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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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046 彼らとの話

引き続きガリ編です。


 その後も馬車に揺られながら、あたしはメイリンとフェンの二人と会話を続けたわ。身振り手振りと片言でのやり取りを相変わらず続けていたら、言語学のスキルがどんどん上がって、現在は4よ。ようやく会話に関する能力が備わったのか、意味が理解できるようになってきたの。


 二人と話していて、メイリンは13歳で、フェンは18歳だということを知ったわ。

 あたしが自分の年齢を37だと話したら、二人は目を丸くして驚いたのよ。聞いてみたら、御者台で一緒に座るもう一人のおじ様傭兵さんであるターレンさんが実は私と同い年の37歳であることが発覚。……50代だとばっかり思ってたから、これにはあたしもビックリ。この馬車の持ち主であるクンルーさんで56歳ってことだから、あー、みんな老けるのが早いのねと納得したわ。


 たぶん、寿命もこの分だとずっと短いのよ。

 考えてみれば、日本だって昔は人生50年とか言っていた時代があったのだものね。


 二人の話では私は20代前半くらいに見えるそうなのよ。

 そう言われると嬉しいわよね?

 ただ、彼らがそう思うことに一つ思い当たることがあるわ。


 あたし、あの山奥で毎朝朝風呂に入っていたけど、聖水を使いだしてからは念入りに入っていたのよ。だって、聖水風呂に浸かると日に日に肌の張りが蘇って、体調もどんどん良くなっていくのよ? 入らない方が損じゃない。

 あたしがこう思ったくらいだもの、キョーコ達も同様に思っていたと思うわ。実際私と同じように毎日ゆっくり浸かる様になったもの。

 その効果を考えれば20代前半という言葉も納得いくのよ。

 キョーコもすこぶる若くなって全盛期(?)のイケメンぶりを取り戻していたし、ケリーに至ってはショタ臭漂う10代と言われても不思議じゃないくらいに若返っていたんだから。


 キョーコも言っていたけれど、マジであの水は商売になるわね。


 メイリンはターレンさんの孫で、ターレンさんは息子さんに自分の店を任せて隠居してから、こうして行商の旅に出始めたそうなの。メイリンは無理やり付いてきたそうで、親の目を盗んでこっそり馬車に乗り込んで付いてきたと話していたわ。流石に良いことじゃないからフェンも苦笑いしながら聞いていたけれど、広い世界を知ること自体は良いことよと私は笑顔で流したわ。


 フェンはクンルーさんの甥で、クンルーさんに弟子入りしていた関係でこの仕事に同行することになったそうよ。彼はあたしから剣術を習いたいとしきりにせがんでくるんだけれど、あたしは人に教えるのは苦手なのよね。誰かに教わるっていうなら喜んで付いていく方なんだけれど。

 それに、あたしの剣術は完全に我流だから、そもそも定型の型があるわけじゃないのよね。勿論、昔剣道をしたりと武道の経験があるけれど、それも経験ってだけで、極めたわけじゃないじゃない? そんなわけでお断りしているんだけれど、しつこくせがんでくるのよ。

 まぁ、イケメンに手とり足取りとか、とってもあたし的に役得には感じるけれど。


 そうそう、フェンで思い出したけれど、フェンとの話で彼の使った剣術について尋ねたのよね。

 彼が使った剣術は威力はそれなりにあったはずなんだけど、攻撃モーションの後に完璧に止まってた感があるから、あれじゃ隙だらけじゃないかと思って。

 フェンの話ではあれは仙術というもので、龍神との契約により使える様になる力で、体内の気の力を練り上げて使うものだそうなのだけど、使ってしまうと体中の気が一時的に欠乏して動けなくなってしまうそうなのよ。でも、見た目には完璧に魔法っぽかったんだけど、気と魔力には違いがあるのかしら。

 その辺を彼に尋ねたんだけれど、逆に魔法というものが分からないというのよ。というのも、彼らの住んでいる東方の国では魔法使いが居ないそうなの。その代わり仙人と呼ばれる人達が魔法の様な力を使えるそうで、西方の人間と東方の人間では全く別の力を利用しているっぽいの。

 

 まぁ、こんな感じに話していたら、会話面では違和感が無くなってきたのよね。そんなわけで、文字も習い始めたわ。

 東方文字と西方文字で違うから、あたしは西方文字をとりあえず習ったのよ。

 メイリンは13歳だというのに文字をしっかりマスターしていて、西方文字を完璧に書けるそうなの。それに対してフェンは仕事上必要な程度を覚えているだけらしいわ。だから、メイリン先生と文字の授業よ。


 授業は石板に石筆で書いていたから、まだ鉛筆や紙が無いのかなと思って尋ねたら、紙や墨はあるけど、紙の使用は高いから練習はコレでやるんだという話だったの。なるほどね。

 彼女との語学学習の甲斐あって、言語学のスキルが5に上がって、文字認識の能力が付いたわ。これが出てからは文字の覚えがぐっと早くなったわね。メイリンもあたしの学習能力の高さに驚いている様子だったけれど、あたし自身も自分がそんなに頭の良い方ではないという認識で生きてきたからビックリよ。


 基本文字をマスターして基本単語をマスターしてからは、語彙を増やしていったわ。会話をしながらスペルを確認して、それを書いて覚えていく感じ。まるで乾いたスポンジが水を吸い込むようにあたしは見た物を吸収していくのよ。



「ようやく、これで二人と違和感無く話せるかな」

「ガリさん凄いです。こんなに早くマスターするなんて」



 メイリンが微笑んでいる。

 彼女は練習道具をカバンに仕舞うと座りなおす。

 フェンは外に近い場所でいつでも出られるように時折様子を眺めながら座っているわ。



「さて、そろそろ自分の事を話さないといけないですね。これまでの暮らしの中で理解しているとは思いますが、私はこの西方の人間でも、東方の人間でもありません。遥か北の山奥でひっそりと暮らしていたので、世界の情報に疎いのです」



