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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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040 村観察 前編

「……相変わらず何を言っているのかさっぱり分からないわ」



 私は村の中を歩いていたわ。



 村の中を観察しながら語学学習することには決めたけれど、どこから取っ掛かりを付けていいのかさっぱり。とりあえず、言葉をメモに書いて覚えることにしたけど。


 あ、このメモ帳は勿論私の錬金製よ。

 もはや何でもありの錬金術だけど、これが魔法であると理解してからは、扱い方に抵抗が無くなったわね。この魔法は要は構造を理解しているか、確固たるイメージが有れば形に出来てしまうというものだから。そして、周囲にある材料の量や構造の複雑さで魔力消費が増減するわ。補足すれば、魔法効果を付与する場合なんかは魔力そのものを消費するからどうしても消費量が上がる様ね。

 話は戻して、メモ帳だけじゃなく鉛筆も一緒に作っているわよ。


 私は物の絵を描いて名前を書き記す感じで、とりあえずそこらの物の名前を理解することから始めたわ。まどろっこしい作業だけど、全く分からないよりは理解が早いと思うから。

 あとは、人々の行動を追うことで場所の名前だとかも拾えたわね。トイレに行くーだとか、畑に行くーだとか、分かり易い行先は名前を拾いやすいわね。


 基本的には村人達の行動については不干渉のつもりよ。

 私の存在がバレて良いことは無いでしょうし、なるべく厄介ごとは避けたいってのもあるし。ただ、村人達から教わる授業料として、周囲の強そうな魔物の襲撃が有ったりしたら、それには貸せる範囲で支援しようって決めたし、町中のトラブルも簡単に解決可能な問題なら、自然を装って行動しても良いって決めたの。


 だって、全く何も手を下せないのはつまらないでしょう?


 で、私は昨日同様に村の中を見て回っているわ。

 性癖柄男に目が行ってしまうけれど、お喋りが大好きなのはおばちゃんって相場が決まっているじゃない? だから、井戸周りに集まるおばちゃん達を見付けて暫く観察していたんだけれど、やっぱり何を言っているのかさっぱりだわ。

 これは私が言葉を知らないってことは勿論、おばちゃん達って結構早口だったりするじゃない? だからなのか聞き取りにくいっていうのもあるの。中にはまったりしゃべる人もいるんだけれど、どうも話に花が咲いてヒートアップすると宇宙語ね。


 みんなタライと洗濯板でじゃぶじゃぶやってるんだけれど、その井戸水がお世辞にも綺麗じゃないのよねー。まぁ、汚物をまき散らしている土壌に雨が降って、雨水が浸透してーっていう過程の結果もあるし、井戸の中に落ちた動物の死体だとかもあるし、昨日確認したけれど……微妙に匂うのよぉ。あまりに酷いからおばちゃん達が洗濯を終えていなくなってから、井戸の中を聖魔法で浄化してやったわ。

 え、そんな魔法を使ったら井戸の中が光って不気味なことにならないかって?


 ……大丈夫よ。私も学習したの。


 出力を絞れば最低限の浄化だけに出来るのよ。

 出来上がった水は聖水にならないけれど、それで充分でしょう?


 たぶん、この世界の多産は乳幼児死亡率の高さにも起因しているでしょうから、その原因の一つとなり得る汚染された水が綺麗になるだけでも大きなことだとは理解しているわ。でも、そんなことより綺麗な水が使えないと、将来的に私達がこの村に普通に訪問した際に出される水が危険極まりないでしょう!汚水、ダメ絶対よ!


 それよりなにより、……汚物対策させたいなぁ。


 道端のう○こを誤って踏んでしまった時のあのしまった感を、まさかこんなところで感じる日が来ようとは流石に誰も思わないでしょうよ。……ご丁寧に靴に着いたう○こもしっかりと透明に消えてくれるのよ。だから村人達にう○こがぐんにゃりしたまま動くという面白映像を見せることにはならなかったけれど、私の精神的ダメージは計り知れないわ。

 う○こはう○こでも人のってのが更にショックよね。

 

 村長さんのお宅っぽい立派な家に入ったわ。


 村長は見た感じ50代くらいかしらねぇ。立派な顎髭を蓄えたおじ様で、白髪のメッシュが入ったブラウンの髪に鋭く青い目をしているわ。農家のおじさんというよりは、狩人とかそういう雰囲気があるのかしら。どことなく堅気でない雰囲気が独特のオーラね。


 この人には同じ髪色に青い瞳の若いイケメン息子がいるのよ。で、他には金髪にエメラルドの瞳のロングの金髪おねーちゃんがいるのよぉ? この子と息子が部屋で抱き着いたりしていたから夫婦なのかしらねー。リア充だわー。


 他には使用人が何名かいるわね。村長のもとで執事の様に付き従ってるっぽいお爺ちゃんと、下働きをしているお婆ちゃんやおばちゃんの姿があるわ。


 昨日も見ているんだけれど、この家では村長さんはお部屋で木の板に書き物をしているか見回っているかで、息子は狩りの指揮を採りに出たり畑に行っているのを見るわ。奥さんは内職なのか繕い物とかを一生懸命やっているわね。

 会話も基本的にその関係が中心なのか、畑がどーのこーの、狩りがどーのこーのって感じなのかしら。……比較的言葉が丁寧だから、このお宅で話を聞いた方が言葉は分かり易いかも。


 昼食時になったら一度キャンプ地に戻ることにしてるの。

 パトラッシュとの情報交換も兼ねてね。


 パトラッシュはキャンプ地で周囲の状況を見張って貰っているわ。何かが起きてもパトラッシュなら私の気配を辿ることが出来るから透明人間でも大丈夫なんだけれど、パトラッシュは人里に入りたくない様なので。……あの匂いがいくらフィルタリングされると言っても嫌なのね。


 ただ、お昼にする時間は2時にずらしたのよね。

 お昼時って家族や仲間で集まって食事をするものだから、会話とかも聞けるかと思って。でもね、何故か食事をしないのよ。これは一体?


