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036 下流の洞窟 後編

 ガリが飛燕を飛ばす。

 垂直歩行してくるゲージはそれを身軽に避けた。そしてゲージは口から液を吐き出したわ。

 ケリーが火の魔法でその液体を迎撃して蒸発させるけれど、全部は防ぎきれなくて私達に降りかかる。

 プロテクターやカーボンファイバーの素材は大丈夫だったけれど、ただの布が露出しているところは溶けたところを見ると強酸の様ね。


 私は潜水艇の錬成に集中する。


 ガリがパトラッシュの背に乗ってゲージとの接近戦に挑んだわ。

 ガリの剣が飛燕を飛ばしながら迫る。

 ゲージは足を止めたかと思うと体の周囲が仄かに白く光る。すると飛燕が当たっても全く効果が及ばなかった。それを見て距離を詰めたガリが直接剣で攻撃を仕掛ける。体を分断しようとジャンプして迫るも、ゲージは尾部で払う様にガリに体当たりをかます。

 その時、ガリの頭上で白熱電球がピッカリ来た!



「ディフレクト!!!」



 剣が黄金に輝いて体当たり攻撃を受け止める。強大な力を剣でいなすけれど勢いそのものは殺せず後方へ飛ばされる。壁に激突する手前でパトラッシュが噛んでガリを背に乗せ躱した。そこにケリーが風の魔法でゲージを包む。そして、ガリがパトラッシュの上から再び跳躍してゲージの頭に剣を突き立てた。



「キシャアアアア!!!」



 大きくのた打って暴れるゲージにガリが胴へ向けて剣を走らせていく。



「飛燕!!」



 更に体の内部で飛燕を発動させると、ゲージの体が半分に両断され、大量の体液が降り注ぐ。

 パトラッシュが再びガリを拾って落下するゲージの死体から引き離す。

 ケリーがそこに落下してくる体液もろとも空魔法で収めると、一気に火の魔法で燃やし尽くしたわ。



「……ふぅ、一丁上がり~」



 呑気な声で言ってくれるけれど、あんた達なんかすっごく強くなってない?

 とはいえ、何とか防いでくれたから私も集中できたけれど。

 


「完成よ~」



 降りてきたガリ達とケリーに潜水艇が完成したことを知らせたわ。



 スキルレベルが上がりました。

 錬金術 Lv、7 → 8 精霊錬金の解除がされました。



 唐突に上がったら怪しいものが解除されたけれど、これの検証は後よ。

 二人は潜水艇を腕組みしながら覗いているわ。



「遊園地のアトラクションか何かに出てきそうなコンパクトなつくりね」

「こんなのでも苦労して作ったのよ!確かに動力が足漕ぎだったりとショボいけど」

「……本当に遊園地並みなんだね~」

「さぁさぁ、また変なのが来る前に乗ってちょうだい」



 私は二人に入る様に促したわ。

 二人が上部のハッチから入っている間にパトラッシュを貨物室に入れて、錬金で入り口を密閉したわ。そして、二人が入った後に私も入ってハッチを密閉。これで気密は保たれるって寸法よ。

 中に入るとちゃんと二人は後部座席に座っていたわ。シートベルトもご丁寧に付けて。私が運転席に着席した途端に突然ドォンと衝撃が走ったわ。鑑定で外を見たら……まさかのG。



「キョーコちゃん、早く出発!」

「分かってるわ!」



 シートベルトを着けて、いざ発信!

 ……というわけで、錬金で氷の台座を溶かしたら、そのままドボンって川の中に落っこちたの。ふらふら揺れたと思ったら次は急に落下を始めたわ。しばしの浮遊感と共に急激にGが掛かる。


 滝壺に落ち込んだのね。


 でも、底に当たらなかったところを見ると相当深いのかしら。フロントガラス越しには真っ暗な湖の中しか見えないわね。



「大丈夫?」

「「大丈夫」」

「それより、あたし達の足元のペダルって、やっぱり漕ぐべき?」

「うーん、まだ良いかな。そもそもどこに向かえば良いのか分からないうちに体力を使っても仕方ないでしょう?」

「それもそうね。分かったわ」



 川の流れに任せておけば何処かへ運んでくれるはず。

 この潜水艇の酸素供給は錬金で水から取り出す様にしているの。私がハンドルを握っている範囲には問題なくコントロールできるって仕組み。まぁ、こんなよく分からない仕様になっているけれど、魔法が使える世界だから活用出来るものなら使おうの精神ね。


 船の中で一時間くらい過ごしたかしら。

 その間に持ってきた食事をケリーのガレージから取り出して食べたりして、しばしの休憩といったところね。

 

 食後であることや船の揺れが絶妙に心地良いこともあって、私達は眠気に襲われつつあったわ。

 その時、唐突に傾いてカーブを描き始めたの。窓の外を見てもよく分からないし、鑑定にも何も引っかからない。ただ言えることは左旋回するような感じで沈降している感じかしら。次第にスピードが上がっている様で体全体にGが掛かっているのが分かる。



「ちょっと、キョーコ!どうなってるのよ!」

「そんなの知らないわよ。勝手に流されているんだから」

「二人とも、鑑定~」

「「え!?」」



 私は冷や汗をかきながら促すケリーに、自分でも鑑定をしてみたわ。



 鑑定結果

 

 魔物 「ラズウルドオルム」……LV,31

 HP3657/3800

 MP1963/2302

 属性:水 地底湖の主 龍族



 地底湖の主ってもしかしなくてもボスよね。しかも、龍族って。



「キョーコ、攻撃手段は無いの!?」

「攻撃!? そんなものあるわけないじゃないの」

「じゃあ、どうするのよアレ!」

「どうするったって、ま、魔法で対抗するしかないわ!」



 私は前方から迫るラズウルドオルムに向かって意識を集中すると、ハンドルを持つ手から潜水艇を通して船の前に魔力を集めるつもりで銛をイメージして水を凍らせて打ち出したわ。銛は高速で接近してラズウルドオルムの体に当たった筈だけど、HPに与えた影響は20。ハッキリ言って弱。

 


「キョーコ、あんたの攻撃全く効いてないじゃない!」

「そんなこと言ったって、ここ水の中よ!使える魔法が限られるじゃないの!」

「キョーコちゃん、それなら……」



 私はケリーの話を聞いて奇声を発してしまったわ。



「いぇえあぁええええ!!?」

「……あんた本気? あたしも一理あるとは思うけれど、失敗したらアウトよ」

「そこはキョーコちゃんの潜水艇の出来を信頼してみるよ~。えへへ~」



 揺れが激しくなり、話していたら舌を噛みそうだわ。

 二人がペダルをこぎ始めた。

 もの凄く高速に足を動かしているのが音で分かるけれど、そんなもの関係無いとばかりに勝手に流されていく私達の船。旋回の傾きも大きくなっているしスピードも速くなっているみたい。

 もう何が何だか分からないと思っていたら、完全に前方に落ち込む様な姿勢になったわ。


「く、口よ!?」

「「「飲まれる~~~!!!」」」



 私達は大きく開かれた闇の中に吸い込まれてしまった。

二人がゲージを倒している隙に潜水艇を作ったキョーコ。

その潜水艇で進んだ先にいたのは、龍でした。

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