 あたしはおネエを封印して話したわ。

 この世界の感覚がおネエに寛容だとは限らないでしょう? だから、あえてカミングアウトするよりは、状況を把握してから仕切り直しても良いかなと思って。まぁ、あたしの場合は普段からおネエは封印して暮らしているから、それに不都合があるわけじゃないんだけど。

 メイリンもフェンもあたしの話に目をぱちくりとしていたわね。でも、実際にあたしと言葉を交わせなかった事を考慮すれば理解は出来たんでしょう。メイリンもフェンも疑う眼差しは無かったわね。



「そうでしたの。では、その……あの川辺に流されていたのは?」



 彼女は聞いていいのか戸惑いつつも恐る恐るといった様子で尋ねてきたわ。

 まぁ、そこに行くわよね。

 あたしだって聞くと思うもの。



「あれは事故に遭いまして、山越えをしている最中に川へ落ちて流されたものと思いますが、実のところはよく分からないのです。気が付いたらあなた方に助けられたという状況で、一緒に旅をする仲間も居たのですが、彼らがどうなったのかも分かりません」



 あれが事故だったかどうかは判断できないけれど、不測の事態だったことは間違いないからこう答えたわ。キョーコが使った錬金が成功していたなら、色々と変化はあっただろうことだし、その影響でこの状況が起きたということは言えるもの。

 ただ、潜水艇に乗っていたなんて言ったところで、そもそも潜水艇をこの子達が理解できるとは思えないでしょう? 無難なところで転落したってことにしたのよ。

 仲間の情報を出したのは、あたしが一人じゃないってことを伝えることで、後々協力を得られたらラッキーかなっていう思い付きだけれど、正直あたしの様な状況の人間が他にいることを伝えたのが良かったのかは判断できないところね。こればっかりは出たとこ勝負かしら。


 メイリンは心配そうに眉を下げているわね。

 フェンも私の方に視線を向けているわね。



「まぁ。それは心配ですね。その、目的地はお決めになっていたのですが?」

「いえ。暮らしていた里を出て、山を越えて違う土地を目指すまでは考えていましたが、何分世界の情報に疎いため、何処に何があるかすら知りません。いわば世界を見聞するための旅をしようとしていたもので」

「では、私と同じ気持ちで旅に出られたんですね?」

「そうですね」


 

 あたしの言葉を信じてくれたのかは分からないけれど、世界を見聞するというところに彼女は共感してくれたわ。その言葉にあたしは笑顔で応じた。実際、この世界を知ろうとしていることには変わりないし。



「あの、俺も質問して良いですか?」

「えぇ、良いですよ」

「ガリさんの里はどういったところなのですか? その、貴方の持つ剣はとても素晴らしいし、貴方自身も相当の剣術の使い手だ。里の方は皆あなたの様に強い力を持っているんですか?」



 むぅ、難しいこと尋ねてくるわねぇ。

 これ、頭が痛いのよねぇ。


 正直に話せば里なんて無いし、あたしの力の秘密なんてあたし自身知らないし、殆どの効果はスキルによるものでしょう? フェンリルブレードなんてキョーコの悪乗りの一品に過ぎないし。



「私の里は世界と隔絶した場所にあったから、独自の暮らし方をしていたとは思います。ですが、里の者が皆剣術を使えるわけではありません。私の剣は我流です。剣については、友人が作ってくれた物です。友人は物を作る技術に長けていて魔法も扱えます。私以外の仲間は魔法を使うことの方が得意でした」

「え、あの剣ってご友人が作られた物なんですか!?」



 あたしの話を聞いて飛びつく様に尋ねて来たのはメイリンね。

 食いついたところがそこかと思いつつ、考えてみたらアレだけ非常識な性能の剣を打てると考えたら、商人である彼女達からすれば飛びつくネタよね。


 まずったかな。

 出してしまった以上はどうしようもないけど。



「えぇ。私のために命を削る様な努力を捧げて作ってくれました。私だけが持つことを許される私だけの剣を。ただ、彼も二度と同じものは作れないと思います。命を削る様な努力は簡単に出来るものではありません」

「そ、そうですよね」



 あたしの答えに目を輝かしたのも束の間、命懸けの代物を言われては彼女も何も言えない。

 フェンもあたしの言葉に落胆の色が見えるわね。でも、それもほんの僅かな間ね。彼は居住まいを正してあたしに向き合ったわ。



「ガリさん、貴方の話から感じたのですが、貴方の里は俺達が知るより高度な技術を持っている様だ。出来ればその里に案内してもらうことは可能だろうか」



 あたしは彼に視線を合わせると、一呼吸おいて答えたわ。



「里は本来門外不出の場所なんです。残念ながらそこを抜けてきた私が戻ることは不可能ですよ」

「そう……だったんですか」

「ご期待に沿えなくてすみません」

「いえ、こちらこそ無理を言いました。忘れてください」



 彼はそう言って俯いたわ。

 あたしもどう返していいか分からないから放置。

 イケメンの憂い顔は美味しいけど、それとこれとは別よ。

 全く、どうしたもんかしらね。



「もうすぐグレイズの領域に入るぞよ」



 御者台の方からクンルーさんの声がした。

 彼らの目的地である町が近付く。

 一先ずは彼らと共にグレイズに入り、そこで二人を待つことにしよう。

お互いの話をする中で言葉をマスターしたガリ。

グレイズで二人を待つことにしました。

ガリ編はこれで一度切ります。

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