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033 ガレージ



「ふぁああ~~~」



 翌朝、二階の部屋を出たら今日も良い天気で朝日が出てたわ。

 昨日のダークウルフがどうなったのかと思って見てみたら、なんか思ったより沢山の死体が有るわよ。何事!?

 私はあわてて縄梯子を降りたわ。



「あら、キョーコちゃんおはよう~」

「ちょっとちょっとー!アレ何!?」



 外を指さしてブンブンと手を振る私にキッチンに立つケリーは首を傾げる。



「あれって~?」

「外のワンコの死体の山よ!」

「あぁ、アレ~? 今朝、煩いから私が始末した~」

「は?」



 ケリーの話では、私達が眠った後、朝方に唸り声で目覚めたケリーは一人で魔法を使う練習で倒したそうなのよ。ケリーったら、物凄く魔法が上達よ~って笑顔で言ってるの。そりゃ上がるでしょうよ。昨夜ガリが倒してたのはせいぜい多くて30頭くらいよ。それが100頭近い数が増えてるんだもの、上がらない方がおかしいでしょうよ。

 そこに毎度の朝風呂上がり半裸のガリが出てきたわよ。無駄に細マッチョな肉体を晒しているガリだけど、なんか聖水のお陰で肌の艶が違うのよね。私なんて完全に中年ユルボディなのに。……あ、でも、最近は聖水効果のお陰かちょっぴり見られるようになってきているのよ? って、そんなことは聞いていないって? しばくわよ。



「ケリーは今朝一人でおっそろしい魔法使って倒してたわよ。アレはチートだったわ」

「ど、どういうこと」

「そのうち分かるわよ。それにしても、解体どうするの? ケリー」

「え~?勿論解体するよ~。キョーコちゃん、よろしくね~」

「はい?」



 結局、朝食後は午前中通しでワンコの解体だったわよ。

 解体中はうっとおしいことに弱い魔物がワンコの肉食ってパワーアップしていたりしたのよ? それを始末しながらだから、骨が折れるったらありゃしない。

 その時ケリーが唐突に使った魔法がビックリよ。

 あの子ったら、肉を食らってパワーアップしたうさちゃんや豚さんを挑発して集め始めたのよ。そりゃ、挑発すればどんなアホの子でもやって来るでしょう? ……そうして集まったうさちゃんや豚さんがケリーに近付いたのが運の尽き。ケリーに襲い掛かる手前で唐突にトコロテンで切り出すように引き裂かれてしまうのよ。


 あれはグロイわ。


 襲った魔物が失敗しているのを見て、当然周囲の魔物は警戒するわよね。そこに今度は風の魔法で次々に切り裂いていくの。私も風の魔法は使えるけれど、あの威力は出ないのよね。それだけにあの子のセンスの良さが光っているんでしょうけれど。


 ケリーの実力が大きく上がっているのは分かったけれど、チートって程強いかと言われるとどうなのかしら。まぁ、これだけやれればチートかもしれないけれど、おっそろしいっていう程ではないでしょう? 何かもっと凄い魔法を覚えているのかもしれないわね。


 さて、大量に解体して生まれた素材だけれど、これだけの量を保管するのは骨が折れるわよ。どうしたものかしら。……出来たらいいなとは思っているんだけれど、まだ試していない魔法があるのよね。



「座標設定、範囲指定、区画確立、空間創造、時空凍結、大気保存……えい!」



 そうして出来上がった大きさにして2メートルほどの空間に空いた黒い穴。

 試しに石ころを入れてみると、中に入った以上の変化はないわね。今度は枯れ枝を拾っておそるおそる差し込んでみたわ。中に入れた時点での反応は無し。引き抜いてみても枝の先が切れているようなことは無かったわね。これだけ確認出来れば大丈夫かしら?

 私は枝を今度は空間の底が抜けていないかツンツンと突いてみたわ。これもちゃんと突き当たった所を見ると底があるみたい。

 ここまで確認出来れば大丈夫……よね?


 スキルレベルが上がりました。

 空属性 LV,5 → 6



「あら、キョーコちゃん、それ何~?」



 そこに物置へ素材を入れに行っていたケリーが出てきたわ。



「うーん、空間物置かしら」

「空間物置~?」

「そうよ。まず入れるかどうかよね。というわけで、これから入るところよ」

「大丈夫なの~?」

「そのつもりで作ったんだけれどね~」



 私はおっかなびっくり右手の指先を空間の中に入れたわ。でも、全く何の抵抗もなく入っていくの。意を決して中に入ってみたわ。そうしたら、中は真っ暗。



「暗いわねぇ。どうにかならないかしら~。そうだ」



 私はバッグから小さなサイコロサイズの光の魔石を出したわ。私の光の魔力をたっぷり含んだ魔石がほんのりと辺りを照らしたの。そうしたら、青白く空間が照らされて驚くほどよく見えるようになったわ。どうやら空間が光を反射して増幅している様な印象ね。どうなっているのかわからないけれど、これ一個入っていれば照明には十分かしら。


