仕方が有りませんが、そうでないのであれば、理由を尋ねることくらいは罰も当たりますまい」



 要は当たり障りが無ければ良いわけでしょう?

 だったらお望み通りに交渉して無理であれば差し出すという理屈ならば、どんな神様だって拒否はしないでしょうよ。

 少なくとも『うちの息子』はそう言うでしょうね。

 でも、彼は私を強く睨んで言ったわ。



「……ならぬ」

「何故です」

「ならぬと言ったらならぬ。よそ者が口を出して良いことでは無い。私は村民の命を預かる身。お客人の勝手な思い付きで危機に晒すことなど出来ぬ」



 ここで村長の建前で逃げるの。

 それを出されると私も何も言いようが無いわねぇ。

 まぁ、追求しようと思えば可能だけれど、この場で急ぐ必要は無いかしら。

 今回はここが引きどころの様ね。



「……それは確かに。分かりました。村長さんに従いましょう」

「そうだ。そのようにしておれ。私からは話すことはこれ以上は無い。くれぐれも問題は起こしてくれるな。そうであれば滞在は許可する」



 彼の方も最初に許可している手前、私の滞在を拒否するということはしなかった。

 ここで露骨に拒否することで、あらぬ腹を探られるのは悪手だものね。

 私でも納得の判断だわ。



「有難うございます」



 私は笑顔で立ちあがり、ジェシーに手を差し伸べて立ち上がるのを助けると、彼女をこれ見よがしにエスコートして部屋を出たわ。そして、外で待っていたクレメンスに屋敷の外に出るまで見張られながら歩いたの。

 屋敷から出て暫く歩いた先でジェシーが口を開いたわ。



「キョウさん、あまり心臓に悪いことはやめてください。私は良いんです」

「本当に?」

「……本当です」



 彼女は諦めているといった口調で私の方を見て言って来たけれど、そんな悲しそうな顔で話さなきゃいけないことを持つには早すぎるわ。

 そういう苦しみを抱えるのはもっとずっと後になってからになさい。



「そう。まぁ、悪い様にはしませんよ。少なくとも、貴女の命を守るくらいは」

「え?」



 ジェシーが私の言葉に怪訝な表情を浮かべているわ。

 確かにこの状況でこの言葉が出てきたら、何を言っているんだと思うだろうけれど、種が分かっていたら手品なんて子供騙しなだけでしょう?

 年頃の娘には年頃の子らしい笑顔が無くちゃ、勿体無いものよ。


 私達は家路についたわ。

 その道すがら、私は今回の交渉での話を振り返ったの。


 この挨拶の中で村長が色々と知っていることは確定ね。

 彼の話し振りだと半ば隠すような感じだったし、実際隠しているんでしょうけど。

 私が事前にしている調査結果でもそれは確定だったから、真新しい証拠が露呈したというわけでもないけれど、積極的に改善しようという意思はない様ね。


 私がした提案は無理もないし現実的な提案だと思うの。というのも、村長の一族が唐突に提案するよりは、第三者的な位置取りが出来る私が間に入って提案し検討してもらうというのは、仮に村長が生贄制度に対して何らかの負担を感じているとすれば、試す価値のある話だったと思う。

 だって、試してみたところでお伺いを立てて先方が嫌だと言ったら従前通りって寸法でしょう? 制度が維持されることをよしとするなら誰も損をすることは無いのよ。


 それをあえて拒否した理由だけれど、これは端的に現状に満足しているという考え方もできるけれど、もう一つ挙げるなら、既に何らかの手段を講じているからってのもあるかしら。つまり、私の提案以前に既に水神に何らかの提案をしていて、それで妥協をしているという形ね。

 でも、それはインディからの証言で有り得ない。……そこに「十年に一度」という制度が組み込まれた背景があるんでしょうね。

 

 インディの証言からこの百年間に実施された「本当の供物」が差し出された回数は三度と聞いているわ。そして、いずれも老人の男性が送り込まれていて、例の紋章も施されていたらしい。でも、この村の記録上の生贄となった対象者の中に男女の区別は無かったけれど、老人はいなかったのよね。

 ……つまり、二つの生贄が存在しているのよ。


 インディが調べたいと言っていたものはこれに関係しているけれど、どの程度分かるかは未知数ね。彼の知識にある存在であった場合、ちょっとややこしくなるそうなんだけれど、彼はそのための備えをしたいとも話していたから、当りは付けているってことかしら。


 私は彼の言っている存在の意味がよくわからなかったわ。


 彼がラズウルドオルムという魔龍として君臨したのは、それなりの力の証明としてだったと思うけれど、彼が危惧する様な存在がいるなら、てっとり早くそいつに任せれば良かっただけだと思うし。

 ただ、彼の存在を利用して騙る存在が生贄を得て何を企んでいるのかが気になるかしら。インディはそもそも生贄を必要としなかったから、不定期で良いと考えていたので感知してなかったものを悪用して、わざわざ十年に一度という制度改正をして自分の物にしたわけよね。


 この存在は明らかに生贄を欲しているのよ。


 それが生贄そのものなのか、生贄をするという行為にあるのか、前者なら食料として必要だからという答えになるけれど、もし後者であったなら、状況によって左右される人間の負の感情を集めるといった意味合いがあるわよね。

 

 凄く悪魔っぽい理由だけれど、それっぽいのが気になるところかしら。

村長さんとお話ししたキョーコ。

空中で展開する舌戦にジェシーはひやひやです。


次は少し平和な日常(?)を。

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