 最初は村長さんの家だけの話かと思ったのだけれど、どうやら他所のお宅もそんな感じで、この世界では一日二食ということなのかしら。あ、でも、昔の日本も一日二食だったなんて話を聞いたことあるかも。私はてっきり三食昼寝付きとまで言わなくても三食くらいはあると思っていたから、これは予想外の展開ね。人が集まらないことには意味が無いから、予定を練り直さなきゃだけど。


 この世界が二食なのかこの村が二食なのか。

 貧しい食糧事情を考えると、一日二食の方が消費量は少なく済むのかしら。でも、二食の方が一度に食べる量が増えるなんて話もあるけれど、どっちが消費効率的に良いのかしらねぇ。

 太っているなら二食ダイエットとか分かるんだけれど、どう見てもやせ細っている人々が二食ってことは、貧しすぎて仕方なくと捉えるべきなのよねぇ……。


 畑を見る限りは麦っぽい植物が生えていることは調査済み。彼らの主食はそれを粉にしたものを使ってパンを焼いたりしているのを見たわ。野菜は根菜類があるのを見つけたけれど、それがどんな味のものなのかは不明ね。ただ食べられるってことくらい。


 季節的にまだ春くらいだと思うから、芽が出て少ししか経過していない感じが多いわね。巻き始めが早いものは育っているけれど、それ以外はこれから植えるというものもあるみたいで、畑の作付は終わってないわ。だから、どんなものが他に有るのか分からないわね。

 そもそも村の中に食料として見られるのは干し肉や燻製が中心かしら。備蓄の残りを頑張って伸ばして食べながら狩りをして繋いでいる感じね。


 だからというか、魔物を私達が仮に狩ってしまうと村人達の飯の種が消えちゃう可能性もあるのよ。まぁ、勿論アシストに留めれば彼らもずっと楽になるんでしょうけれど、そんなことがいつもあると思って貰っても困るでしょう? 私達はここにいつまでいるのか分からないし。


 幸い私はこの辺で全く狩りをしないでも生活できる量の食料は確保してあるのよ。まぁ、肉が中心ではあるけれど、うさちゃんの肉とか豚さんの肉とか狼さんの肉とかが燻製やソーセージとかベーコンにもなっているし、ミンチにしてハンバーグにしたりもしてあるから、結構美味しく暮らせるのよ。

 みんなケリーの工夫のお陰なんだけどね。


 二時になり、キャンプ地に戻った私は術を解いたわ。



「ただいま。パトラッシュ」

「応、主」

「何か気になることはあって?」

「特に報告することは無い。だが、周囲に魔素の上昇が見られる」

「それはどういうこと?」

「わからぬ。だが、何らかの魔物が来たところでこの結界を越えられる存在はいないだろう」

「そう。ならいいけれど、何かあったらすぐ私のところに来て頂戴ね」

「必ず」



 今日は村人の暮らしを知るためにスープをこっそり盗んできた。コップ一杯程の量のそれを飲んでみたけれど不味いのよ、これが。



「うげ」



 村人達が如何に貧しい暮らしをしているかを教えてくれる凄いスープだわ。……こんなものを毎日食べていて文句が出ないのは、これ以上良いものを知らないからよね。これって知ったら最後、最強の罰ゲームとしての食事が待っていることになっちゃうじゃない。安易にお食事を振る舞えないわぁ。


 それにしても、出汁を取ることを知っているのに他に味付けが無いのは……味付けに必要な調味料が無いからよね。ハーブくらいならそこらに生えているのにも拘らず活用されていないのは、その存在を知らないからってことかしら。


 確かにここら辺に生えているハーブを摘んでいる様子は見たことが無い。そもそもハーブであることを知らなければ摘むことも無いという想像は当たっているかもしれないわね。もしくは、宗教上の理由でハーブを口にしてはならないとかって線もあるのかしら。いずれにせよ、ほんの僅かな工夫で変わるはずのスープの味付けに必要なものはあるのに、誰も手に取っていないというのは気になるポイントね。


 そこらにある物を活用する分には、私達が供給するわけじゃないから支援しても良いかもしれないわね。ただ、どうやって伝えるかは思案しないといけないけれど。


 私は村人達の料理の改善方法について暫し考えたわ。

 でも、現時点では良い方法は思いつかなかった。



 やっぱり会話が出来ないってことは大きいのよねぇ。


透明人間になって観察するキョーコ。

言葉は相変わらず分からないし、村人達の貧しい食生活に驚愕です。……それだけ恵まれた食事を用意してくれたケリーに感謝するキョーコなのでした。

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