 先程投げ入れた石ころはちゃんと床に転がっていたの。空間は私が区画として確立した分だけの広さだから2メートル四方よ。これは魔力の出力を上げれば増やせるから、増量自体は難しいことじゃないわね。問題はこの区画が閉じられても有効かということよ。

 私は空間を出ることにしたわ。



「あら、キョーコちゃんもう出てきたの~?」

「え?」

「入ったと思ったら出てきたから~」

「私、5分くらいいなかったかしら?」

「えー、入ってすぐだよ?」

「……」



 つまり、私の空間に入ると時の経過が止まる様ね。私は術者だから空間からの干渉を受けなかった様だけれど、空間とこの世界との接続時間は凍結されていると見るべきかしら。仮に私がこの空間に物を保管すれば、時が経過することなく取り出せるということになるわね。目論み通りかしら。



「ケリーの言う通りなら、これは時が経過しない物置として完成したっぽいわ」

「時が経過しない物置~?」

「そうよ~。物を入れても時が経過しなければ腐食もしようがないでしょう? 状態を保存する効果があると考えて貰えれば、入った時点の物の状態を保存する空間ってことね」

「じゃぁ、この中に入れておけば何でも持っていけるってこと~?」

「そこなのよね。閉じて別の場所でこじ開けた時に上手く行くか。それをこれからやってみるわ」



 私は空間を閉じたわ。

 魔法自体は稼働した状態を維持しつつ、別の場所に歩いて移動して先程と同じように空間を確立したわ。そして、開かれた空間に足を踏み入れてみたの。



「あ……」



 そこには先程転がした石がちゃんと転がっていたわ。つまり、空間は任意の場所に開くことが出来て、物は私の意思のもとに一緒にくっついて来る感じかしら。これなら大量の物を持っていけるわね。



「キョーコちゃん、上手く行った~?」

「うん、大成功!物置の完成よ」



 というわけで、早速そこらの素材を片っ端から入れたわ。

 空間には棚も作って綺麗に整理したの。空間の拡張が必要かと思ったけれど、今回の素材を入れても意外に余裕だったわ。でも、うちの物置のものも入れると考えたら倍の空間は最低限度必要かもしれないわね。あ、素材ごとに空間を分けるとかって方向もあるかしら。


 それで、今度は別の空間を作ることが出来るか試してみたわ。結論から言えばこれも可能ね。消費魔力の差はそれほど無いみたいで、単純に私が座標グリッドを創造出来る分の広さまでは余裕が有るっぽいのよ。そう考えた場合、座標グリッドなんて物凄い先まで広がっているからお察しでしょう? 勿論、許容量と実使用では消費量が違う筈よ。とはいえ、仮に千ある内の1~2になんて大した量じゃないと思わない? そういうことなのよ。


 空間が確立できたことを確認出来てからは、ケリーと一緒に家の物置からすぐに必要な物以外は空間物置に移動したわ。私の錬金素材は錬金素材倉庫を用意したから、そっちに入れたし、武器庫、防具庫、薬品庫、食糧庫、クローゼット、家具庫……みたいな感じに種類分けしたの。あと、魔法の使い勝手を良くするために、空間にイメージソースを追加してアイコンを周囲にリング状に浮かべて、その中からスマホ操作するみたいに回して選べる様にしたの。そして、「ガレージ」の発声で起動する様に改良したわ。



「ガレージ」



 起動したら私の周囲に剣、鎧、フラスコ、服、椅子、キャンディー、宝石の7つのアイコンが浮かんだわ。右手で目前に浮かぶ剣を横にどけるようにすると、剣のアイコンが左側に移動して宝石のアイコンで止まったの。どうやら、止める場所は意思で行けるみたいね。止まったら、そのアイコンに触れると空間が目前にぽっかりと開いたわ。



「ねぇねぇ、キョーコちゃん。私も作ってみたの~。でも、私には上手く作れないっぽくて、こんな小さな空間だけみたいだよ~」



 ケリーが私のを見様見真似で作った物を見せてくれたんだけれど、確かに穴が小さいの。大きさにして30センチ四方くらいかしら。カバンくらいの感覚で考えれば使えないことも無いかしら。



「とりあえずは私が不要な物を引き受けるから、ケリーのは自分の身近で必要なものだけを入れておけばいいんじゃないかしら。あとは非常時とかのためとか」

「うん、そうする~」



 こうして、私達はガレージという新しい魔法を手に入れたのでした。

ガリが見たというケリーの真の力とはどんなものなのか?

そして新たに出来たガレージの魔法で不要な物も持ち運べるようになりました。しかし、キョーコとケリーでは大きさに差が出ました。

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